【速報3】パキスタン洪水:誰ひとり取り残さない支援を~ 日本赤十字社は連盟緊急対応要員の派遣を決定
2025年6月下旬以降、モンスーンの影響により記録的な豪雨が続き、パキスタン全土に大規模な洪水被害をもたらしています。現地当局によると、季節平均と比べて降雨量は73%増加しており、気候変動や氷河の融解、インフラのぜい弱性が被害をさらに拡大させました。
この洪水により、全国で400万人以上が影響を受け、200万人が避難を余儀なくされました。死者は1,006人、負傷者は1,063人に上り(9月19日時点[1])、最も被害が大きかったカイバル・パクトゥンクワ州で、死者の半数以上を占めています。
住宅、道路、橋、電線などのインフラが広範囲に損壊し、6,500頭以上の家畜が失われました。特に子どもたちへの影響は深刻で、多くが避難生活を強いられ、教育機会の喪失も懸念されています。
中でもパンジャーブ州は、パキスタンの主要な農業地帯であり、洪水による作物の損失、家畜の死、かんがい設備の破壊は、国家の食料安全保障に深刻な影響を与えています。すでに数百万人が食料不安に直面しており、飢餓のリスクが急速に高まっています。さらに、清潔な水や衛生設備へのアクセスが困難となり、感染症の流行リスクが高まっています。
こうした状況の中、パキスタン赤新月社は全国7支部にわたる1,000人以上の職員と2万人のボランティアを動員し、被災地でのニーズ調査に基づいて、救援物資や食料の配付、給水・衛生支援、医療および心理社会的支援など、幅広い救援活動を展開しています。特に、支援へのアクセスが困難な女性や子ども、高齢者、障がい者、移民など、誰ひとり取りこぼさないよう、包摂的かつニーズに即した支援の提供に努めています。
[1] Y5rkhKV6UOtdlPi3uvJH.pdf
被災地を訪れニーズ調査を行うパキスタン赤新月社と国際赤十字・赤新月社連盟スタッフ©PRCS
日赤は連盟緊急対応要員を派遣(調達部門)
日本赤十字社(以下、日赤)は、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)の要請を受けて、連盟の調達部門の緊急対応要員として、日赤和歌山医療センターの職員をパキスタンへ派遣することを決定しました。
現地で必要な物資等の調達を行うこの部門は、広範囲にわたる洪水の影響により、物資やサービスへのアクセスが困難な状況となっている現地で、パキスタン赤新月社および国際赤十字の人道支援活動を支える重要な役割を果たしています。同職員は、緊急対応に必要な物資やサービスを、適切な品質とタイミングで提供するため、現地での調達に関する業務の調整・実施を担当し、派遣期間は約3カ月間を予定しています。
女性や子どもも安心して利用できるように配慮しながら巡回診療を実施©PRCS
アクセスが困難な被災地にも、ボートで救援物資を届ける©PRCS
パキスタンは、世界の温室効果ガス排出量の1%未満しか占めていないにもかかわらず、気候変動の影響を大きく受けている国の一つです。近年では2022年にも大きな洪水があったように、度重なる自然災害に見舞われています。
国際赤十字を通じたこの災害にかかる支援は、緊急対応にとどまらず、将来的な備えや回復力の強化、持続可能な復興への投資としても極めて重要です。引き続き、「2025年パキスタン洪水救援金」への皆さまの温かいご支援とご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。