世界一暑い国 ジブチで始まる気候変動への取り組み
皆さまはジブチ共和国をご存じでしょうか。ジブチは、アフリカ大陸の北東部、紅海の入口に位置し、四国の1.3倍ほどの国土を持つ小さな国です。国際貿易の拠点であると同時に、近年は日本の自衛隊の海外拠点としてもニュースなどに取り上げられるようになりました。
国土の89%を砂漠や荒地が占め、世界で最も暑い国の一つと言われるジブチもまた、気候変動の影響により、人々のいのちと健康が脅威にさらされています。日本赤十字社(以下、「日赤」という)は、地球規模の気候・環境への取り組みの一環として、本年7月から「ジブチの森プロジェクト」を立ち上げ、荒地に木を植え、農地を増やし、現地の人びとが干ばつや食糧危機などの危機に立ち向かうための支援を始めました。この事業は、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、「連盟」という)と現地のジブチ赤新月社(以下、「ジブチ赤」という)を通じて3ヵ年にわたって実施する計画です。
以下、開始にあたってジブチを訪問した、日赤愛知医療センター名古屋第二病院の関塚要員(ルワンダ駐在)から、現地の様子をリポートします。
赤い大地:とにかく暑くて乾いている
私がジブチを訪問した7月初旬の気温は、連日43℃。
風が吹くと、低温サウナの中で砂が混じったドライヤーの熱風を浴びている感じで、思わずスカーフで目鼻口を隠したくなる環境でした。
人口集中によるごみ問題に悩まされている首都、ジブチ市街を抜け、国道を車で15分ほど走ると、すぐにごつごつした荒野になり、その後、地面がひび割れた砂漠になります。強烈な日射で地表が過熱されて河川は干上がり、熱された地表から局地的な上昇気流がが発生することで、砂漠では竜巻のようなつむじ風が発生していました。
ゴミであふれかえるジブチ市街 © 日本赤十字社

干上がった河川 © 日本赤十字社

砂漠でのつむじ風 © 日本赤十字社
ジブチの人びとと「水」
乾燥による地盤の浸食により地下水脈に海水が浸水し、水道水は塩味が強くで飲むことができません。ラクダやヤギなどを引き連れた遊牧民は、水場とその近隣のわずかな緑を求めて一日何キロも歩きます。炎天下、空のペットボトル一つを持って水場を探し、灼熱(しゃくねつ)の国道沿いを延々と歩き続けるエチオピアからの避難民を何人も見かけました。服は破れ、サンダルは傷み、大きな荷物を抱える彼らの横を車で通りすぎるたびに、心が痛みました。
また、路肩に干からびた家畜の死骸を見つけました。同行するジブチ赤職員からは「暑さで死ぬのは動物だけじゃない。先週も砂漠で亡くなった6人の埋葬をしたんだ」と聞きました。荒野で渇きの苦しみの中、人生の最期をむかえなければならない人びとを思うと苦しくなりました。
ジブチの暑さと水不足に苦しむ人びとの生活環境は、水道の蛇口からいつでも飲み水が得られる日本の私たちには、到底想像ができません。同じ地球で生きている一人として、「小さなことでもいい、今すぐに何かしなければ」と強く思いました。

人工の水場に集まる遊牧民と家畜 © 日本赤十字社

砂漠で置き去りになった家畜の死骸 © 日本赤十字社
日本とジブチをつなぐプロジェクトを目指して
ジブチ赤は日赤の支援を受けて、ジブチ政府の植林計画に基づきジブチ市内や西部のディキル州などで15,000本の植樹を担い、環境の改善を目指します。また、厳しい気候条件下でも農業の収穫量や栄養状態を維持することができるよう、地域住民への技術指導や家庭菜園の普及を行います。同時に、活動の担い手の中心となる「赤十字ボランティア」を地域や学校の中に育成し、彼らがお互いに協力することで、将来に向けて気候変動のリスクを減らす草の根の取り組みを続けていきます。
事業のお手本となる緑化区画 © 日本赤十字社
ジブチで支援事業を展開する日本の民間組織はまだ少ないため、日赤の支援はジブチ国内で期待されています。この事業はゼロからの出発です。かなり難しい事業になると思いますが、一歩前に踏み出さない限り、何も変化は起きません。ジブチの現状をこの目で見た者の責任として、この事業が少しでも多くの成果を出せるよう貢献したいと思っています。
ジブチが直面する現状は、最高気温を更新する日本の未来の姿かもしれません。このプロジェクトが日本とジブチの皆さまをつなぎ、同じ地球に暮らす仲間として、気候変動のリスクを減らす一人一人のアクションにつながることを願っています。

ジブチ赤新月社本社 © 日本赤十字社

在ジブチ日本国大使館にて
(中央:原駐ジブチ大使、中央左:ジブチ赤事務総長、中央右:関塚首席代表(ルワンダ現地代表部))