2025年度の国際活動を振り返って ~総括編 第2号 未来をつくる赤十字の開発協力~

世界では今、紛争や災害が相次ぎ、気候変動の影響も加わることで、人道危機が長期化するケースが増えています。そうした厳しい現実の中で、人びとが危機に備え、困難を乗り越えられる力————レジリエンス(回復力)を強化する支援の重要性が高まっています。

日本赤十字社(以下、日赤)は、各国の赤十字・赤新月社と協力し、その地域に暮らす人びとやボランティアの方々とともに、中長期的な支援に取り組んでいます。災害への備え、生計を立て直す手助け、気候変動への対応、応急手当の普及など、さまざまな活動を通じて、人びとのいのちと健康を守り、地域が自らの足で立ち続けられる社会を目指しています。

特集 「ジブチの森プロジェクト」始動

2025年より、ジブチ赤新月社とともに「ジブチの森プロジェクト(正式名称:ジブチ気候変動対応事業)」を開始しました(日赤職員によるリポートこちら)。気候変動の影響を強く受け、過去に気温71.5度を記録したとの報告もあるジブチでは、干ばつや土地の荒廃が進み、深刻な水不足や食料確保の困難が地域住民の生活を脅かしています。さらに、近隣諸国からアラブ諸国を目指す難民・避難民がジブチ国内を通過・滞在するため、地域社会全体で食料や生活支援の需要が急増しています。こうした状況を踏まえ、本事業では植樹活動や給水設備の整備、家庭菜園の導入、環境保全活動の推進などを通じて、住民が持続的に生活できる環境づくりを支援します。

事業開始から4カ月目の11月、日赤青森県支部、奈良県支部の職員2人が現地を訪問し、ジブチ赤新月社職員や地域住民との協議を通じて事業内容の確認や今後の活動計画の検討を行いました。今後は赤新月社のボランティアや学校の子どもたち、地域住民が主体となって植樹や環境改善活動に取り組み、気候変動の影響に負けない地域づくりを進めていきます。日赤は、技術的助言や人材育成を通じて、こうした取り組みを継続的に支援していきます。

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事業の内容を住民に説明するジブチ赤新月社職員

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植林活動を担う赤十字クラブの生徒たち

アフガニスタンを忘れない~未来につなぐ5カ年支援

アフガニスタンでは、2020年からアフガニスタン赤新月社とともに気候変動対策事業を実施し、2025年6月に第1期(5カ年事業)を終了しました。同国では紛争や政変、干ばつなどの影響により多くの人びとが生計の危機に直面しており、自然災害に対するぜい弱性の改善と生活基盤の強化が課題となっています。

第1期事業では、ヘラート州およびサマンガン州を対象に、植樹や生計支援、防災活動などを実施しました。苗木の配付や果樹栽培を通じた収入向上支援に加え、女性世帯主を対象とした職業訓練や収入創出活動を行い、多くの世帯で収入の増加が確認されました。また、学校や地域住民が参加する防災活動を通じて、災害時の避難行動や備えに対する理解の向上が見られました。

2025年10月からは第2期事業を開始し、事業地をヘラート州およびタハール州に移して支援を継続しています。第1期事業の成果と教訓を踏まえ、今後もアフガニスタン赤新月社と連携し、植樹、生計支援、防災活動などを組み合わせた支援を継続することで、気候変動の影響に直面する地域住民の生活の安定と災害への備えの強化を図っていきます。

画像 植林用の苗木を調達するアフガニスタン赤新月社と国際赤十字・赤新月社連盟の職員 © IFRC

ルワンダ「モデルビレッジ」事業~貧困や災害に負けない村

日赤は2019年から、ルワンダ赤十字社とともに「モデルビレッジ事業(正式名称:気候変動等に対するレジリエンス強化事業)」を実施してきました。2025年は、第1期事業(2019-2025)の終了と、第2期事業(2025-2030)の開始を迎える節目の年となりました(日赤ルワンダ現地代表部前首席代表からのメッセージはこちら)。

第1期事業では、ルワンダ南部ギサガラ郡の5村を対象に、水・衛生、保健・栄養、生計向上、緑化・防災の分野で包括的な支援を行い、住民が主体となって災害や貧困に立ち向かう村づくりを進めてきました。

その結果、対象地域の11カ所に給水設備を設置し、女性や子どもが毎日往復2時間以上かけていた水くみの時間は、平均10分まで短縮されました。水へのアクセスが容易になったことで、人びとの暮らしの基盤が整いました。また、586世帯に安心・安全なトイレを建設したことで野外排せつはゼロとなり、地域の衛生環境は大きく改善しました。

対象地域の多くの家庭では、1日1食しか食事をとることができず、子どもの成長にも影響していました。本事業では、対象5村の全900世帯に家庭菜園を導入し、年間を通じて豆や野菜を摂取できるようになったことで、栄養状態が向上し、重度栄養不良の子どもはゼロとなりました。

画像 コミュニティ活動を支える赤十字ボランティア

第1期事業で培われた成果と教訓は第2期事業へと引き継がれ、ギサガラ郡の新たな10村を対象に、住民主体の持続可能な村づくりが今後も続いていきます。

キッズクロスプロジェクト ~アフリカの子どもの健やかな成長と教育のために

キッズクロスプロジェクトでは、サハラ以南のアフリカの子どもたちに必要な支援を届けるとともに、一人一人が自らの健康を守り、より良い未来を築くための知識と力を身につけられるように、彼らを支える家族やコミュニティのレジリエンス(回復力)を高めるための支援に取り組んでいます。

