【NHK海外たすけあい】ハリケーン「メリッサ」への対応:日本赤十字社から緊急対応ユニット(ERU)要員をジャマイカに派遣
ハリケーン「メリッサ」がジャマイカ西部を直撃して約1カ月が経過しました。ジャマイカではこれまでに約230万人が被災し、9万世帯が避難生活を余儀なくされています(11月28日時点)。ジャマイカの西部と中南部の地域では降雨による洪水だけでなく、地下深くの水があふれ出す「地下水位の上昇」も続いています。ジャマイカの中西部に位置するマンチェスターでは、地下約90メートルの深さから水位が急速に上昇し、地表に水が湧き出している地域が見られます。これらは生活の復旧の妨げとなっており、被災した人々の避難生活は長期化し、学校の再開にも遅れが出て、子どもたちが学習の中断を余儀なくされています。
水が引かない地域が多いため、現地では113カ所の緊急避難所が開設されており、多くの世帯が避難生活を続けています(11月19日時点)。長引く浸水は、健康にも深刻な影響を及ぼしています。すでに複数の地区で、レプトスピラ症(動物の尿で汚れた水や土に触れることで起こり、高熱や筋肉痛などを引き起こす細菌感染症)や破傷風の症例が報告されており、公衆衛生上のリスクが高まっています。汚染水に触れる機会が増えていることが背景にありますが、医療施設の損傷や水質の悪化も重なっており、現地では関係する作業員への防護具の提供、消毒の徹底、地域への注意喚起、感染症のモニタリング強化などの対策も急務です。
ジャマイカ南西部のセント・エリザベス教区ブロンプトン地区で倒壊した家屋。この家の住人はハリケーンの際、家の中で唯一残ったコンクリート製の浴室に避難©Jamaica Red Cross

同地区でキッチンだけが残った家屋©Jamaica Red Cross
このような状況下で、国際赤十字・赤新月社連盟は、11月中旬からジャマイカで診療所ERU(Emergency Response Unit)を展開しています。このたび、このERUを主導するカナダ赤十字社(以下、カナダ赤)から日本赤十字社に協力要請があったことから、日本赤十字社は日本赤十字社和歌山医療センター救急科・集中治療部副部長の益田医師を派遣することを決定し、同医師は12月中に約3週間の予定で、被災地で活動を続けるERUチームの一員として診療活動を行います。
益田医師はこれまで、バングラデシュ、レバノン、パレスチナなどで診療や現地の医療従事者の指導に携わっており、今回もその経験を生かして、最前線での任務にあたります。同医師は、今回の派遣に先立ち、現地での感染症拡大防止に努める意気込みを語りました。「現地では衛生環境の悪化に伴い、感染症の流行が懸念されていると聞きます。私は赤十字の一員として、たとえ地球の裏側であっても、一人でも多くのいのちと健康を守れるよう、医師としてできることをまっとうしてまいります」と意気込みを述べています。
日本赤十字社本社で出発前のブリーフィングを受け準備をする益田医師©JRCS
■ジャマイカ赤十字ボランティアの懸命な対応
現地の赤十字組織であるジャマイカ赤十字社は、これまでに300人以上のボランティアを動員して、380世帯以上を対象に被害状況の確認とニーズの調査を行いました。さらに、大人421人と子ども188人にメンタルヘルスプログラムを提供し、5,000世帯に生活必需品を届けました。また、国際赤十字などと連携し、離散家族連絡支援と地域でのWi-Fiサービスを開始し、活動支援と地域連携を強化しています。

メンタルヘルスサポートを行う赤十字ボランティア©Jamaica Red Cross

支援物資の仕分けをする赤十字ボランティア©Jamaica Red Cross
日本赤十字社は、12月1日から25日まで「NHK海外たすけあい」キャンペーンを実施しています。日本赤十字社の国際活動は皆さまからのご寄付に支えられており、このキャンペーンでお寄せいただいたご寄付も、世界で発生している自然災害などで苦しむ人々のために使われます。皆さまの温かいご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。