イスラエル・ガザ人道危機:武力衝突の激化から2年 ~支援が届けられる状況を望んで~

イスラエルとガザの間での武力衝突が激化して、10月7日で2年が経過します。一刻も早い停戦が待たれる中、人びとは厳しい状況に置かれています。犠牲者は双方で6万7,000人を超え、負傷者は175,000人以上にのぼっています(OCHA2025年9月末)。イスラエルでは人質の家族が2年もの間、不安な日々を過ごしています。ガザ地区では住民のほどんどが避難生活を強いられ、人道支援が妨げられる状況や、それに伴う水や食料の不足が深刻です。2025年8月末には国連によってガザ市での飢きんの発生が確認されました。今回は、最前線で活動する赤十字のスタッフや、現地で必死に暮らす人びとの声をお届けします。

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武力衝突で傷ついた街と少年の姿©Pascal Hundt/ ICRC

不安な中、避難先を求める人びと

ガザ地区は日本の種子島、あるいは東京23区の半分ほどの大きさですが、現在、その80%以上が避難区域に指定されています(OCHA地図参照)。210万人とされる住民のほとんどが食料、医薬品、生活必需品の不足に直面する中、幾度となく果てしない道のりを歩いて避難を繰り返しています。また、避難命令に従うことが困難な負傷者、病人、障がいのある人びとも多くいます。

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避難を余儀なくされる人びと©Reuters Connect

ガザで赤十字国際委員会(ICRC)に勤務するアフメド・アル・ワハイディ職員は目に映った光景、人びとの様子について次のように語ります。

「先日、家のすぐ近くで攻撃がありました。爆発のせいで壁が揺れ、北部にある家の中までほこりが立ち込めました。家の周りは危ないので、私は北部に家族を残して、6時間歩いて南部まで避難先を探しに来ています。ここでは避難先を見つけられなかった多くの人びとが道端で横になっています。損傷した道路を長時間歩くのはとても過酷で、衰弱している高齢者や病人の姿も多く見かけます。北部に残してきた妻や幼い子どもたちが心配ですが、家族のために、皆で住める場所を探したいです」

20251003-5e2e92cf1450d9791fbff2ccd59f9b1faf39d7b6.pngガザの80%以上が避難区域に指定されている(引用:OCHA

願いはただ一つ「今すぐに支援が届くようになること」

ガザ地区は今、人の行き来や物資の搬入に厳しい制限があるため、支援自体が物理的に困難です。水や食料が極端に不足し、今年の8月下旬には国連によってガザ市での飢きんの発生が発表されました。住民の45%15歳未満で構成され、子どもが多く暮らすガザですが、2026年6月までに、5歳未満の子ども132,000人が急性栄養失調、うち4万1,000人が重度なケースに陥ると推計されているほか、100万人の子どもが心理社会的支援を必要としています。

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食料配付の列に並ぶ人びと©PRCS

パレスチナ赤新月社で活動を続ける看護師は言います。

「母でもある私は、1日1食で過ごし、それすらも子どもに譲り、葉を煮た湯を『ジュース』と呼んで与え、空腹をしのがせています。飢きんは爆弾のように即座に命を奪わずとも、確実に人を死へ追いやります。支援が届かなければ子どもたちの未来は失われます。願いはただ一つ、今すぐガザに支援が届くようになることなのです」

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ミルクを与えられる保育器の中の乳児©PRCS

私たちは生きている人間なのです

南部で避難生活を送りながら、傷ついた家族を気遣うバシャールさんは言います。

「私は毎日、生活しているテントから病院まで片道45分かけて通っています。妹の世話をするためです。妹は今年の522日に負傷し、ナセル病院に15日間入院した後、病院自体が避難の対象となり、赤十字の野外病院に移りました。妹は息子・娘たちをはじめとする家族を失いました。今は私たちが妹を支え、世話をしています。私たちは、犠牲になった人びとや傷ついた人びとが、ただの数字ではないことを伝えたいのです。私たちは人間です。生きている人間なのです。私たちには感情があり、心があります」

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避難先のテントで暮らすバシャールさん©ICRC

国際人道法では戦禍にいる民間人や、人道支援にあたる人びとは、攻撃から守られるべき存在とされています 。赤十字は、公平・中立・独立の立場で、紛争当事者との対話を継続するとともに、人道支援を必要とする人びとに手を差し伸べ、それにより、武力衝突や暴力の影響を受ける人びとの苦しみを和らげられるよう尽力しています。

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