スーダン紛争から3年:「故郷を離れても、人を助け続ける」―広がる人道危機と人びとの物語

 2023年4月に勃発したスーダンでの武力衝突から3年が経過しました。
 紛争開始以来、これまでに1,200万人以上が国内外への避難を余儀なくされました。現在も900万人以上が国内避難民として暮らしていますが、人道支援を必要としている人の数はさらに多く、3,300万人に上ります。国内外で避難生活を続ける人が増え続ける一方で、故郷に戻る人びとも増えていますが、そこで待っているのは破壊された家屋と失われたインフラです。
 人びとは、「不安定な避難生活を続けるか、何も残っていない故郷に戻るか」という極めて厳しい選択を迫られています。
 医療施設の多くは機能不全に陥り、水や食料へのアクセスも制限されています。学校や市場といった日常の場は失われ、生計手段である農地や家畜なども大きな打撃を受けました。現在も紛争に終わりは見えず、多くの人びとが日常を奪われたまま暮らし続けています。

画像 紛争によって住まいを追われた人びとが暮らすスーダン・リバーナイル州のキャンプ。国内避難民の子どもたちと手を取り合って歩くスーダン赤新月社スタッフ。©SRCS

故郷を追われても、誰かのために

 スーダン西部ダルフール地方出身で、紛争が激化する前からスーダン赤新月社(SRCS)の活動にボランティアとして携わってきたイマンさん(写真)は、激しい戦闘により故郷を追われましたが、14日間に及ぶ移動の末にたどり着いた避難先でもボランティア活動を続けています。「人のために何かをするということは、人として崇高な営みである」との信念が、彼女を支えています。

Iman_Sudan_IFRC.jpeg避難先でもスーダン赤新月社でボランティア活動を続けているイマンさん。©IFRC

p-TCD0547.jpgチャド東部の難民キャンプ。給水所や貯水タンクの周囲には、飲料水や調理、洗濯用の水を持ち運べるように、多くの容器が置かれている。©IFRC

 スーダンの隣国チャドはスーダンからの避難民を数多く受け入れていますが、東部の難民キャンプでは、水や食料、医療へのアクセスは極めて限られています。増え続けるキャンプ内人口の中で、わずかな資源を分け合わなければなりません。特に深刻なのが水の不足です。人びとは遠くまで歩き、炎天下で水を運びます。
 「水は生命の源です。水がなければ、食べることも飲むこともできず、家事も行えません。そして水を確保する役割の多くを、女性たちが担っています」と、難民キャンプで活動するチャド赤十字社のボランティアは語ります。彼女は自らも避難民ですが、困難な状況にありながらも、衛生や安全な水の利用に関する啓発活動を行っています。
 かつては地域の一員として穏やかな日常を送っていた人びとも、今は避難生活を送っています。それでも彼らは、自身も被災者でありながら困難な状況にある他者を支え続けています。

続くスーダン危機による目に見えない傷

 スーダン紛争では、家族が離れ離れになり、行方が分からなくなったりすることで、人びとの心に目には見えない深い傷も残しています。赤十字国際委員会(ICRC)によると、行方不明者としてICRCに登録された人は1万1,000人を超えています。行方不明者の数は、この1年だけで40%以上増加しました。通信手段が失われた地域では、家族と連絡が取れず、安否が分からなくなることが人びとの心に苦痛をもたらしています。
 「子どもたちは父親のことを忘れていません」と、2年以上前に夫が行方不明となった4人の子どもの母親は語ります。「長男は泣きながら父親のことを尋ねます。被拘束者の釈放があるたびに、子どもたちはテレビの前で父親の姿を探してきました。」家族は今も、SNS上で情報を探し続けています。「どこにいるのか、それだけでも知りたいのです。」
 また、性暴力は国際人道法で厳しく禁止されているにもかかわらず、紛争による最も深刻かつ見えにくい被害の一つです。社会的な偏見や恐れから声を上げられない人も多く、被害の実態は十分に明らかになっていません。

 こうした状況の中でも、国際赤十字の支援により、2025年にはスーダン国内だけでなく、隣国のエジプト、南スーダン、チャドとの間で56万件以上の家族間の連絡が実現しました。さらに性暴力の被害者119人へ直接的な支援が提供されています。

支援の最前線に立つ人びと

 スーダン赤新月社では、国内の18州全てにおいて、合計12万2,000人のボランティアが活動しています。避難を経験した人びと自身が、応急手当、給水・衛生支援、生計支援、離れ離れになった家族の再会支援などに携わり、いのちと尊厳を守る活動の最前線に立っています。彼らは、「支援される側」であると同時に「支援する側」でもあるのです。その日常的な支え合いは、人道支援を必要とする人びとがどれほど多く存在するかを示すだけでなく、過酷な現実と向き合いながらも、互いを支え続けようとする人びとの揺るぎない決意を表すものでもあります。こうしたボランティアの中には、紛争開始以降、他者を助ける活動の中で命を落とした22人のスーダン赤新月社ボランティアが含まれています。

 こうした状況下でも、スーダン赤新月社をはじめとする国際赤十字のネットワークは、民間人の安全と尊厳を守るため、国際人道法の遵守を強く訴えると同時に、人道支援の規模を拡大し、現地の人びととともに支援を続けています。

画像 巡回診療で女性を診察するスーダン赤新月社スタッフ。緊急医療や衛生支援を通じた感染症リスクの低減など、保健医療分野でも幅広い支援が行われている。©SRCS

「まだ終わっていない」スーダン人道危機

 このスーダンの人道危機は、世界でも最も深刻な規模のひとつであるにもかかわらず、十分な関心や支援が集まっているとは言えません。人道ニーズは拡大を続ける一方で、資金は不足し、支援活動の継続にも影響が出ています。故郷を離れたボランティアたちは、それぞれの場所で活動を続けながらもこう語ります。
 「スーダンで起きていることは過去の話ではありません。現在進行形の話です。」

 日本赤十字社は、皆さまからのご寄付をもとに、スーダンおよび周辺国での深刻な人道ニーズに応えるため、これまでに国際赤十字・赤新月社連盟と現地赤十字社の活動に4,000万円の資金援助を、またICRCが行う活動に2,000万円の資金援助を実施してきました。
 さらに、スーダンから130万人以上の避難民・難民※が流入している南スーダンでは、紛争により四肢に障がいを負った人びとへのICRCによるリハビリテーション支援などに対して、日本赤十字社で唯一の義肢製作所を運営する日本赤十字社千葉県支部の協力のもと、継続的な資金援助を行っています。
紛争から3年。スーダンでは今も、多くの人びとが支援を必要としています。赤十字はこれからも、現地の人びととともに、いのちと生活を守る活動を続けていきます。

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※難民とは「人種、宗教、国籍、政治的意見または特定の社会集団に属するという理由で、自国にいると迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れ、国際的保護を必要とする人々」のことを言います。一方、避難民は難民と同様な理由、もしくは紛争などによって、住み慣れた家を追われた人々のことで、難民認定は受けていません。状況が改善されれば、故郷に戻りたいという思いから国内にとどまっている人々や、障害やさまざまな理由で国境を越えた移動が困難になった人々は国内避難民と呼ばれています。

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