トルコ・シリア地震から3年、今日も続く支援の現場より

2023年2月6日に発生したトルコ・シリア地震では、両国合わせて6万人近くもの方が犠牲となりました。この地震の発生から間もなく3年となります。

画像 日赤の支援する地域保健の一環として仮設住宅付近で行われた、運動習慣についての啓発活動。参加者が掲げるカードには「健康のために運動しましょう」などのメッセージ©TRCS

■日赤による継続的な復興支援

日本赤十字社(日赤)では、皆さまからお寄せいただいた海外救援金をもとに、トルコ赤新月社(トルコ赤)、シリア赤新月社(シリア赤)、また国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)などと密に連携を図りながら、現地のニーズに寄り添った支援を継続しています。2025年の1年間を通して、日赤は下記の活動に対する資金支援を行いました。

【トルコ】
〇地域保健活動
コンテナ型仮設住宅において、避難生活を送る人びとが健康や安全に関する知識を身に付け日常生活の中で実践できるように、救急法や母子保健、感染症予防といったトピックで啓発活動などを行いました。また、この活動に参加したコミュニティの女性たちが、楽しく運動習慣を身に付けることを目標に、自らダンスやピラティスのクラスを開くこともありました。
2024年から継続してきたこの支援ですが、政府主導による公営住宅の建設が続々と完成し、多くの仮設住宅が閉鎖となることを受けて、2025年末をもって終了しました。

〇献血事業支援
2025年6月、被災地アドゥヤマン県中心地に日赤の支援により新たな献血ルームが設置されました。また、年末には2台の献血バスも新たに配備され、県内の安全で安定した血液の供給を支えています。

〇給水・衛生支援
2台の移動型浄水車両の配備が完了しました。1台につき1時間1000リットルの飲料用浄水処理が可能で、今後の災害時におけるトルコ赤の活動能力強化に役立てられます。

2025年9月に職員が現地出張した際の記事は
こちらからご覧いただけます。これらに加えて、現在は新たな防災事業の開始に向けた協議も進んでいます。2026年2月にはトルコ赤職員が来日し、日赤や日本の防災活動に関する交流を行う予定です。

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移動型浄水車両。荷台部分にフィルターなどを搭載、写真左側のホースのついた蛇口から処理された水が出る©JRCS

【シリア】
〇巡回診療支援
連盟を通じて、シリア赤の巡回診療12チームをサポート。地震被害の大きかった北部地域が主な活動エリアとなっており、医療へのアクセスが難しい地域における基礎医療の提供、またより専門的な治療が必要な方には病院への紹介なども行います。

 〇リハビリ支援
紛争や地震、またさまざまな理由で身体的な障害を負った人びとに対して、北部の都市アレッポなどにあるケアセンターや戸別訪問でのリハビリを行います。また、家族などの身近な支援者に対してケア方法などに関するレクチャーも行います。

2025年5月の日赤職員によるシリア出張についてお伝えする記事はこちらからご覧いただけます。

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トルコにて被災した家庭を訪問する日赤職員©JRCS

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シリア赤の巡回診療で話を聞く日赤職員©JRCS

■「対応」と「防災」、トルコ赤の教訓

地震大国トルコにおいても有数の巨大災害となったトルコ・シリア地震。トルコ赤は発災直後から職員やボランティアが総力を挙げて対応に当たってきました。大規模に行われた炊き出しは170万人以上に届けられたほか、コンテナ型仮設住宅での長引く避難生活においては25万人以上に対して心理社会的支援を提供(2025年2月28日時点)。また、女性や子ども、障害のある方など特に社会的に弱い立場に置かれやすい人びとに対して個別にニーズの聞き取りを行うなど、他の支援団体の多くが活動を終了した後も地域の復興にむけて、被災した人びとに地道に伴走してきました。
現在、災害公営住宅や日赤の支援を受けた献血ルームなど新たな建物の建設が進む一方で、所々にぽっかり残った空き地や地震発生時刻(午前4時17分)で止まったままの時計は今も被害の大きさを物語っています。
あるトルコ赤職員は今後の活動について次のように語ります。「トルコ・シリア地震から学んだ一番大きな教訓は、最善の対応は事前の備えであるということです。組織としての対応能力を強化することももちろん重要ですが、地域や個人レベルでの防災意識を育てることが災害時の被害最小化に不可欠だからです。これからも続く日赤との協働が楽しみです。」

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地域保健活動を支えるトルコ赤ボランティア©JRCS

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4時17分で止まったままの時計©JRCS

■複合危機のただ中で続くシリア赤の活動

2023年2月6日、シリアでは10年以上続いていた紛争や経済危機などによってすでに1530万人が人道支援を必要としていた中で、新たに大地震という危機にも直面することとなりました。
シリア赤はそれまでの活動をさらに拡大し負傷者の搬送や巡回診療、救援物資の配付など、休みなく活動しました。一方、国内は不安定な状況も続き、202412月には政権が交代。これを受けて、それまで海外での避難生活を余儀なくされていた人びとのうち130万人以上がシリアに帰還し(UNHCR2026126日)、荒廃した故郷で新たに生活する人びとの支援ニーズは増大を続けました。昨年5月に日赤国際部職員が活動モニタリングのため北部の都市アレッポを訪れた際にも、紛争や地震の爪痕が残るがれきの街に人びとが戻りつつある状況、またシリア赤の行う巡回診療などの活動が人びとのよりどころとなっている様子が垣間見られました。

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被災者の捜索・救助を行うシリア赤職員©SARC

しかしながら、今年1月にはアレッポなどの北部地域で市民を巻き込む武力衝突が発生。ある50代の男性は、十数年に及ぶ避難生活を経てアレッポに戻ってきた直後に今回の衝突が起き、今また避難を余儀なくされたとして、赤十字国際委員会(ICRC)に次のように話しました。「何が一番つらいかというと、自分の街を出て行くという行為そのものより、また出て行かないとならないのか、と諦めの境地に陥っていることです。」
シリア赤は、1300万人を超える難民・避難民を生んだ紛争、いまだ散発的に続く武力衝突、2023年のトルコ・シリア地震のような大規模地震、そして毎年のようにやってくる熱波や干ばつといった気候危機に直面するたびに、最前線での活動を続けてきました。地震発生から3年、そして紛争の勃発から15年となる今年、複合的な人道危機下で命をつなぎ、人びとがまた自分たちで歩みを進められるように、生活の再建や復興を見据えた活動が今も行われています。

画像 武力衝突や困窮、幾度となく繰り返す避難生活の中でも子どもたちが安心できるようなスペースを提供するシリア赤職員©SARC

■トルコ赤職員が登壇する活動報告会を実施します!

本記事冒頭でお伝えしたように、今月中旬にはトルコ赤職員が来日し、日赤本社や宮城県の東日本大震災遺構を訪問するなど、防災にかかる取り組みについて相互交流を行います。
報告会の様子など、詳細は後日こちらのページでお知らせいたします。どうぞご確認ください。

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