アフガニスタン地震発生から1カ月が経過、国際赤十字と共に、日本赤十字社もさまざまな形で支援を実施
2025年8月31日にアフガニスタンを襲った地震から1カ月が経過しました。この地震により2,200人以上が死亡し、3,700人以上が負傷、被災した人びとは約50万人に上ります。現地の赤十字社であるアフガニスタン赤新月社は、赤十字国際委員会(以下、ICRC)と国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)、そして各国赤十字・赤新月社と共に、決して立ち止まることなく、支援を必要とする人びとのために最前線で活動を続けています。
クナール州ヌルガル地区の避難所で372世帯に小麦粉を配付©ARCS
同地区避難所にて100世帯にソーラーパネルやバッテリーを配付©ARCS
アフガニスタン赤新月社と国際赤十字の対応
国内全土に34の活動拠点を持つアフガニスタン赤新月社は、地震発生直後から災害対策本部を立ち上げ、捜索・救助や搬送、医療の提供、救援物資の配付、避難所や仮設トイレの設置、温かい食事の提供、現金給付など、人びとのニーズに合わせて幅広い活動を行っています。冬に向けた備えも含めて、これまでに6万1,000人以上に支援を届けてきました(9月16日時点)。
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クナール州の3万2,571人に救援物資を配付 | ![]() |
仮設トイレの設置や衛生キットの配付を通して、3,070人に水・衛生支援を提供。 |
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2万4,529人に温かい食事を提供。 | ![]() |
4つの巡回診療チームが活動を継続、5,227人に医療サービスを提供。 |
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女性を含む約214名のボランティアが救援活動を実施。 | ![]() |
1,674張のテントを配付し、1万1,718人に避難所を提供。 |
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緊急アセスメントに基づき、4,544人に現金給付を実施。 | ![]() |
1,552人にこころのケアの支援を実施。 |
(上表内の数字はすべて9月16日時点)
今後の復興に向けた中長期的な支援として、アフガニスタン赤新月社と連盟は、これまでの活動に加え、仮設住宅の設置や生計支援などを含めた支援活動も計画しています。一日でも早く被災された方々が安全で安心して暮らせる生活に戻れるよう、アフガニスタン赤新月社を筆頭に、国際赤十字は一丸となって、支援を必要とする人びとに寄り添い続けます。
日本赤十字社はICRCへの追加資金援助を決定
速報5でもお伝えした通り、ICRCは1987年よりアフガニスタンで活動しています。今回の壊滅的な地震を受け、ICRCはアフガニスタン赤新月社および連盟と連携し、人道支援活動を迅速に拡大して展開しています。支援内容には、被災地域内の2病院や巡回診療チームへの医薬品の提供、仮設トイレや水タンクの提供、行方不明者の捜索・連絡支援、現金給付、リハビリテーション支援が含まれるほか、地震や地滑りにより偶発的な事故発生の危険性が高まっている、残留地雷や不発弾に対する啓発活動も計画しています。
人道ニーズが急速に高まる状況下、ICRCは日本赤十字社(以下、日赤)を含む各国赤十字・赤新月社に対して緊急支援を要請し、日赤はその要請に応えて1,000万円の資金援助を決定しました。
災害対応を側面から支援する日赤職員の姿
連盟は、今回の地震発生後48時間以内に災害緊急救援資金(Disaster Relief Emergency Fund 以下、DREF)を用いた支援を開始し、また3日後に緊急救援アピール(以下、EA)を発出しました。これらの発出には、連盟アジア大洋州地域事務所(Asia Pacific Regional Office:以下、連盟APRO)に災害対応要員として派遣中の日赤職員が携わりました。
世界の5つの地域のうちで最も災害発生数が多く[1]、死者数および負傷者数が最も多いのが、アジア大洋州地域です。連盟APROに派遣中の日赤職員は、同地域で災害が発生した際にDREFやEAなどの緊急資金拠出への対応などを行い、また平時には域内各国に設置されている連盟事務所と連携し、災害対応力の強化や防災などにかかる事業支援を行っています。以下では、連盟APROで業務にあたった職員の声を紹介します。
[1] CRED, 2024 Disasters in Numbers
季節性の災害に加えて、突然訪れた地震対応の場面で(日赤愛知医療センター名古屋第二病院 中島要員)
私はこれまで、2015年のネパール地震、2017年バングラデシュ南部避難民支援と、ERU[2]での事務管理要員としての2度の派遣や、国内災害では救護班、災害対策本部での活動などに複数回従事し、平時は赤十字病院の会計・企画部門や、支部で活動資金の募集などの業務に携わってきました。今年8月からは連盟APROに災害対応要員として派遣され、業務にあたっています。
[2] 緊急対応ユニット(Emergency Response Unit=ERU):連盟の緊急支援ツール。
