イスラエル・ガザ人道危機:苦境に立たされる人びと、尊重されるべき国際人道法
2023年10月7日に武力衝突が激化してから1年半がたちました。今年1月には停戦が発効し、避難していたガザの人びとは北部に帰還を開始。人質の解放と被拘束者の釈放という当事者間で合意されたオペレーションも進んでいましたが、その後の状況悪化で人びとは再び苦境に立たされています。支援が円滑に進まない状況も報告されています。
パレスチナ赤新月社のスタッフも犠牲に
3月には15名の医療従事者が遺体で発見されました(パレスチナ赤新月社の救急隊員8名、民間の救急対応者6名、国連職員1名)。ガザ地区南部のラファで救援活動にあたっていたパレスチナ赤新月社の隊員との連絡は、3月23日に途絶え、30日に遺体で発見されました。また依然として救急隊員1名が行方不明です。2023年10月7日以降、負傷者の救出に尽力してきた仲間の訃報に、私たちは皆心を痛めています。
パレスチナ赤新月社社長ユニス・アル・ハティブは国連安全保障理事会におけるスピーチの中で犠牲となった8名の同僚の名前を読み上げ、国際人道法の遵守を国際社会に切に訴えました。
仲間の死は、パレスチナ赤新月社だけでなく、国際赤十字・赤新月社運動全体にとって耐え難い損失です。赤十字国際委員会(ICRC)は哀悼の意を示すとともに、医療・人道要員は地域社会の生命線であり、国際人道法の下で保護されなければならないと表明しています。 国際赤十字・赤新月社連盟も深い哀悼の意を表明し、会長であるケイト・フォーブスは「黙とうはしても沈黙はしない」と述べ、人道支援従事者の保護を訴えるとともに、悲しみを力に変え、人道支援の連帯と前進を呼びかけています。
仲間の訃報を受けたパレスチナ赤新月社の救急隊©PRCS
国連で発言するパレスチナ赤新月社社長©PRCS
これまでの国際ニュースでも度々触れてきましたが、戦時のルールである国際人道法において、医療従事者、医療施設や救急車、人道支援に関わる全ての人は尊重され、保護されなければなりません。命の危険にさらされている人びとの支援を継続するために支援者自身も安全に活動を行う必要があるからです。一人でも多くの方に知っていただき、支持いただけましたら幸いです。
ガザ地区南部ラファの赤十字野外病院での患者受け入れ(4割弱は子ども)
ICRCと日本赤十字社を含む14の赤十字社 ※ は、パレスチナ赤新月社と連携し、昨年5月から前述のガザ地区南部のラファに野外病院を開設しています。この赤十字野外病院は、ラファで唯一機能している病院であり、赤十字は患者の受け入れに全力を尽くしています。
※オーストラリア、オーストリア、カナダ、中国(香港)、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイスランド、日本、ノルウェー、スウェーデン、スイス、イギリスの赤十字社
ガザ地区南部ラファで赤十字が運営する野外病院©K.Chittarat/ICRC
<ラファ赤十字野外病院対応実績:2024年5月9日~2025年4月1日>
・診療件数:77,012件(男女比:男性54%、女性46% // 全体に占める18歳未満のこどもの割合:37%)
・入院件数:1,947件
・出産件数:406件
・手術件数:3,208件
赤十字の根幹である、苦しんでいる人びとの命と尊厳を守る活動、支援が続けられるよう、引き続き、皆さまのご支援をお願いいたします。