2025年度の国際活動を振り返って ~総括編 第1号 「人道支援に空白地帯をつくらない」~

2025年は、ウクライナやイスラエル・ガザでの人道危機に加え、スーダンでも大規模な武力紛争が起こるなど、世界的にも地政学的な緊張の高まりが多々見られました。さらにはミャンマー地震、カリブ海で猛威を振るったハリケーン、東南アジアにおける大洪水など自然災害も後を絶ちません。日本赤十字社(日赤)は、国際赤十字・赤新月運動(国際赤十字)の一員として、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)、赤十字国際委員会(ICRC)、世界191の国と地域にまたがる各国赤十字社、赤新月社とともに人道支援にあたっています。今月は、赤十字の活動を支えてくださる皆さまへの御礼とご報告を兼ねて、4回にわたり今年度の国際活動を振り返ります。

 

第43回「NHK海外たすけあい」キャンペーン

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第43回NHK海外たすけあいキャンペーンポスター

NHK海外たすけあい」は日赤とNHKが毎年12月に実施している募金キャンペーンで、2025年で43回目を迎えました。43回目のキャンペーンでは、人道支援をとりまく環境が厳しい状況であっても、紛争、災害、病気など、さまざまな人道危機に直面している人びとのいのちと健康、尊厳を守るため、また、関心や支援が集まりにくい人道危機にも支援が届くよう、NHK、日赤の全国の支部や施設、ボランティアの方々が一丸となって「人道支援に空白地帯をつくらない」というメッセージを込めて協力を呼びかけました。(キャンペーンの詳細はこちら

2025年度は、皆さまから8万1,828件、合計8億7,2323,696円に上る多大なるご寄付をお寄せいただきました。皆さまのあたたかいご支援に心から感謝申し上げます。皆さまからいただいたご寄付は、紛争に伴う難民・避難民などへの対応、頻発、激甚化する災害への対応、人びとのレジリエンス(回復力)を強化するための取り組みの3つの軸をもとに、世界各地に広がる赤十字のネットワークを生かした人道支援に活用されます。詳細な活動報告は夏ごろに日赤のホームページで公開予定です。

国際人道法の普及

国際人道法IHL)では、赤十字・赤新月マークをつけた人・モノは攻撃の対象としてはならない、と取り決められています。しかし、残念ながら現在も紛争地での人道支援要員の被害が後を絶ちません。2024年には32名、2025年には27名の国際赤十字のボランティアと職員が人道支援活動中に命を落としたと言われています。

このような現状を受け、日赤は2025年4月に、紛争下での人道支援活動の保護について訴える声明を発表しました。これはIFRC理事会が発出した声明文を受け、日赤としてもそれに賛同し、IHLの順守を強く世に訴えかけるものです。この声明文は日赤ホームページに加え、大阪・関西万博の国際赤十字・赤新月運動館内にも掲示されました。

赤十字が戦地においても人道支援活動を展開し、最も支援を必要とする人に援助を届けることができるのは、IHLが、赤十字を含む医療・人道活動を尊重し保護するとともに、その救援活動を許可し円滑に実施されるよう紛争当事者に義務付けているためです。日赤はこれからも国際赤十字とともにIHLとその意義について普及活動を続けていきます。

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国際赤十字・赤新月運動館内のサイネージで掲示された声明文

2025年2月17日(火)~18日(水)には、全国の日赤職員を対象にIHL普及セミナーをオンラインで開催し、全国から60名の参加者がIHLの普及の方法について議論を重ねました。本セミナーには、日赤内の講師のほかに、ICRC駐日代表部、外務省軍縮不拡散・科学部軍備管理軍縮課、外務省総合外交政策局人権人道課、防衛省陸上幕僚監部法務官にもご協力をいただき、関係各所の取り組みについてもご紹介いただきました。参加者は、セミナーで得た知識を所属部署に持ち帰り、IHLの普及に積極的に取り組むことが期待されます。

