バヌアツ地震救援派遣 ~連盟緊急対応要員の活動報告~

 2024年12月17日、マグニチュード7.3の地震がバヌアツを襲いました。この地震による死者は14人、国民の約4分の1に当たる約8万人が地震の影響を受けたとされています。
 国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)は、地震発生の翌日に緊急救援アピールを発出。このアピールに対し、日本赤十字社は2,500万円を拠出するとともに、現地の救援活動をサポートするため、連盟の緊急対応要員として、日本赤十字社和歌山医療センターの寺尾職員を現地に派遣しました。今回は、寺尾職員からの報告をお届けします。

■「南の楽園」を襲った大地震

 オーストラリアのブリスベンから飛行機で約3時間、南太平洋に位置し、83の島々から構成される自然豊かな国、バヌアツ共和国。見ず知らずの外国人にも、道ですれ違えば挨拶をしてくれる、とてもあたたかな国民性です。
 2024年12月17日、首都ポートビラ西方沖を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生。街の中心部は、建物の倒壊の恐れがあることから一部閉鎖が続き、その影響で職を失う、または店舗移転を余儀なくされるなど、生計を立てることが困難な状況になる方が多く発生しました。また、地震による建物の損壊、土砂崩れ、橋の崩壊も起こり、各種インフラに大きな被害が出ました。
 これまで、サイクロンによる被害は経験のあるバヌアツですが、死者が出るほどの大きな地震は近年起きておらず、多くの方が今回の地震で心理的にも大きなショックを受けたとされています。そのような中、バヌアツ赤十字社(以下、バヌアツ赤)は発災直後から、途切れることなく地震への対応を継続してきました。

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      コミュニティを襲った土砂崩れ©IFRC

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     地震の被害を受けた学校の様子©IFRC

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携帯電話会社を通じた一時金給付の説明/登録会には多くの被災者が参加©IFRC

 バヌアツ赤は、災害対応、保健、水衛生、住居支援、生計支援等の各部門が発災当初から活動を展開しており、その活動を「サポートサービス」と呼ばれる人事、会計、ロジスティクス、ボランティア管理部門などが支えています。
 各部門の主な活動としては、救急法の実施、こころのケア、献血の呼びかけ、他国際機関と協働した乳幼児の低栄養のスクリーニング、被災地域への給水タンクの設置、被災住居の調査、学校再開のためのテントの設置、携帯電話会社を通じた一時金の給付、支援物資(ブルーシート、携行型水タンク、衛生キット 他)の配付、啓発活動などがあり、さまざまな活動を、ボランティアと協働して対応に当たっています。

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衛生キット、携行型水タンク、飲料水を受け取る被災者と
バヌアツ赤のボランティア©IFRC

 とある被災コミュニティでは、「地震後に給水パイプが壊れてしまったため、15km離れた川まで水をくみに行かなければいけない。職を失い、生計が立たない世帯も多く、十分な食料もない状態が続き、地震後しばらくは支援を待つ以外何もできなかった。そこに、赤十字が初めて飲料水を持ってきてくれ、給水タンクも設置してくれることになった。とても感謝している」との話をしてくれました。
 バヌアツは例年、11月から4月がサイクロンシーズンとなるため、バヌアツ赤は今回の地震対応を行いながら、サイクロンへの備えと啓発活動も並行して実施しています。

 

■調達要員の活動

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        連盟の緊急救援対応チーム©JRCS

 連盟の緊急対応の調達要員として派遣された私は、バヌアツ赤のロジスティクス部門と連携し、救援活動に必要なモノやサービスの現地調達の支援を行いました。最初に着手したのは、地震によってバヌアツ赤の本社建物がどのような被害を受けており、どのような修理が必要かを調べる建物調査の入札でした。この調査により、建物修繕にいくら費用が必要かが分かるため、今後の予算割り当てや、修繕計画の具体化への第一歩となります。現地の商習慣を事前によく把握できていなかったところがあり、契約締結に至るまでに苦労したことも多々ありましたが、なんとか契約を結び、無事建物調査を派遣任期中に終えることができました。

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被災コミュニティに新たに設置された水タンクとバヌアツ赤の水衛生チーム©IFRC

 この活動の他に、バヌアツ赤がすでに締結していた現地業者との契約内容の明確化や、バヌアツ赤の各部門の活動に必要な資機材の調達の一部を担う業務などにも携わりました。
 水衛生を担当するチームから、被災コミュニティへの給水タンクの設置を完了したという報告を受け、受益者の方のうれしそうな写真を目にした時は、自分の活動が被災地の役に立っていることを実感し、また心が温まる瞬間でした。

 

 

■人道支援における「ロジスティクス」

 「ロジスティクス」というのは、前述のとおり、各部門の活動をモノやサービスの提供を通して支えるサポート部門であり、人道支援の枠組みの中では「サービスプロバイダー」とも呼ばれています。受益者の方とじかに対面する機会は少ないですが、各部門が事業を円滑に進めるために重要な役割を果たしています。
 連盟の緊急対応要員として派遣されたのは初めての経験であり、多くの学び・反省があり、知識経験共にまだまだ未熟であると実感した派遣でしたが、今後も緊急対応要員として活動するために、調達分野における専門性をより深め、赤十字の人道支援活動の一助となれるよう、研さんを積んでいきたいと思います。

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