2024年度の国際活動を振り返って ~総括編 第1号 人道の普及~
2024年度は、長引くウクライナ人道危機、イスラエル・ガザ人道危機に加え、台湾東部沖地震やアメリカ・ロサンゼルスでの大規模火災など、世界で多くの紛争・災害等が起きました。日本赤十字社(日赤)は、国際赤十字・赤新月運動の一員として、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)、赤十字国際委員会(ICRC)、世界191の国と地域にまたがる各国赤十字・赤新月社とともに人道支援にあたりました。今月は、常日頃から赤十字の活動にご理解とご協力をいただいている皆さまへのご報告も兼ねて、2024年度の日赤の国際活動について、4回にわたって振り返ります。
第42回 NHK海外たすけあいキャンペーン実施報告
NHK海外たすけあいは日赤とNHKが毎年12月に実施している募金キャンペーンで、2024年で42回目を迎えました。42回目は「たすけあうことが希望への道をひらく」と題し、紛争をはじめ、さまざまな人道危機にさらされている人びとのいのちと健康、尊厳を守るため、そして支援を必要としている人びとが少しでも希望をもてるように、協力を呼びかけました。(キャンペーンの詳細はこちら)
今年度は、皆さまから78,462件、合計7億2,594万1,418円の多大なるご寄付をいただきました。皆さまのあたたかいご支援に心から感謝申し上げます。
皆さまからいただいたご寄付は、①紛争に伴う難民・避難民などへの対応、②頻発、激甚化する災害への対応、③人々のレジリエンスを強化するための取り組みの3つの軸をもとに、全世界に広がる赤十字のネットワークを活用した人道支援に用いられます。詳細な活動報告は夏ごろに日赤のホームページで公開予定です。
国際人道法の普及
今年度のNHK海外たすけあいキャンペーンでは昨今増加の一途をたどる紛争にフォーカスを合わせたことから、これを機に赤十字の紛争下での人道支援活動について紹介すると同時に、紛争時に守られるべき国際的ルールである国際人道法(IHL)の普及にも努めました。ハフポスト日本版では、日赤とのコラボ記事を掲載。武力紛争激化から約1年が経過したイスラエル・ガザを含む中東の様子を日赤現地代表部職員が語りました(記事はこちら)。さらに、俳優の秋元才加さんに昨今の紛争やIHLについてインタビューを実施し、秋元さんと一緒に私たちにできる人道支援について考えました(動画はこちら)。
また、12月18日(水)~12月25日(水)には、みなとみらいギャラリーA(神奈川県横浜市)において、ICRC駐日代表部、在日スイス大使館、日赤が共催で「War in Cities企画展~戦争の街を体感する」を実施。原形をとどめていないハンドバッグや人形など、激しい戦闘が行われたイラクでICRCの職員が収集したものを展示し、現代の都市部での戦闘における市民の苦しみを来場者に肌で感じてもらいました。期間中は1500人に及ぶ一般来場者にお越しいただきました。
会場の様子 ©ICRC
IHLセミナーの参加者たち ©JRCS
2025年2月19日(水)~20日(木)には、全国の日赤職員を対象にIHL普及セミナーをオンラインで開催し、全国から77名の参加者がこれからどのようにIHLを広めていくかについて議論しました。本セミナーには、日赤内の講師のほかに、ICRC駐日代表部、外務省軍縮不拡散・科学部軍備管理軍縮課、外務省総合外交政策局人権人道課、防衛省陸上幕僚監部法務官にもご協力をいただき、関係各所の取り組みについてもご紹介いただきました。
原爆ドームを訪れたウクライナ赤十字社一行 ©JRCS
6月、ウクライナ赤十字社のマキシム・ドツェンコ事務総長とイリヤ・クレツコフスキー副事務総長が来日し、東京と広島を訪問しました。ウクライナ赤十字社は、2022年2月の武力紛争激化以降、1万人以上のスタッフやボランティアとともにウクライナ全土で人道支援活動を続けています。6月の訪問は、ウクライナの現状を日本に直接伝えることで支援への理解と関心を深め、活動の継続を支えることが目的でした。
