バングラデシュ南部避難民支援
©バングラデシュ赤新月社
国際赤十字では、政治的・民族的背景および避難されている方々の多様性に配慮し、『ロヒンギャ』という表現を使用しないこととしています。
バングラデシュ南部避難民の今
2017年8月以降、ミャンマー・ラカイン州での暴力から70万以上もの人が避難しているバングラデシュ。山を切り崩した地にあるキャンプでは、竹を組み、ビニールシートをかぶせただけのテントが見渡す限り広がっています。また、避難民はバングラデシュでは働くことが認められておらず、生きるために必要なものは支援に頼るしかない現状です。
しかし、キャンプを覆うのは決して絶望感だけではありません。数メートルにもおよぶ家庭用の竹や、料理用の薪、トイレを作るための石を運ぶ人などで溢れかえっており、食べ物や洋服を売っている露店、カフェ、床屋もあれば野菜などが育てられている農園までもあるのです。どんなに危機的な状況でもそれを乗り越えようとする人間の生きる力を感じずにはいられません。(写真(C)Atsushi Shibuya/JRCS)
最新情報
日本赤十字社の活動
平時から地域に根付いた活動を展開しているバングラデシュ赤新月社スタッフに加えて、70人以上の避難民ボランティアとともに避難民キャンプでの医療支援を実施しています。(※以下、2017年9月~2022年3月延べ実績数)
13万2,800人以上を診療
診療所では、感染症予防対策を徹底しながら、風邪や下痢、皮膚炎などの患者さんを診察しています。
9万9,000人以上にこころのケア
キャンプでの不自由な生活や先の見えない将来は避難民のこころの大きな負担となっています。避難民に寄り添い、生活上の困りごと相談にのったり、子どもたちへの創作活動やライフスキル習得支援を行っています。(写真(C)Atsushi Shibuya / JRCS)
妊婦と乳幼児へのケア
助産師が妊産婦や乳幼児の健診、家族計画カウンセリングなどを行い、母子の健やかな成長を支えています。
地域保健活動
避難民自らがボランティアとして、キャンプに住む人々へ、感染症予防や応急手当の普及を行っています。
(写真(C)Atsushi Shibuya / JRCS)
今そして今後、必要な支援
現在もなお、バングラデシュに暮らす避難民は過酷な環境下、必死で生き抜こうとしています。帰還に向けた明るい兆しが見えない中、現地では中長期的な支援活動が必要となっています。とりわけ、現地のバングラデシュ赤新月社が主体となって保健医療を提供し続けられるよう、地元出身の医師や看護師、助産師の育成が重要となっています。また、地元コミュニティのレジリエンスを強化するため、避難民自らがボランティアとなって保健衛生の促進に取り組む活動も進めています。
国際赤十字はバングラデシュとミャンマー双方で支援を展開
ミャンマー・ラカイン州では暴力行為の発生が報告されています。同地域には、何かしらの理由で避難できない脆弱な人々が多く残っています。移動が制限されていることや山間部などのアクセスが悪い場所に住み、学校や病院にも行けない人々に対し、赤十字は地域のボランティアの力を借りながら支援を続けています(写真©ICRC)。
これまでの活動
わずか1週間で7万人以上がバングラデシュに押し寄せました。
バングラデシュには以前よりミャンマーからの避難民がおり、2017年3月に日本赤十字社は1,000万円の資金援助を実施しました。8月25日以降の急激な流入に対応するため、国際赤十字はそれまでの4倍にあたる総額約14.7億円規模に活動を拡大し、国際社会に支援を要請しました。
現地状況調査・調整のため、医師、看護師、事務職員をバングラデシュに派遣しました。
バングラデシュ赤新月社の医療活動を支援するため、医師、看護師、助産師、薬剤師、こころのケア要員、事務管理要員などを派遣し、巡回診療とこころのケアを開始しました。
10月中旬までに避難民の数は60万人近くに達しました。増大するニーズに対応するため、これまでの3倍にあたる総額約38.7億円規模に活動を拡大し、国際社会に更なる支援を要請しました。
レントゲンの撮影や小手術ができる仮設診療所の建設を開始しました。
地域では最大規模の診療所として住民の期待を背負いながら開院しました。
2018年2月15日時点において、WHOによると5,659件の感染疑いが報告され、35人が死亡しました。日赤は、日本にいる数少ない専門家を派遣しました。
2018年5月 中期保健医療支援事業を開始
避難民、及び、もともと生活していた地元コミュニティの人々の自助や共助、そして、レジリエンス(逆境から立ち上がる復元力、回復力)の強化を図ることを目的に、中期的な活動を開始しました。
2020年4月 新型コロナウイルス感染症拡大に係る暫定措置期間を開始
新型コロナウイルスの影響で日本人要員が不在になりましたが、現在は現地スタッフ、バングラデシュ赤新月社の医療者、避難民ボランティアが中心となり、人々へ保健医療サービスを提供しています。
救援金を受付中
劣悪な環境下での生活を強いられる避難民たち。ご寄付頂いた救援金は、日本赤十字社による保健医療支援に充てられます。皆さまの温かいご支援をよろしくお願いします。
※バングラデシュ南部避難民支援事業へお寄せいただいた海外救援金の受付状況
救援金受付期間:2017年9月22日(金)から 2023年3月31日(木)まで)
1億3,022万4,773円(2022年4月30日末時点)