ハイチ大地震:震災からまもなく3カ月、被災地の人びとは今 ~これからの復興に向けて~

2021年8月14日にマグニチュード7.2の地震が発生したハイチ共和国は、震災からまもなく3カ月を迎えようとしています。地震ではハイチ南西部を中心に大きな被害がもたらされ、死者2,200人以上、負傷者12,000人以上、行方不明者300人以上、全半壊した家屋13万7500軒以上、被災者85万人のうち人道支援が必要な人は65万人以上にのぼると報告されています(国連報告)。もともと社会的・経済的に不安定な状況にあったハイチを襲った今回の地震の影響で、現在も多くの人びとが苦しい生活を余儀なくされています。

日本赤十字社(以下、「日赤」)は、地元のハイチ赤十字社(以下、「ハイチ赤」)や国際赤十字が現地で行う救援活動に対する資金援助とともに、10月初旬からは、ハイチ赤の要請で被害の大きかった南県のレカイに設置された国際赤十字のテント型の野外病院(病院ERU)に日赤の薬剤師や看護師を継続して派遣し、被災した人びとへの医療サービスの提供を支えています。

震災からまもなく3カ月。今号では、被災地の人びとの様子と病院ERU以外の赤十字の支援活動の現状、そしてこれからの支援計画についてお伝えしたいと思います。

国際赤十字とハイチ赤十字社の支援活動

画像 被災者への救援物資の配付を終えた赤十字ボランティアたち©Luc Alary/Canadian Red Cross

8月の発災直後から、国際赤十字・赤新月社連盟や赤十字国際委員会、日赤を含む各国赤十字・赤新月社は、地元のハイチ赤を中心に、被災者に対してさまざまな支援活動を展開しています。現場の赤十字による支援は、負傷者の捜索・救助活動といった緊急救援から、最も支援を必要としている人びとへの救援物資の配付、感染症などの流行を防ぐための安全な水や衛生環境の確保、保健医療へのアクセスの提供などを中心としつつ、今後は復興を見据えた支援にシフトしていきます。

多くの被災者が住む家や家財道具を震災で失う中、10月末時点で、ハイチ赤は、国際赤十字の緊急救援ユニット(ERU:Emergency Response Unit)の一つである救援ERUの協力のもと、被害がとくに大きかった南県やニップ県で、4万人以上に毛布やバケツ、ビニールシート、キッチンセット、衛生用品キットなどの救援物資を届けることができました。

画像 被災地におけるハイチ赤十字社による救援物資の配付状況(10月24日現在)

画像 被災した子どもたちに正しい手洗いの方法を教える赤十字ボランティア©Adriano Valentini/IFRC

また、今回の震災では、暑いハイチで人びとが暮らすのに欠かせない水の給水設備も大きな被害を受け、21万人以上の人びとが安全な飲み水や衛生環境を保つために必要な水を得ることが困難になっています。そのため、現地では蚊を媒介としたマラリアやコレラ、皮膚疾患など、汚れた水に起因する病気が懸念されています。ハイチ赤では、地域の赤十字ボランティアを中心に、これまでに4,000人以上に正しい手洗いの方法や感染症予防対策などの衛生指導・促進を行っており、新型コロナウイルスの感染予防も含まれています。ニップ県とグランダンス県では、もともとハイチ赤とプロジェクトを実施していたスペイン赤十字社などの協力も得て、8,000人以上への安全な水の提供を続けています。

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訓練を受けた赤十字ボランティアたちにより赤十字の給水モジュールで浄水された水はニップ県の被災者4,000人以上に届けられる ©Luc Alary/Canadian Red Cross

被災地の人びとの声、そしてこれから

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被災者の一人、ロゼッテさん(写真上)は、震災で家を失い、ビニールシートと毛布で作った簡易なテントに家族と暮らしています。「私には5人の子どもたちがいます。地震が起きて以降、何とか自分たちの生活を立て直そうと頑張っていますが、本当に大変です。赤十字の支援は、私だけでなく私たちの地域コミュニティ全体にとってとても大切です。」

ハイチ赤と国際赤十字が合同で行ったニーズ調査では、住民の住む家、保健医療施設、上下水道の設備が多く被災しており、シェルター、保健医療、給水・衛生分野における支援ニーズが極めて高いことが確認されました。ニーズ調査は、土砂崩れなどで道路が遮断されアクセスが困難となっている山岳部などのへき地にある集落でも行われ、赤十字は「誰も取り残さない」ように取り組んでいます。今回の地震の被災者、そしてハイチ赤のスタッフやボランティアの中には、2010年の同国での大地震(死者22万人以上、負傷者約30万人、被災者は全人口の約3分の1にあたる370万人)を経験した人も多く、こころのケアも重要な支援の一つとなっています。

国際赤十字は、10月29日、発災翌日の8月15日に発出したハイチ地震の被災者支援にかかる緊急救援アピールを増額改訂しました。改訂された支援計画は、被害のとくに大きかった南県とグランダンス県を中心に、最も脆弱な立場にある被災者35,000人を対象として、2023年2月までの18カ月間の支援を実施するため、総額1,920万スイスフラン(約23.8億円相当)の支援を国際社会に求めています。

現地では、赤十字の支援活動を計画・実施する際には、被災した人びとの声、地域の人びとの意見に耳を傾けることにも力を入れています。もともとの貧困に加え、燃料・食料などの不足が問題となり、さらなる治安の悪化が懸念される現地ですが、赤十字は改めて人道支援を届ける赤十字のスタッフ・ボランティアの活動への理解と尊重をハイチ国内でも強く呼びかけながら、被災者に寄り添った支援を続けていきます。

※ハイチに派遣された日赤職員の現地での活動の様子は機関誌「赤十字NEWS」12月号に掲載の予定です。ご期待ください。

日赤では、被災された方の救援及びハイチでの赤十字の人道支援のために、11月末まで海外救援金を募集しております。皆さまの温かいお気持ちを、ハイチの人びとが必要とする支援の形に変えて、現地にお届けいたします。救援金へのご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。

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