訪問中は、日本赤十字社本社や東京都支部、赤十字看護大学、広島赤十字・原爆病院を訪れ、組織強化や活動拡大のための情報交換を行いました。また、広島平和記念資料館を訪れ、被爆の歴史や当時の赤十字の救援活動、現在まで続く治療や支援について学びました。この訪問を通じて、両国の赤十字社の連携の強化と、ウクライナの人道支援活動のさらなる発展が期待されます。レポートはこちらからご確認ください。
国際赤十字の動き
国際赤十字・赤新月社連盟総会、国際赤十字・赤新月運動代表者会議、赤十字・赤新月国際会議が10月にスイスのジュネーブで開催され、ジュネーブ諸条約締約国政府、ICRC、IFRCおよび各国赤十字・赤新月社が一堂に会しました。
会議では、国際人道法を尊重する世界的文化の構築、災害や気候変動等人道上のニーズとリスクへの対応における基本原則の遵守や地域主導の持続可能な活動の実現等に関する決議が採択されました。
国際人道法関連の決議を踏まえ、国際人道法の普及強化にかかる日本政府との共同誓約を発表した他、会議期間中、各国赤十字・赤新月社との個別面談を行い今後の支援や相互発展に向けて意見交換しました。(国際会議のレポートはこちら)
国際会議で発言する清家社長 ©JRCS
核兵器廃絶にむけて
米国赤十字社(米赤)のユースボランティア(13~24歳)は、「ユース・アクション・キャンペーン」と題して、国際人道法の知識を同世代に普及する活動を行っており、2023年7月から1年間は「核兵器と武力紛争」をテーマに取り組んできました。日赤もテーマの重要性に鑑み、同期間に日米ユースのイベントを開催するなど積極的に協力してきました。2024年7月には、総まとめとして、米赤のユース代表と政府関係者はじめ核兵器に携わるさまざまな有識者との交流や報告が企画され、その一つとして、日本赤十字社長崎原爆病院名誉院長朝長医師が招かれました。米赤のユースと朝長医師の対談の様子はこちらからご覧いただけます。
また、2025年3月はじめには、アメリカ・ニューヨークの国連本部で核兵器禁止条約第3回締約国会議が開催されており、日赤職員2名とICRC駐日代表部からも2名が参加しています。詳細は4月発行予定の国際ニュースにてお伝えいたします。
女性活躍推進を通じた人道活動の推進
受章式でスピーチするワールストロームさん ©JRCS
国際赤十字・赤新月運動(赤十字運動)における女性リーダーの活躍と育成を行う世界的ネットワーク「GLOW Red(グローレッド:Global Network for Women leaders in the Red Cross Red Crescent Movement、詳細はこちら)」の創設者・代表であるマルガレータ・ワールストローム氏が赤十字運動の最高褒章「アンリー・デュナン記章」を受章しました。ワールストローム氏の受章の様子はこちら。
GLOW Redは2025年9月9日~10日の2日間にわたって、大阪・関西万博に出展される「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」の「WA」スペースに参加します。1日目は「組織における多様性の構築」、2日目には「人道危機における女性リーダーの役割について」と題してシンポジウムを行う予定です。このイベントは赤十字関係者のみならず、一般観覧も可能となっております(抽選)。詳細は大阪・関西万博の公式Webサイトに後日アップされる予定です。
さらに、この機会を捉え、GLOW Redの年次会合を東京の日赤本社で開催し、女性のリーダーシップを通じた人道活動の推進について各国からの参加者と議論します。
日赤のみならず赤十字運動全体が、赤十字の7原則に基づく人道支援を確実に届けるため、引き続き尽力してまいります。