ウクライナ人道危機 こころのケアを受ける人びとの声

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こころのケアに携わるウクライナ赤十字社スタッフとボランティアのトレーニングの様子🄫URCS

 ロシア・ウクライナの国際武力紛争の影響により、現地では、心理社会的支援(以下、こころのケア)を必要とする人の数が急激に増加していると言われています。多くの人が大切な親族や家を失い、愛する人と離れ離れになったり、家を追われたり、あるいは砲撃や一時的な占領にあったりしています。これらはすべて被害にあった人びとに重大な影響を及ぼし、さらに精神的・身体的な健康の問題につながる可能性があります。

ウクライナ赤十字社によるこころのケア活動

 ウクライナ赤十字社(以下、ウクライナ赤)は2014年からこころのケアに力を入れ始め、現在ではこの取り組みはウクライナ赤の活動の重要な柱の一つとなっています。2022年2月以降は、特に国内避難民や退役軍人とその家族、高齢者や障害のある人などを対象にこの支援を提供しており、これまでに国内20州およびキーウ市の赤十字の支部において、約61万人に、こころのケアや心理的応急処置を実施しました。また、増大するニーズに対応するために、継続的にスタッフやボランティアへのトレーニングも実施しています。
 今回は、ウクライナ赤の各支部が実施するこころのケア活動に参加した人びとやボランティアの声をお届けします。

魂のチョウ

 私はミコライウから逃れてきました。2022年2月を境に、私の人生は永遠に変わってしまいました。これまで私が知っていたすべてのことは一瞬にして覆されました。私の家も破壊されましたが、一番の苦しみは息子が遠くの戦場にいることです。毎日、希望と恐れの中で生き、息子からの便りを待っています。
 人生は不安でいっぱいになってしまいましたが、こころのケアの活動を通じ、この嵐の中でも、小さな平和の島~チョウでいっぱいの花瓶~を見つけました。これは、単なる手芸ではなく、私の心の中の世界を表しています。壊れやすくて、緊張しているけど、希望にも満ちあふれているのです。
 花瓶のうえでひらひらと舞うチョウは自由と明るさ、私が待ち望んでいるものを象徴しています。どんな暗闇の時にあっても、喜びのかすかな光を見つけることができるのだと思い出させてくれます。この花瓶は光が戻ってくるという私の信念そのものです。そして、私がその信念を持ち続けているかぎり、私の魂のチョウは決して舞うことをやめません。

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優しさと感謝のブーケ

 ウクライナ赤のボランティアです。私たちは毎日、紛争によって人生を覆されてしまった人たちに寄り添っています。私たちは人びとの話に耳を傾け、助け、ただそこにいます。なぜなら、サポートされていると感じることがいかに大切かを知っているからです。
 ある日、一人の女性が私たちのところにきました。その人は、ウクライナ東部からの避難民でした。紛争は彼女から家を奪いましたが、人への信頼、優しさ、未来までは奪えませんでした。彼女は、創作活動の中に慰めを見いだし、絵に心を注ぎました。この絵は花の絵以上のものです。希望に満ちています。一筆一筆に彼女の旅の一部が刻まれており、暗闇のどん底にあっても、色彩の一つ一つが光の線になっています。
 彼女は描いた絵を、私たちボランティアに感謝のしるしとしてプレゼントしてくれました。この絵は私たちに思い出させてくれます。最も困難な状況にあっても、美しさ、優しさ、人びとのつながりを見いだせるのだと。私たちは強く、再び花を咲かせます。

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私の家

 私の名前はヴィクトリア。故郷はへルソンで12歳です。今でも遠くからでも故郷を愛しています。私の町が紛争によって苦しんでいることを知るのはとてもつらいですが、私の記憶の中にある町は今でも輝き、温かく、恋しいです。
 友達と一緒に何時間も遊んだ道やドニプロ川、私の学校、私たちの家や庭を恋しく思います。時々、もしこのドアを開けたら、お母さんの声や焼きたてのパイの匂いや温かさがあり、窓枠で居眠りする猫を見ることができるのではないかと感じることがあります。いつか、「ただいま」と言える日が来ることを信じています。絵には、へルソンを思い出させてくれるものをすべて描きました。ボート、公園、大地からの贈り物~スイカ、トマト~、そしてもちろん私の夢である平和です。これは単なる絵ではなく、私が心の中に抱いている故郷のかけらです。
 今私はキーウに住んでいて、こころのケアのセッションに参加しています。このセッションは、自分自身の感情を理解し、適応し、未来への信念を持ち続ける助けになっています。私の絵は故郷に戻るという夢を描いたものです。平和で自由な町に。

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 赤十字は人びとの日々を支えるための支援を今後も続けるとともに、いまだ終わりの見えない武力紛争と並行して進んでいる復興への支援も進めてまいります。引き続きウクライナ人道危機へご関心をお寄せいただくとともに、「ウクライナ人道危機救援金」へのご協力をどうぞよろしくお願いいたします。

ウクライナ人道危機救援金

受付期間:2022年3月2日(水)~2026年3月31日(月)

使途: 国際赤十字・赤新月社連盟、赤十字国際委員会、および各国赤十字・赤新月社が実施する、ウクライナでの人道危機対応およびウクライナからの避難民を受け入れる周辺国とその他の国々における救援活動を支援するために使われます。

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