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2025年10月、日赤看護師らがエスワティニとザンビアを訪問し、現地の活動状況を確認しました。

エスワティニでは、成人の4人に1人がHIV陽性という深刻な状況が続いています。赤十字ボランティアが担当地域の家庭を訪ね、HIV検査の大切さや治療を続けることの意味を、住民の生活や価値観に寄り添いながら丁寧に伝えている姿が印象的でした。

ザンビアでは、過去2年間に発生した干ばつにより水不足が深刻化し、学校でも子どもの飲み水を確保できない状況が続いています。さらに、HIVエイズ等の影響で親を亡くした孤児も多く、学校を中退する子どもも後を絶ちません。こうした現実に向き合いながら、地域の赤十字ボランティアが、就学、保健、水・衛生、気候変動対策など幅広い側面から、学校、行政とともに包括的な支援を進めていました。

画像 住民にヒアリングする様子

本プロジェクトは、今後もアフリカの子どもたちとその家族、地域の人びとの健康・教育・衛生・保護・尊厳の向上を目指し、地域に根差した活動を継続していきます。

モンゴル赤十字社の活動を支える人材育成支援

モンゴルは気候変動の影響により「ゾド」と呼ばれる極端な冷害や雪害が発生。2023年の冬にはゾドにより18万世帯が被災し、2024年の冬には全国の家畜の14%にあたる810万頭が死亡するなど、深刻な被害が発生しています。

こうした自然災害の影響を受ける地域において、住民の健康と安全を守る体制づくりが課題となっています。

日赤はモンゴル赤十字社と協力し、こころのケアおよび救急法活動を担う指導員の育成や支部の活動強化を支援しています。

その支援の一環として、救急法の指導者育成を担う日赤香川県支部、沖縄県支部の2名がモンゴルに赴き、モンゴル赤十字社の支部職員に向けた救急法の講習を実施しました。モンゴル国内に救急法を根付かせ、資器材を整備し、救急法に対する人びとの意識や技術力を高めています。

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また、こころのケアについては、実施方法に関する知識や経験を共有する研修を実施し、地域のニーズに応じた活動を継続していくための体制づくりについて検討しました。こうした取り組みを通じて、現地支部が主体的に活動を展開できる基盤の強化が進められています(こころのケアについての現地リポートはこちら)。

日赤は今後もモンゴル赤十字社との連携を深めながら、地域の人びとに必要な支援が継続的に届けられるよう取り組んでいきます。

画像 2026年ゾド・リスクマップ-被害は国土全域に予測されている (水色から赤になるにつれて高リスク) © モンゴル国国家非常事態庁(NEMA)

学校と地域で育てるインドネシアの防災力

インドネシアでは、学校と地域が連携した防災力の強化に取り組んでいます。

2025年は、ジャワ島に位置するジャンバル県・スカブミ県で、約200人の教員への防災研修と教材配付を実施。12校に赤十字クラブを新設し、子どもたちが防災を「自分ごと」として学べる環境を広げました。また、6村で124人の地域防災ボランティアを組織し、住民参加によるハザードマップ作りや避難計画の策定を進めてきました。

一方、11月にスマトラ島北西部を襲った豪雨・強風により、複数の州で洪水や土砂災害が発生しました。インドネシア赤十字社はただちに救援活動を開始し、日赤インドネシア事務所も現地調査チームとして被災状況の把握に協力。医療や飲料水をめぐる深刻な課題を確認し、その情報を国際的な支援調整や広報発信に役立てました。

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被災地の保健ニーズ調査を行う日赤看護師

若者が主役の大洋州気候変動アクション

大洋州諸国では、海面上昇や干ばつ、サイクロンなどの影響により、安全な水・食料の確保や感染症の拡大など、気候変動に起因する人道課題が深刻化しています。日赤は2023年度より同地域での支援を行っており、2025年度はデング熱の流行やサイクロン被害への救援活動に加え、地域に根差した気候変動対策の強化に取り組みました。

若者参加型の気候変動対策プログラム「Y-Adapt(ワイ・アダプト)」は7カ国に広がり、2,000人以上が海岸清掃やマングローブ植林などに取り組み、約1万人の住民が恩恵を受けました。

さらに、ビデオコンテストも開催され、太平洋全域のボランティアの活動を映像で発信、受賞した4カ国のユース代表が来日し、日本の防災や福祉を学ぶとともに、気候変動の深刻な現状を日本の若者へ伝え、行動を起こすことの必要性を訴えました。

20260306-a3ad3b81649d21b979f8baa3e26a97bde53915f8.jpeg日赤常総市奉仕団と炊き出しの訓練に参加し要配慮者向け調理を教わる

20260306-d4c7dc85fcd4e06ee9a843b416e40acd29dda316.jpg神奈川県支部職員の指導の下、市民向けに開催する災害図上訓練を体験

3月18日(水)は、2025年度の総括編第3号として、日赤の国際活動における国際救援事業「武力紛争に伴う難民・避難民などへの対応」についてお届けする予定です。

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