【NHK海外たすけあい】支援の最前線、スーダンとガザから~人道支援の空白地帯を作らないために~

 スーダンでは、終わりの見えない紛争が人びとの命と暮らしを脅かし、イスラエル・ガザでは、停戦発効後も散発的に戦闘が続き、医療や生活必需品が不足し、負傷者や避難民が過酷な状況に置かれています。日本赤十字社(以下、日赤)は、赤十字国際委員会(ICRC)や現地の赤十字社と協力し、命を守る医療支援、家族の再会支援、そして希望をつなぐ活動を続けています。
 人道支援の空白地帯を作らないために、私たちができることとは――

スーダン:終わりの見えない紛争下で生きる人びと

 2023年4月、スーダンの首都ハルツームで起こった武力衝突を契機に始まった内戦は、世界で報道されることも少なく「忘れられた人道危機」と呼ばれていますが、現在、現地の状況はさらに深刻化しています。2年半以上が経過した今も終わりは見えず、人口の半数以上の3,000万人が人道支援を必要とし、飢餓や栄養不良に苦しんでいます。学校や病院、水道などのインフラが被害を受け、多くの人びとが生活するために必要な基本的なサービスにアクセスできなくなっています。紛争で多くの家族が離ればなれになり、愛する人の安否がわからないまま、絶え間ない恐怖と不安と隣り合わせの日々を過ごしています。

家族を再びつなぐ赤十字の活動

 混乱の中で逃れてきた人びとは、通信手段もなく孤立することがあります。親はわが子を探し、兄弟姉妹は必死に連絡を待ち続けています。
 ICRCは、スーダン赤新月社や各国赤十字・赤新月社と協力し、離ればなれになった家族の安否調査や再会を支援しています。愛する人と再びつながることができるように、可能な限り連絡を回復できるよう努めています。

【字幕:日本語訳】これは、(混乱の中で家族と離ればなれになっていた)スマヤさんが、数カ月ぶりに息子と再会した瞬間です。彼らは4月にザムザム・キャンプ(スーダン北ダルフール州)への攻撃から逃れる際に、離ればなれになっていました。ICRC、スーダン赤新月社、チャド赤十字社の活動を通じて、ついに電話で再びつながることができました。


34秒/©ICRC):スマヤさん、数カ月ぶりの再会

現地で活動する日本人職員の声

 ICRCの淡路愛さんは、2025年4月からスーダン西部のダルフール地方で、市民の被害状況の調査や家族の再会支援などに従事しています。「ダルフールでは携帯電話のネットワークが遮断されていて、離ればなれになった家族が連絡を取り合うのも難しい状況です」と、淡路さんは困難な支援状況を話します。また、「遠いアフリカや中東の紛争でも、ひとごとととらえず、目を背けず、まずは関心を持っていただきたいと思います」と、日本の人たちへメッセージを伝えてくれました。


76/©ICRC):淡路さんが語る、ICRCの現地での活動

画像 北ダルフール州タウィラで支援対象者にICRCの任務や活動内容を説明する職員 (右端:淡路さん)©ICRC

 厳しい支援環境の中、スーダン赤新月社は、ICRC、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)、そして世界各国の赤十字・赤新月社と協力し、国内18州にて、最前線で支援活動を続けています。
 日赤は、スーダンの深刻な人道ニーズに応え、皆さまからのご寄付をもとに、これまでICRCおよびIFRCを通じて合計3,600万円の資金援助を行いました。今後も国際赤十字の一員として連携し、現地での活動を支援していきます。

イスラエル・ガザ人道危機と赤十字の現場から

 2023年10月以降、イスラエルとガザの間での武力衝突が激化し、現地では深刻な人道状況が続いています。202510月の停戦発効後も戦闘は散発していて、ガザでは多くの住民が引き続き避難生活を余儀なくされ、生活必需品や医療へのアクセスも不足したままです。国際赤十字・赤新月運動(以下、赤十字運動)は中立・公平の立場を堅持し、人質の解放や遺体返還への関与などの支援を続けています。12月2日には、現地で活動するICRCおよび日赤の職員による報告会を開催しました。そのハイライトを以下にご紹介します。

ラファ赤十字野外病院の救急の現場から(ICRC整形外科医 安藤 恒平)

 ICRCヨルダン地域代表部整形外科医の安藤恒平医師はこれまで6回ガザに派遣され、うち3回は南部のラファ赤十字野外病院での外傷手術などにあたりました。安藤医師からは、極めて厳しい環境下にある病院での活動について報告がありました。

 ガザでは多くの建物が破壊され、医療行為はがれきの中で行われています。テント群からなる野外病院は、流れ弾が飛んでくる危険性があり、警報が鳴ると医師たちも一時避難を余儀なくされ、治療や施術を中断しなければなりませんでした。途中からは手術室に鉄板を入れるなど防御策もとられるようになりました。

 日赤を含む赤十字運動16社が支援するこの野外病院は、約60床の収容能力を有しますが、今年6月から7月には150人近い負傷者で病棟があふれかえりました。他の医療施設とも連携し、いかに救える命を救い、残せる手足を残せるか、ということを第一に考え、24時間態勢で対応しました。

 国際救援要員として派遣された医療従事者は任務終了後にその場を離れますが、現地のスタッフは休みもなく長期にわたり過酷な環境で働き続けています。安藤医師は「現地の同僚が少しでも休める時間をつくれるよう、自分たちは朝から晩まで働きます」と語り、仲間をいたわる思いと深い敬意を示しました。

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ICRC整形外科医 安藤 恒平©ICRC

救われた命のその先を支える支援(日赤中東地域代表部副代表 青山 寿美香)

 ガザ地区では四肢の切断や脊髄損傷などの重度外傷者を含む、リハビリを必要とする方々が4万2,000人を超える一方、多くのリハビリ施設が機能停止しています。武力衝突激化の影響がおよぶヨルダン川西岸地区でも、移動制限などにより必要な医療やリハビリ支援を届けるのが困難になっています。両地区におけるリハビリ支援のニーズが高まる中、日赤はパレスチナ赤新月社からの要請に応え、両地区でのリハビリ支援を実施していく予定です。

 ガザ地区では、アル・アマル病院とアル・クッズ病院を拠点に在宅支援を強化し、アウトリーチチームがテント暮らしの家庭を訪問してリハビリや家族支援を行い、退院後も切れ目なく支援を届けます。西岸地区では、移動制限などで支援が届きにくい地域に対し、移動型リハビリチームが巡回して、アクセスが難しい住民にも必要な支援を提供していきます。

 青山副代表は12月2日の報告会の最後に、ガザでUNRWAの清田明宏保健局長が撮影した2025年の初日の出の写真を紹介し、次のように締めくくりました。「がれきの中でどれだけ暗い夜であっても、必ず朝は来ます。困難の中でも希望を失わない現地の人びとの姿勢を象徴しているような1枚で、私の胸に深く残っています。日赤は今後も、人道原則に基づき、人びとの尊厳を守る支援を継続していきます。」

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日赤中東地域代表部副代表 青山 寿美香


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2025年の初日の出(ガザ)

※本報告会の録画は以下からご覧いただけます。

 皆さまからのご寄付は、こうした「人道支援の空白地帯を作らない」ための活動、スーダンやガザを含めた世界各地の避難民、紛争や自然災害といった人道危機、病気などで苦しむ人びとを支援する活動のほか、自ら対応し、立ち上がる力(レジリエンス)を高める活動にも役立てられます。「NHK海外たすけあい」を通じて、引き続き温かいご支援を心よりお願い申し上げます。

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