トルコ:より良い復興を目指して
2023年2月のトルコ・シリア地震発生以降、トルコ赤新月社(トルコ赤)は被災された方々の生活に寄り添い、地道な活動を続けてきました。
トルコ南東部の被災地域では、発災から約2年半となる現在、災害公営住宅の建設が急ピッチで進められています。今年2月時点では約60万人がコンテナ型仮設住宅での避難生活を送っていると報告されていましたが、公営住宅での生活を始める人の数は日を追うごとに増えています。
9月中旬に日本赤十字社(日赤)職員が現地を訪れると、復興に対する思いや、この大災害からの学びや経験を未来への「備え」につなげようという声が聞かれました。
■人びととつながり、広めた地域保健活動
これまでトルコ赤は仮設住宅の集中したエリアに公民館のような「コミュニティサービスセンター」を設置して、避難生活を送る人びとに寄り添い、こころのケアなどを提供してきました。日赤もこのコミュニティサービスセンター等で実施される地域保健活動を資金面で支援し、救急法や感染症予防、運動習慣の確保といった健康にかかわる啓発活動などを後押ししてきました。
自分自身も仮設住宅で生活しながらコミュニティサービスセンターで主に地域保健活動の実施を担当し、人びとの健康に関する支援を行ってきたトルコ赤職員のアイシェヌール氏は、これまでの活動を振り返って次のように述べました。「最初は、健康というプライベートなことについて率直に話したり相談したりしてくれる人は少なかったです。特に女性特有の健康課題などは女性たちの間でも口に出すのがためらわれるような空気がありました。活動を続ける中で、人びとの声に耳を傾けながら正しい知識を伝えることを心掛け、徐々に信頼してもらえるようになったと思います。公営住宅に移っても、人びとの健康に関する不安やニーズが消えてなくなるわけではないでしょう。私たちの活動で伝えてきた知識や習慣を、今後も日々の生活に生かしてほしいです。」
コミュニティサービスセンターで行われる救急法のセッション©TRCS
アイシェヌール氏、看護師としての知識や経験も生かして被災された方に寄り添ってきた©JRCS
■復興の歩みに伴走する献血事業支援
トルコ・シリア地震後、日赤が地域保健支援の他に行ってきた支援の一つに、トルコ赤が行う献血事業への支援があります。トルコ国内での献血率は、震災以前と比べて20%程度まで落ち込んだ時期もあったそうですが、現在は回復傾向にあり、およそ70%程度まで戻りつつあります。今年6月には、最も大きな被害を受けた県の一つであるアドゥヤマン県で、日赤の支援による新たな献血ルームの設置が完了しました。
ある男性は仕事の合間を縫ってこの新しい献血ルームに来たそうで、これまでの献血回数はなんと35回に上るとのこと。「献血の『常連』として日赤の支援に感謝します」と話していました。また、別の献血者は、「復興はゆっくりで、目には見えにくいものです。でも少しずつ、(県外などに避難していた)人が戻ってきたり、この献血ルームのように新しい建物が建ったりして、前に進んでいることを感じます」と復興への思いを重ねながら話しました。
来年6月頃ごろには、日赤が資金面で支援しているアドゥヤマン県の献血センター(県内の献血事業を統括する施設)の建築も完了する予定となっており、トルコにおける安全な血液の安定供給回復を通じてレジリエンス(回復力)の強化に役立っています。
被災された方々が少しずつ日常を取り戻し、地域の復興が着実に進んでいることに、私たちも深く励まされています。トルコの人びとが災害に備え、安心して暮らせる社会を築いていけるよう、今後も現地のトルコ赤と一緒に考えていきます。
35回目の献血に訪れた男性©JRCS
日赤の支援でアドゥヤマン県に新設された献血ルーム©JRCS
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