【WORLD NEWS】 世界一暑い国に、水と緑を(ジブチの森プロジェクト)

日赤では、地球規模の気候・環境への取り組みの一環として、昨年からアフリカ・ジブチ共和国への3カ年支援を開始し、「ジブチの森プロジェクト」を立ち上げました。今回は、現地を訪問した赤十字職員の視点を交えてジブチの課題と日赤が行う支援をご紹介します。

ジブチ共和国ってどんなところ?

アフリカ大陸の北東部、紅海の入り口に位置し、エリトリア、エチオピア、ソマリアと国境を接する国。国土面積は四国の1.3倍ほど。ジブチ港はアジアとヨーロッパの海外輸送路の拠点であり、ここでの中継貿易がジブチ経済を支える。2011年には、ソマリア沖・アデン湾での海賊対処のため、日本の自衛隊初の海外拠点が設置された国としても知られる。

夏は気温50度、“冬”でも30度 世界一暑い国の過酷な現実

夏は最高気温が50度にもなり、過去最高では71.5度を記録したこともあるジブチは、「世界で最も暑い国」と言われています。国土の89%が砂漠、または乾燥した荒れ地で、近年では気候変動に伴う気温の上昇によって家畜の被害も深刻化しています。さらに、砂漠化によって水不足や水質の悪化が進み、農作物の収穫量も減少。食料の確保が難しいため、食料を、そして当然のごとく水も、輸入に頼らざるを得ません。
加えて、経済は中継貿易や軍事基地の使用料に依存していることから、国民の失業率は27.9%と世界3位の高さです(ILOデータ、2024年)。また、隣国・エチオピアやソマリアからアラビア半島に向かう通り道であることから、避難する人々が数多く流入していることも課題です。

1977年に設立されたジブチ赤新月社(以下、ジブチ赤)は、首都ジブチ市にある本社と5つの支部を拠点とし、人道・開発分野におけるジブチ政府の補完機関の役割も果たしています。アフリカにある赤十字社の中では規模の小さい組織ですが、事業分野は保健、水と衛生、難民・避難民の保護など、多岐にわたります。

今回の気候変動対応事業「ジブチの森プロジェクト」では、ジブチ赤と日赤が協定を結び、ジブチ政府の植林計画に基づいて1万5000本の植樹をする他、農地を増やし、干ばつや食糧危機への対応を支援します。

本プロジェクトの計画の1つ目は、学校での環境教育と植樹の取り組みです。
支援対象の2校で赤十字クラブを設立し、同クラブによる100本の植樹を予定しています。また、気候変動への意識変容セッションを実施することで、若い世代の適応力と意欲を高めます。2つ目は、コミュニティーのレジリエンス強化です。人々が厳しい気候条件下でも農業の収穫量や栄養状態を維持し、経済的安定を改善するキャンペーンを行うとともに、干ばつや高温に強い農業の技術指導、家庭菜園の普及なども実施します。

赤十字が設置した水タンクが、人々の命を守り、農作物を育てる

現地調査で見えた ジブチの“希望”と“課題”

2025年11月、「ジブチの森プロジェクト」事業地の現状と課題の確認のため、日赤本社と支部から職員4人が現地調査に赴きました。
日赤奈良県支部の青木美和枝さんは、「多くは砂漠地ですが、所々に木が生えている。一見、植物や農作物の生育は可能そうですが、ここまで過酷な環境だと、住民全員が協力して水やりなどに取り組み、皆で守り抜くという態勢から一人でも欠けたら成功しないのではないか。コミュニティーの“目覚め(意識改革)”が重要だと思いました」と語ります。

また、日赤青森県支部の岩井雄太郎さんは、訪問した学校で日赤の防災教育教材「まもるいのち ひろめるぼうさい」を実施したことに触れ、「防災学習中に、大人もうなるような質問をしてくる。自ら考え、自分たちの意見をしっかり持っていると感じました。また、英語と日本語を勉強しているそうで、私に日本語で話しかけてくれ、学びへの意欲と好奇心の強さが印象的でした」と述べます。日赤職員が用意した防災クイズに全問正解したことにも驚いたそう。

ジブチの学校で防災教育を行う日赤職員

日赤職員たちは難民・避難民支援の実情も目の当たりにしました。車での移動中、日陰のない道を歩き続けている集団に遭遇。移動車には物資も積み込まれていたため、停車して彼らに水やお菓子を配りました。

一方で、ジブチ赤が彼らに水などを渡そうとしても、紛争から逃げ、中には政治的理由で家を焼き払われた人もいて、警戒されたり、“エチオピアに強制送還される”と逃げられることも。ジブチ赤は難民・避難民支援を最優先し、週に3日、このように徒歩で移動する人々の診療やけがの手当てをする医療チームを巡回させ、同時に水・食料の配布や、必要な物資の聞き取りなどを行っています。

青木さんは、ジブチ赤の活動を次のように振り返ります。「ジブチ赤の職員が“自分たちの活動は難民・避難民の食糧支援に見えるかもしれないが、そうではない。彼らの尊厳を守るための活動なのだ”と話していました。欲しいものを与えるのではなく自らの力で生きられるように支える。これが世界で活動する赤十字の姿だ、と胸を打たれました」。

ジブチへの支援は、まだ歩みを始めたばかり。日赤はジブチ赤の活動をサポートしながら、植樹活動が気候変動のリスクを減らすアクションの1つとなるよう、事業を進めていきます。

支援先の村を訪問した青木さん、岩井さん(右端)