【速報5】アフガニスタン地震:孤立する山岳地帯に支援を届けるために、広がる国際赤十字の緊急救援
アフガニスタン東部で8月31日に発生した地震から11日が経過しました。険しい山岳地帯である被災地では、多くの人びとが緊急医療、避難所、水、食料などの支援を必要としています。
赤十字国際委員会(以下、ICRC)アジア大洋州地域局長のレジス・サビオは、「この地震はとても悲惨で、数千人が亡くなり、多くの人が負傷しました。冬が近づく中、人びとは避難所もなく、生活に必要な物資も手に入らず、非常に厳しい状況に置かれています。国際社会はこの現実から目を背けることなく、緊急支援を強化し、助けを必要としている人びとに手を差し伸べる必要があります」と語ります。
ICRCの調査チームは、今回の地震で大きな被害を受けたクナール州を訪れ、 地域住民への聞き取りや支援のニーズ調査を実施©ICRC
アフガニスタンは長年にわたる紛争や自然災害により、人口の約半分である約2,290万人が人道支援を必要としており、約1,480万人が危機的またはそれ以上のレベル(IPCレベル[1] 3以上)の食料不安に苦しみ続けています[2]。
さらに、東部の被災地は、長年の紛争の影響により隣国に避難していた多数の帰還者を受け入れており、生活に必要な基本的なサービスがひっ迫していることに加え、物価高騰、地雷や不発弾の危険など、複合的な脅威にさらされています。
こうした状況を踏まえ、今回の地震発生以前から、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)およびICRCは、アフガニスタン赤新月社と緊密に連携し、継続的に人道支援活動を行ってきました。
そして、今回の地震発生時も、その連携を生かし、アクセスが困難な被災地においても迅速な救援活動を展開しています。
[1] IPCレベルとは、食料危機の深刻度と規模を示す国際指標で、「レベル1:無し/最小、レベル2:ストレス、レベル3:危機、レベル4:緊急事態、レベル5:大災害」を示す。
[2] Afghanistan - Complex Emergency Fact Sheet #1, Fiscal Year (FY) 2025
紛争地で幅広い支援を展開するICRCの活動
ICRCは1987年からアフガニスタンで活動を続けており、現在はアフガニスタン国内11か所に拠点を構えています。ICRCは、中立・公平・独立の原則に基づき、武力紛争や暴力の影響を受ける人びとの生命と尊厳を守るため、各国の赤十字・赤新月社と連携することで、紛争地でも効果的で幅広い活動が可能となります。
地震以前から、特に被害の大きかったクナール州などで支援を行っており、今回の被害を受けて、被災地の病院や巡回診療チームへの医薬品の提供、離れ離れになった家族の再会支援、遺体袋や防護具の提供などによる保護支援、仮設トイレや水タンクの設置、多目的現金給付など、多岐にわたる支援を行っています。また、拘束施設への支援や、地雷の危険に対する啓発活動も計画されています。
クナール州でアフガニスタン赤新月社が実施する巡回診療に訪れた親子©ICRC
連盟および各国の赤十字・赤新月社の活動
連盟は、アフガニスタン赤新月社の捜索・救助、巡回診療チームの派遣などを支えるために、その緊急対応の仕組みを活用し、発災24時間以内に10万スイスフラン(約1,850万円)をアフガニスタン赤新月社に送金しました。続いて、100万スイスフラン(約1億8,500万円)を災害救援緊急資金(DREF:Disaster Response Emergency Fund)からアフガニスタン赤新月社向けに拠出し、救援物資の配付などに役立てられています。また、9月3日には速報3でもお伝えした通り、緊急救援アピールを発出して広く国際社会に支援を募っています。
以前よりアフガニスタン国内に拠点を置く各国の赤十字・赤新月社も以下のように迅速に対応し、アフガニスタン赤新月社の救援活動を支えています。
- デンマーク赤十字社:アフガニスタン赤新月社に対して救援物資として生活必需品を提供。被災地に向け、心理社会的支援を行う現地スタッフの巡回チームを派遣予定。
- トルコ赤新月社:アフガニスタン赤新月社と連携し、被災地において9月2日より温かい食事を24時間配付。2名のスタッフをアフガニスタンに派遣し、現地でのアセスメント・調整などの活動を支援。9月上旬に約700トンの食料・生活必需品などの物資を届ける予定。
- ノルウェー赤十字社:医療キットの支援の他、アフガニスタン赤新月社の巡回診療チームの被災地への派遣を支援。
- カタール赤新月社:緊急食料パッケージ3,000食の配付、3,000世帯への安全な飲料水と衛生キットの配付、約21,000人に医療サービスなどを届けるための現地スタッフからなる巡回診療チームの派遣、地震により生活の場を奪われた約3,500人向けの簡易避難所500棟の設置を計画。
海外救援金を募集中
日本赤十字社は「2025年アフガニスタン地震救援金」を募集しています。少しでも多くの支援を現地に届けることができるように、引き続き、皆さまからの温かいご協力をどうぞよろしくお願いいたします。