アジア大洋州地域:給水・衛生分野における災害対応能力強化事業(APWASH)
バングラデシュ:サイクロンレマル2023 バングラデシュ赤新月社が浄化・給水した水を受け取る被災者©BDRCS
気候変動によって引き起こされる災害の割合が世界的に増えています。1960年代に報告された災害のうち気候・天候関連は76%であったのに対し、2010年~2019年にはその割合が84%に上昇したと報告されています(出典1:IFRC, World Disasters Report 2022)。中でも5つの地域(アメリカ、アフリカ、アジア大洋州、ヨーロッパ、中東)のうち最も災害発生数が多く、死者数および負傷者の数が最も多いのがアジア大洋州地域です(出典2:CRED, 2024 Disasters in Numbers)。2024年の主要な災害は、アフガニスタンの人道危機、マーシャル諸島の干ばつ、ネパールの地震、ミャンマー、フィリピン、ベトナムのサイクロンや台風など、広範囲にわたり、各地で人道支援ニーズが高まりました。1億2500 万人以上が災害の影響を受け、そのうち 620 万人以上が緊急人道支援の対象となり、260 万人以上が給水・衛生支援(WASH※)の対象となったと言われています。
日本赤十字社(日赤)は、国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)アジア大洋州地域事務所を通じて、同地域の各国赤十字社が行う緊急WASH活動を長年支援しています。
※赤十字の国際救援活動では、Water(水)、Sanitation(衛生設備)、Hygiene(衛生促進)のことで、具体的には給水・排水・トイレ・廃棄物処理を供給し、衛生状態を改善することを指す。
出典2:CRED 2024 Disasters in Numbers
出典2:CRED 2024 Disasters in Numbers
支援の概要
日赤はこうした地域の特徴を踏まえ、連盟と協働でアジア大洋州地域の国々に向けた給水・衛生災害対応キットの配備事業を行っています。同キットには災害時に効果的に給水や衛生活動を展開できるようにタンクや浄水剤、水質検査キット、簡易トイレ設置用資材、衛生教育用資材などが含まれており、キットを活用した救援活動を現地スタッフやボランティアが行えるよう、研修等の人材育成がセットになっています。
給水ユニットについて学ぶバングラデシュ赤新月社ユースボランティアと職員©BDRCS
フィジーで行われた赤十字ユニセフ合同研修で衛生行動について学ぶ研修参加者たち©IFRC
浄水資材について学ぶバングラデシュ赤新月社のユースボランティア©BDRCS
マレーシア赤新月社職員によるサバ州の干ばつ災害時の給水活動の様子©MRCS
連盟のWASH担当者から資機材のメンテナンスの指導を受けるマレーシア赤新月社のスタッフ©IFRC
カンボジア赤十字社の職員による衛生教育の様子©CRC
こちらは2024年に実施した報告会の動画です。同事業のモニタリングでバングラデシュを訪問した日本赤十字社岡山県支部の職員と本社職員がバングラデシュの活動の例や成果、課題を報告しています。同事業の全体説明も含まれておりますので、ぜひご視聴ください。
※アジア大洋州給水・衛生災害対応キット整備事業は日赤の複数の支部(2025年3月末時点で第3ブロックおよび第5ブロック)の参画により支えられています(第3ブロックは富山、石川、福井、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、第5ブロックは鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、の支部にて構成されています)。
実績データ
令和6年(2024年)に連盟アジア大洋州地域事務所が取り組んだこととして、情報管理(IM)インターンの雇用とこれまでの実績データ等のマッピングがあります。
こちらは日赤が2009年から関わった事業の受益者数や対象になった国を示しています。
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