トルコ・シリア地震から2年
2023年2月6日早朝、マグニチュード7.8の地震がトルコ南東部とシリアの国境付近を襲いました。およそ6万もの人びとが犠牲となり、多くの人が今も「復興」からは程遠い生活を送る中で、発災から間もなく2年が経とうとしています。
2025年1月、トルコ・カフラマンマラシュ県にあるコンテナ型仮設住宅の様子©Sevil Erkuş/ IFRC
■トルコ、見えない傷に寄り添って
トルコでは現在も、42万人以上が上の写真のようなコンテナ型仮設住宅での避難生活を余儀なくされています。トルコ赤新月社(以下、トルコ赤)は、仮設住宅が立ち並ぶ区域に「コミュニティサービスセンター」と呼ばれる公民館のような場所を設置し、こころのケアや子どもが安心して遊べる場所の提供などを行うほか、戸別訪問での聞き取り、生計支援など地道な活動を続けてきました。この中で、日本赤十字社(以下、日赤)は、トルコ赤の地域保健活動(救急法講習や感染症予防、母子保健講習などの実施を通して健康に関する知識や技術を広め、地域全体の健康維持・向上を目指す活動)などを支援し、慣れない環境で生活する人びとの健康やつながりづくりに貢献しています。
先日発行されたトルコ赤の復興活動に関する報告書では、人びとの復興に対する不安感、社会的なつながりの喪失、密集した仮設住宅におけるプライバシーの欠如、家庭内暴力の増加、感染症まん延のリスク、女性や子どもなど特に社会的に弱い立場に置かれやすい人びとへの配慮の必要性などが指摘されました。今後はいっそう細やかで個人のニーズに沿った支援を長期的に継続することが課題となっており、日赤をはじめとする姉妹社は、トルコ赤のそのような「誰も取り残さない活動」を継続的に支援していきます。
■シリア、緊急救援と復興支援を両輪に
シリアでも、シリア赤新月社(以下、シリア赤)や国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)、赤十字国際委員会(ICRC)などが一丸となって活動を続けています。しかし、地震以前から続いていた紛争や経済危機に加えて、山火事などの自然災害、そして中東地域全体の情勢変化の影響など、複合的な危機の中で人道ニーズは高まる一方です。また、昨年12月8日の政権交代以降もアレッポなどでは散発的な武力衝突が見られるほか、人の移動が増える中での爆発性戦争残存物のリスク啓発といった喫緊の課題にも直面しています。
国民の90%以上が貧困ライン以下(国際基準で、1日2.15米ドル未満で暮らす状態)で生活しているシリアでは、食料や物資の配付および保健医療サービスの提供などの救援活動が不可欠です。それと同時に、社会インフラの機能回復や、活動の持続性確保のため職員やボランティアへの研修実施といった今後の復興のための活動を並行して行うことが求められています。
日赤は震災以前から巡回診療など保健医療分野に対する支援を重点的に行ってきました。そこで生活する人びとが安心して尊厳のある生活を送れるように、今後も継続的な支援を続けてまいります。
シリアを含む中東地域全体に対する支援は、こちらの海外救援金で受け付けています。ぜひ皆さまの温かいご支援をお願いいたします。
昨年10月、レバノンでの戦闘激化を受けシリアへの大規模な人口流入が発生した際も、最前線で活動してきたシリア赤©SARC
■発災2年の活動報告会を開催します
発災からちょうど2年となる2月6日、15時からオンラインで活動報告会を開催します。これまでの国際赤十字の活動をご報告するほか、日赤職員が昨年11月のトルコ出張で見た現地の様子や、保健医療コーディネーターとして現在もシリアで活動する連盟職員へのインタビューも交えて、これまでの歩みと、今の状況をお伝えいたします。こちらのページから、ぜひご参加ください。