国際赤十字の動き

2025年4月13日から1013日まで大阪・夢洲で開催された大阪・関西万博では、日赤が国際赤十字を代表してパビリオン(国際赤十字・赤新月運動館)を出展しました。5月8日に万博会場で行われた国際赤十字・赤新月運動スペシャルデー(赤十字を創ったアンリー・デュナンの誕生日でもある「世界赤十字・赤新月デー」 記念した式典)には、赤十字・赤新月常置委員会[1]のメルセデス・バベ委員長や、ICRCIFRCからも代表が出席しました。式典では国際赤十字を代表してバベ委員長があいさつし、赤十字パビリオンを単に活動紹介を行う場ではなく「人類は苦難の時、共に集う時、より強くなるのだと思い出させるもの」とし、「人道の力と国際的な協力で、共に次の世代のため、より公正で思いやりのある未来を築きましょう」と呼びかけました。

赤十字パビリオンの概要については、こちらからご覧ください。

また、滞在期間中に、バベ委員長は広島の平和記念資料館を訪問し、原爆死没者の慰霊碑にも献花しました。

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大阪・関西万博会場内であいさつするバベ委員長

[1]常置委員会は、IFRC(2名)、ICRC(2名)、選挙で選ばれた赤十字社、赤新月社の代表(5名)からなる9名で構成され、国際赤十字の調整を担う常設の機関です。具体的には、(1)国際赤十字・赤新月会議の準備と運営の監督、(2)赤十字運動の内部調整、(3)国際赤十字・赤新月会議で採択された決議の実施促進や監督の役割を担っています。

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トークセッションの様子

2025年9月9日から10日には、「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」のWAスペースにて、国際赤十字における女性リーダーの活躍と育成を目標に掲げる女性組織、GLOW Red(グローレッド、詳細はこちら)が「多様性のある組織の構築を目指して」「災害や紛争における女性リーダー」をテーマにトークセッションを開催しました。

座席の半分を一般聴衆向けに開放した結果、各セッションとも満席となり、Q&Aセッションでは活発な意見交換が行われました。

万博でのトークセッションに続き、2025年9月11日~13日には東京の日赤本社でGLOW Red第5回年次会合を開催、21か国から総勢40名を超える女性リーダーが日本に集結しました。本会合にはIFRC会長のケイト・フォーブス氏に加え、IFRC理事会の女性メンバーや各国赤十字社、赤新月社の女性社長、管理職が一堂に会しました。大阪・関西万博でのイベントおよび東京での年次会合の概要はこちらからご覧ください。

核兵器廃絶にむけて

戦後80年を迎えた2025年、日赤では改めて核兵器の非人道性を世に訴える取り組みを行いました。

核軍縮が進まない国際社会に対して、日赤社長とICRC総裁は共同声明を発出しました。80年前に広島と長崎で起きたことを忘れることなく、破滅的な被害をもたらす兵器を世界からなくすために十分な努力を続けるよう各国に訴えました。こちらから全文をお読みいただけます。

4月にはアメリカ赤十字社の国際人道法法務官が広島を訪れました。同法務官はアメリカのユース(青少年)を対象に国際人道法を普及するプログラムをけん引しており、核兵器の非人道性についてアメリカのユースと議論を重ねてきました。今回の来日では、広島平和記念資料館などの広島市内の関連施設の見学に加え、メディアや一般市民向けにアメリカのユースと日赤が協働して実施してきた核兵器と国際人道法に関する取り組みの報告会を実施しました。

そのほかの戦後80年にまつわる取り組みについてはこちらの記事より詳細をご確認ください。

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報告会の様子(於日赤広島県支部)

2025年9月24日には、ICRC、ノルウェー赤十字社との共催で、核兵器廃絶にむけたオンラインイベント「ヒロシマ・ダイアログ」を開催。ICRCや各国赤十字社、赤新月社の担当者総勢76名が集いました。小倉桂子氏による被ばく証言、ノルウェー群列地震観測網(NORSAR)研究者による軍縮にかかる講演の後に、参加者が核兵器廃絶にかかる現状や取り組みについて情報共有し、今後も国際赤十字として核兵器廃絶にむけて連携していくことを確認しました。

来週3月11日(水)には、2025年度の総括編第2号として、日赤の国際活動における開発協力事業についてお届けする予定です。

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