スーダン紛争から2年:2,500万人以上に支援が必要、長期化する深刻な人道危機

 2023年4月15日にスーダンの首都ハルツームで戦闘が勃発してから、2年が経過しました。現在も収束のめどは立っておらず、スーダンの人口の約半分である2,500万人以上が人道支援を必要としており、約1,450万人が国内外への避難を余儀なくされています。
 ウクライナやイスラエル・ガザ等の人道危機、世界各地の大災害が人々の関心を多く集める一方で、このスーダンの紛争は世界で最も深刻な人道危機の一つとされているにもかかわらず、「忘れられた紛争」とも言われています。
 今回は、スーダン紛争から2年の現在の状況と、スーダン赤新月社と日本赤十字社および国際赤十字の支援についてお伝えします。

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■現地の状況~医療・学校等のインフラの崩壊と感染症の拡大~

 武力衝突の影響で、スーダン国内のさまざまなインフラが甚大な被害を受けています。医療インフラへの打撃は深刻で、紛争の影響を受けた地域では80%以上の病院が機能停止に陥っており、医薬品や医療機器、水、電気といった基礎的なインフラも不足しています。2024年10月時点で、医療施設への攻撃は累計440件を超え、暴力行為や妨害行為も急増しています。
 教育現場も大打撃を受けており、2024年9月時点で全国の90%以上の学校が閉鎖され、残りの学校についてもほとんどが避難民のシェルターとして転用されています。また、多くの教員は給与が1年以上支払われていないという報告もあり、子どもたちの学びの場は紛争によって失われています。
 加えて、コレラ、デング熱、はしかの流行も国内の12州で同時多発的に発生しており、2024年11月時点で4万4,000人以上のコレラ患者が確認されており、その中には1,200人の死者が含まれます。インフラが破壊され、安全な飲料水の不足が、公衆衛生を一層悪化させています。

■スーダン赤新月社の支援活動〜厳しい環境下でも活動を続ける多くのボランティア〜

 スーダン赤新月社は紛争勃発当初から、スーダン全土においてボランティアとともに、最前線で途切れることなく人道支援活動を続けています。国内全18州に支部を持つスーダン赤新月社では、延べ9,000人以上のボランティアが、救急や応急処置、食料・水の配付、避難支援、家族の再会支援などを日々行っており、これまでに約135万人へ命や生活を救う支援を提供しました。
 2025年は、より増大している人々のニーズに対応するため、これまでの緊急支援に加えて、公衆衛生、栄養改善、生活再建、といった中長期的で重要な分野への支援にもあわせて取り組んでいく予定です。

【スーダン赤新月社の活動実績(2023年4月〜2024年12月)】

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生活用物資

309,637点の、毛布やキッチンセット、防水シート等の家庭用品と食料品以外の品々を配付しました。
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基本的ニーズへの現金支給等:
30,060世帯に対して、現金支援や食料支援を行いました。

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ヘルスケア:

緊急の医療支援に加え、紛争の影響を受けた子どもたち12,432人にこころのケアを実施しました。
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水と衛生:

給水車による給水活動等で87,243人が安全な水にアクセス可能になりました。また地域や学校で衛生に関する啓発活動を387,228人に対して提供しました。
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保護、ジェンダー、インクルージョン(PGI):

子どもの保護活動のほか、紛争によって離れ離れになった約3,418人に家族との再開支援を行いました。
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避難所の提供:

148,000人の避難民に一次避難所を提供、食料支援や心理支援、カウンセリング等を実施しました。
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コミュニティの参画と説明責任 地域:

赤十字の支援に対し、90%の地域住民は、最も重要な支援ニーズを満たしていると回答しました。

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スーダン赤新月社の組織強化:

各地域支部の体制等の能力強化も実施。現在スーダン全土で、9,000人以上のボランティアが活動しています。

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 ボランティアが受益者に必要物資を配付する。©SRCS

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 保護に関する訓練を受けるスーダン赤の職員達。©SRCS

国際赤十字および日本赤十字社の支援〜スーダンを忘れない〜

 スーダンの深刻な人道状況を受け、日本赤十字社は、国際赤十字・赤新月社連盟の緊急救援アピールおよびスーダンからの避難民を受け入れる周辺国のアピールに対して、これまで2,000万円の資金援助を、また、赤十字国際委員会(ICRC)に対しては、合計1,300万円の資金援助を実施してきました。それに加えて、現在、今後のさらなる資金援助等の支援も検討しています。

日本赤十字社は、国際赤十字の一員として連携を続け、今後も現地スーダン赤新月社の活動に協力していきます。

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