国際赤十字・赤新月運動における女性のためのネットワーク:GLOW Redとは?

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 GLOW Red(グローレッド:Global Network for Women leaders in the Red Cross Red Crescent Movement)は、国際赤十字・赤新月運動における女性リーダーの活躍と育成を目標に掲げる世界的ネットワークで、2018年4月にスウェーデン赤十字社の社長(当時)の提案のもと発足しました。同ネットワークでは、女性のエンパワーメントを推進すること、幹部職における男女の機会平等を強化すること、またダイバーシティ(多様性)の重要性を積極的に提言していて、これまで世界中の100以上の赤十字・赤新月社から約500人が参加しています。今般、第4回目となる年次会合がモンゴルにて開催、日本赤十字社(以下、日赤)からも職員が参加しました。今回はGLOW Redの年次会合に参加した五十嵐玲奈職員によるレポートを皆様にお届けいたします。

GLOW Red誕生のきっかけ

 GLOW Redが生まれたきっかけは2017年にトルコで開催された国際赤十字・赤新月連盟(以下、IFRC)の総会です。この総会でIFRCに加盟する191の赤十字・赤新月社から選挙で選ばれた29人の理事会メンバーのうち、女性はたったの5人。赤十字・赤新月が支援する最も弱い立場にある人々の多くは女性です。災害や紛争などにおいて、より困難な状況に陥りやすいとも言われています。それにもかかわらず、意思決定を行う理事会が男性ばかりで本当に必要な支援が届けられるのか?健全な組織運営ができるのか?このような危機感から当時会議に参加していた女性リーダーが集まり、GLOW Redという女性リーダーのネットワークにつながっていきました。

画像 GLOW Redの先駆けとなった女性リーダーたち ©GLOW Red

 GLOW Redの積極的な働きかけにより、意思決定機関に女性が男性と同等に参加する重要性への認識が高まっていきました。IFRCは規定を改正して理事会のうち約半数は女性が占めるよう、いわゆるクオーター制を導入。GLOW Redの正式発足から4年後の2022年、ついに理事会の女性メンバーは15人となり、全体の52%となりました。

 GLOW Redは当初の大きな目的の一つを果たしたことになりますが、その活動は終わりません。IFRCの理事会の顔ぶれは変わりましたが世界中の赤十字・赤新月をみると、56%の社は日赤を含め社長も事務総長も男性。まだまだ女性のリーダーが活躍しているとは言えません。GLOW Redはさらなる女性リーダーのエンパワーメント、また育成を目指して活動を続けていきます。

画像 GLOW Redの発起人である元スウェーデン赤社長。現在はボランティアとしてかかわる。©GLOW Red

画像 積極的に意見交換をする女性リーダーたち。©GLOW Red

赤十字の目指すダイバーシティとは

 そもそもなぜ女性リーダーの活躍が重要なのでしょうか?それは赤十字の目指すダイバーシティ(多様性)と密接に関連します。

 世界中の赤十字がよりどころとする7つの基本原則の中には「人道」と「公平」が含まれています。苦しんでいる人を救いたいという思いを結集し、人間のいのちと健康、尊厳を守り、いかなる差別もせず、最も助けが必要な人を支援することが赤十字の使命です。

 そこで国際赤十字では、2022年に「保護、ジェンダー、インクルージョンの方針」を定めました。改めて、赤十字はジェンダー、国籍、宗教、社会的階級、政治信条等の区別なく、多様な背景を持った全ての人々を、尊厳を守りながら公平に支援することを強調し、そのために配慮すべき点などを盛り込んでいます。

画像 今回の会議に集った人種も宗教も違うリーダー達。 女性リーダーにも多様性が求められます。

 多様な人々のニーズに応え、誰も取り残さないようにするにはどうしたらよいか。この方針では、すべての赤十字・赤新月社が、組織内でも多様性を確保することを求めています。組織内で性別の偏りがあったり、意思決定に多様な意見が反映されなかったり、特定のグループが差別・疎外されるような組織では「人道」「公平」といった使命を実現することはできません。

 方針ではその具体的な取り組みとして、各国の赤十字・赤新月社はマネジメント及びガバナンスの3分の1を女性とすることを求めていて、GLOW Redでもこの取り組みを後押ししていますが、最終的に目指すところは多様性に富んだ赤十字であり、老若男女、様々な状況の方々の身になって、またはできるだけ想像力を働かせて、支援活動することです。

今回のGLOW Redに参加して

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赤十字の一員としてこれまでも多様性について意識してきたつもりでしたが、様々な国の女性リーダーと意見を交換していく中で、自分の中にはまだまだ性別についてのステレオタイプ的な考えやアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)があることに気づきました。例えば、「美白」や「アンチエイジング」といった言葉にも違和感を持つようになりました。(写真:会合中に発表する筆者 ©GLOW Red)

 今回の会議に参加していた赤十字の女性リーダー、そしてリーダーを目指す人々の全員に共通していたのが「パッション」です。女性のリーダーが単純に増えれば良いというのではなく、様々な人のいのちと健康、尊厳を守るためには多様性が不可欠であると強い信念を持っていました。

 さらに多様性に富んだ赤十字、人道と公平を実践する赤十字となるために、これからも積極的に発信、活動していきます。

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