ウクライナ人道危機 日本理学療法士協会の協力のもと、リハビリの普及啓発へ

54320795854_4163af966b_w.jpgウクライナ赤十字社による訪問リハビリテーションの様子 🄫URCS

ロシア・ウクライナの武力紛争は、現地の人びとの保健医療サービスへのアクセスを困難にしています。医療施設への攻撃や被害がやまないこと、医療従事者が十分でないことは、多くの人びとの心身の健康を脅かしています。

■ウクライナ赤十字社によるリハビリテーション支援

 ウクライナでは、戦闘による負傷だけでなく、生活環境の悪化による心身の疾患の増加によって、リハビリテーション(以下、リハビリ)を必要とする人びとが増えています。しかし、ウクライナ国内では以前から理学療法士の人数が少なく、リハビリ設備も不足していました。現在、ウクライナ赤十字社(以下、ウクライナ赤)は、保健医療分野の支援として、訪問リハビリに取り組んでいます。日本赤十字社(以下、日赤)は、ウクライナ赤が訪問リハビリを始めたことをきっかけに、これまで3名の理学療法士を複数回現地に派遣し、その活動の支援をしてきました。その一人が、栗山赤十字病院の鈴木理学療法士です。

 「私の活動は、ウクライナ赤の訪問リハビリに同行して、現地の理学療法士に技術支援を行うことでした。訪問リハビリでは、リハビリを受ける方の自宅を訪問し、生活の質を高めるために、身体機能の向上を図ったり、補助具の提供や住環境の改善の提案をしたりします。訪問リハビリ自体は効果がありますが、現在の理学療法士の人数では、ウクライナ全体へ提供できるケアは限定的です。」

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ウクライナ赤の理学療法士への技術指導 🄫JRCS

■リハビリ普及啓発のため、翻訳版ハンドブックを作成

 そこで重要になるのが、市民への普及啓発です。地域住民が健康や疾患についての知識を深め、リハビリの考え方を理解することは、高齢者、子ども、障がいのある人など、誰もが安心して暮らすためにとても大切なことです。疾患やその対応についての知識を持てば、家族や地域の中で助け合うこともできます。
 「実は、日本でも普及啓発は容易ではありません。かつて、理学療法やリハビリという言葉すら一般に知られていなかった時代がありましたが、日本理学療法士協会(以下、理学療法士協会)や各都道府県の理学療法士会が中心となり、ポスター掲示やリーフレット配布、市民講座、地域イベントを通じて、地道な啓発活動を続けてきました。」
 ウクライナで活動していた鈴木理学療法士は、理学療法士協会作成の「理学療法ハンドブック」を、現地の訪問リハビリに活用できないかと考えました。理学療法士協会に相談したところ、ウクライナ語版を作成することを承諾いただきました。

 「ハンドブックは、ウクライナの実情に沿って必要な修正を行いました。医学的内容について誤りは許されないため、何度も理学療法士協会、ウクライナ赤、翻訳者とやり取りを重ねました。」

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ウクライナ語による理学療法ハンドブック 🄫JRCS

 「私が初めに理学療法士協会に相談してから、昨年12月にウクライナ語版が完成するまで、実に13か月がたちました。ご協力いただいた理学療法士協会の皆さまをはじめ、この活動に粘り強く丁寧に取り組んだウクライナ赤、日赤の関係者の成果だと感じています。ウクライナ赤のスタッフは連日の空襲警報のなか、緊張と疲労の強い日々を過ごしながら、他の業務と並行して長い作業を続けてきました。その努力に心から敬意を表します。この冊子がウクライナの皆さんの暮らしに少しでも役立つことを心から願っています。」

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理学療法ハンドブックを手にするウクライナ赤スタッフ 🄫JRCS

 赤十字は人びとの日々を支えるための支援を今後も続けるとともに、いまだ終わりの見えない武力紛争と並行して進む復興への支援も進めてまいります。引き続きウクライナ人道危機へご関心をお寄せいただくとともに、「ウクライナ人道危機救援金」へのご協力をどうぞよろしくお願いいたします。

ウクライナ人道危機救援金

受付期間:2022年3月2日(水)~2026年3月31日(火)

使途: 国際赤十字・赤新月社連盟、赤十字国際委員会、および各国赤十字・赤新月社が実施する、ウクライナでの人道危機対応およびウクライナからの避難民を受け入れる周辺国とその他の国々における救援活動を支援するために使われます。

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