米国赤十字社と核兵器に関するオンラインイベントを開催

 2023年11月7日(日本時間)に日本赤十字社(以下、「日赤」)と米国赤十字社(以下、「米赤」)は、赤十字国際委員会駐日代表部の協力の下、核兵器に関するオンラインイベント「Nuclear Weapons: A Japanese & American Youth Perspective(核兵器:日本と米国のユースの視点から)」を開催しました。
 日本のユースとアメリカのユースそれぞれ3名が、自身の取り組みや見解を発表し、今後の核兵器の在り方について意見交換をしました。

 米国赤十字社は「国際人道法ユースアクションキャンペーン」を展開しており、今年の7月から1年間のテーマを「核兵器と武力紛争」と定め、同社のユースが同世代のユースに国際人道法を普及する活動を行っています。

 今回のイベントは、日米両国の赤十字社が協働し、世代と国境を越えた取り組みが不可欠である核兵器という問題に対して、次世代の意見交換を行うべく、企画・開催しました。当日は発表者を含め、日米両国の各地から175名以上が参加しました。

核兵器の問題を自分の目線で語るユースたち

 日本のユースからは、主に①原爆投下後の広島と長崎の様子と核兵器の非人道性、②核兵器禁止条約第1回締約国会議に参加した経験とそこから得たもの、③世界各地の核実験被害について英語で発表しました。原爆投下後の広島と長崎のドキュメンタリーを見た米国の参加者からは「戦闘に無関係な人々が亡くなり、今もその影響を受けている人がいるなんて信じられない」、「こんなことは2度と起きてはいけない」といった意見が多く寄せられました。

画像 イベントの様子。175名以上の参加者がオンライン上に集った。

  米国のユースからは、主に①核兵器の使用をめぐる世界・米国の歴史、②原子力、核兵器に対する米国の世論、③次世代としての見解が述べられました。発表によると、広島・長崎への原爆投下を正当化している米国人の割合は、1945年の世論では85%、2015年では56%とのことですが、米国のユースからは「学校では1945年の広島や長崎のことについてはあまり教えられてこなかった。これから核兵器を抑止するためには、次世代への教育が重要と思う。」と力強い発言がありました。

意見交換を通して知った共通点

 両国のユース代表の発表後には、米赤のファシリテーターが質問を投げかける形で両国のユース代表がディスカッションを行いました。SNSを使った普及活動についての質問では、日本のユースは「日本ではSNSが盛んな一方で、世界の情勢や核軍縮等について関心が薄い若者も多いように感じる。SNSを使って若い世代に伝えていきたい。」と述べ、米国のユースからは「SNSは情報を拡散するためにも重要だ。多くの人に情報を届ける一方で、バーベンハイマーの事例(オッペンハイマーとバービーという2つの映画のイメージを重ね合わせたファンアートがSNSで投稿された事例)ようにリーチする層や内容が限られてしまうので、長所と短所を理解しながら使うべきだ」という意見が挙がりました。

画像 ディスカッションを通じて意見交換を行う日米のユースとファシリテーター

 また、「周囲に核問題についてもっと積極的に関わってもらうためにはどうするべきか?」という質問に対して、両国のユースが「若い世代に核兵器の使用禁止に関する活動にもっと加わってもらう」、「国際人道法プログラムに参加し、自ら学ぶ」といった共通点を持っていることがわかりました。最後に米国のユースから「私は、米国赤十字社のプログラムと今回の企画を通じて核兵器について深く学びました。自らが変わることで周りを変えることができます。今後も積極的に発信していきたいです。」という決意をもってディスカッションが締めくくられました。

参加者からの主なコメント

「参加した若者たちにとても感銘を受けました。とてもパワフルなプレゼンテーションでした。人類の未来に希望を与えてくれました!」

「このような重要なテーマについて議論した日米双方の若者たちに、心から祝福を伝えたい。準備から今回のイベントまで、オープンさと協力する力の素晴らしい実例だったと思います。若者の参画による力を示す今後の良い事例となることを願っています。」

「日米の若きプレゼンテーターたちがしっかりご準備をされていて、とても中身の濃いセミナーでした。参加者の皆さんのコメントも率直で関心度が高かったことを見て、希望を感じました。」

「『核兵器廃絶は現実的ではない』と思考に制限をかけずにオープンに議論できたことがユースならではで良かったと思います。」

【今回のイベントを共催した米国赤十字社 法律顧問室 国際人道法上級専門官より】
「このイベントに協力してくれた両国のユースと日本赤十字社に感謝します。当日はたくさんの方にご参加いただけました。聴講したユースの皆さんも積極的で、活気に満ちたイベントになりました。
地理的、文化的なものなどを超えて、今回、日赤と一緒に核兵器に関する企画を実現できたことは、人道的な共通の目標に向かって行動できた良い事例だと思います。」

イベントの録画動画を日赤ホームページ上で公開中 !

 当日のイベントの録画動画を公開中です(英語版はこちらからご覧いただけます)。ぜひ、次世代のユースが考える核兵器にまつわる意見に耳を傾け、私たちに何ができるのかを考える機会になれば幸いです。

 11月末には米国・ニューヨーク国連本部にて、核兵器禁止条約第2回締約国会議が開催されます。赤十字は当該会議へのオブザーバー参加が認められており、日赤からも職員が参加予定です。そちらのレポートも後日みなさまにお届けする予定ですので、どうぞご期待ください。

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