私が着任した時期は、季節性の大雨や台風の影響による洪水などの災害が複数の国で発生しており、各国赤十字・赤新月社の活動を支援するためのDREFの申請に着任直後から関わりました。また、DREFを申請していた国の被災規模が大きくなりEAへ移行するケースもあり、私を含めて4名の災害対応チームも忙しさが増してきたところに、アフガニスタン地震が発生しました。
地震発生当日は、連盟APROのあるマレーシアは祝日でしたが、当番の災害対応要員が現地と迅速に連絡を取り合い、また連盟APRO内でも緊急のオンライン会議を開催。初動対応としての資金拠出を進めること、EA、DREFなど国際的支援を求めることが決定された場合のスケジュール確認などを行いました。大規模な災害が発生した場合は、通常の地域ごとの担当の枠を超えてチーム全体で業務を分担します。
中島要員©JRCS
今回、私はDREF申請を担当し、現地からの申請文書の確認や支援内容をより効果的なものにするために、専門的な知見を持つスタッフ[3]の意見を求めるなどの調整業務を行いました。現地の担当者は多忙を極めるため、オンライン会議を個別に調整し、解決すべき事項を確認しながら修正作業や情報収集などを行い、申請手続きを進めました。時間単位で定められた申請スケジュールの中で、時間内に連盟本部への申請を無事終え、100万スイスフランのDREFの拠出承認を受けることができました。
連盟APROの災害対応チームの仕事は、被災者の方を直接的に支援する現場の仕事ではありません。私たちにできるのは、被災者を支援するその国の赤十字・赤新月社が必要な知識、人材、資機材、そして活動するための資金を迅速に提供できるようにサポートすることです。しかしながら、ここで働く誰もが、常に被災者のため、また現地の赤十字・赤新月社や国際赤十字の仲間たちがより効果的な支援が行えるようにするために、持ちうる知識や国際赤十字の資源を最大限活用できるよう尽力しています。
例えば、申請スケジュールが時間単位で定められているのも、いち早く被災者の方に赤十字の支援を届けるためです。被災地との時差の関係で、業務が早朝や深夜に及ぶ場合もあります。しかし、現場とは離れた事務所の中にいても、現地で苦しんでいる方々のことを思い、救いたいという気持ちを胸に働く仲間と共に、赤十字の活動を支援していただく皆さまの気持ちをしっかり被災者のもとに届けるため、日々業務にあたっています。
[3] 連盟APROには分野ごとの専門家がおり、平時からさまざまな事業を行っています。
現地からの申請内容を確認している様子©JRCS
アジア大洋州地域における赤十字の災害対応と防災の取り組み(大阪赤十字病院 仲里要員)
私は大阪赤十字病院に所属する薬剤師の仲里と申します。2017年を最初に、これまで8回にわたり海外での赤十字活動に従事してきました。過去7回は、主に現場に近いところで働いてきましたが、今回は連盟APROにて、主に緊急対応を担う部署で仕事をしました。
連盟APROはアジア大洋州地域にある38の国と地域の赤十字・赤新月社を支援しています。日常的にこの地域の自然災害をモニタリングし、国際的な支援が必要となった場合には、各国赤十字・赤新月社が迅速にその活動を開始できるよう、物資・資金・人員の面から支援を行っています。
また、近年では、災害発生後の対応だけでなく、「防災」にも積極的に取り組んでおり、各国赤十字・赤新月社が災害に対してどれぐらいの準備や備えができているかを調査・評価し、不足している部分に対して個別のアドバイスや支援を提供しています。さらに、季節ごとの自然災害(台風や洪水など)に関する知識や防災方法のリマインドも行っております。
連盟APRO事務所の玄関©JRCS
今回、私が滞在していた期間では、連盟APROと中国紅十字会香港支部が支援した、マレーシアの洪水に対する緊急支援を視察する機会がありました。日本の河川と違い、東南アジアの河川は流れが緩やかなため洪水が頻発し、この地域も春先に大きな洪水が発生しました。マレーシア赤新月社は、被災地域の日常生活を再建するため、物資配付を中心とした支援活動を行っており、それを連盟APROおよび中国紅十字会香港支部が多方面で支援しました。今回の視察では、配付後の調査(物資の種類や配付場所は適切であったかなど、今後に向けての改善点を見いだす目的)を、戸別訪問などを通じて実施しました。調査には若者中心のボランティアが積極的に参加しており、皆さん仕事を休んでまでこの活動に熱心に活動する姿に、改めて赤十字・赤新月社のボランティアの存在の大きさと大切さに気付かされました。
マレーシア赤新月社のボランティアと中国紅十字会香港支部のスタッフ(右から3番目が仲里要員)©JRCS
気候変動の影響により、日本だけでなく、アジア地域でも熱波や感染症、洪水などの災害が頻発しています。こうした災害に対しては、緊急支援だけでなく、事前の防災対策も充実させることで、大きな被害を防げるのではないかと思います。
海外救援金を募集中
日赤は「2025年アフガニスタン地震救援金」を募集しています。被災地ではアフガニスタン赤新月社のスタッフやボランティア、連盟およびICRCが懸命に活動を行っており、またさまざまな形で日赤職員も現地の救援事業をサポートしています。今後も引き続き、現地のニーズに対して適切な支援を迅速に届けることができるよう、皆さまからの温かいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。







