核兵器に対する常識と行動が変わっていく ~核兵器禁止条約第1回締約国会議等に参加した日赤ユース代表の声~

6月21日から23日までオーストリアの首都ウィーンにて核兵器禁止条約の第1回締約国会議が開催され、前日までに開催されていたオーストリア政府主催の「核兵器の人道的影響に関する国際会議」と核兵器廃絶国際キャンペーン(以下「ICAN」)主催の「ICAN核兵器禁止フォーラム」と合わせて、一連の会議に日本赤十字社(以下「日赤」)のユース代表として大分県青年赤十字奉仕団員が参加しました。

締約国会議の中で、日赤ユース代表が、国際赤十字・赤新月社連盟及び赤十字国際委員会(ICRC)の共同声明を発表し、「私たちは、この条約を作ることによって人道の訴えに応えてくれた締約国に感謝し、他のすべての人々にも同じように行動することを求めます」と発言した場面では、会場から拍手が湧きました。

核兵器禁止条約第1回締約国会議の成果としては、核兵器のない世界へのコミットメントとして宣言が出されると共に、核兵器の廃絶や被害者に対する援助と環境の修復、核軍縮の他の枠組みとの補完性の強化などについて具体的な行動計画が示されました。

今回、ユース代表として参加した経験を通じて、感じ、考えたことを伺いました。

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 核兵器禁止条約第1回締約国会議の中で赤十字の声明を発表する日赤ユース代表

どうして核兵器禁止条約の締約国会議に日赤ユース代表として参加してみようと思ったのでしょうか。

私は、高校時代に模擬国連という活動に参加することがありました。そこで初めて核兵器について勉強しました。広島、長崎の被爆当時の写真やドキュメンタリーを見て、核兵器の威力を知り、衝撃を受けました。今、私は大学生で、国際関係学と平和学を専攻しています。国際法などの専門知識を学び、核兵器の非人道性が深く理解できました。このような恐ろしいものが、このまま世界中で存在することは有り得ないことと思います。自分の力で何かできることがあると信じて、日赤から募集のあった今回の貴重な機会を通じて、平和の尊さをより多くの人へ知っていただき、大切にしてもらえるよう、自ら核兵器自体と核兵器廃絶に関わる組織や人々の努力についてより多く勉強したいと思って、応募しました。

参加してみて、いかがでしたか。特に印象に残ったこと、考えたことを教えてください。

今回の活動は、核兵器の影響、現在の核兵器廃絶の取り組み、将来の目標と施策の考え、そして核兵器廃絶を訴える被ばく者と市民、その一人ひとりの物語と信念について、幅広く勉強する機会となりました。特に感動した場面は2つあります。

1つ目は、核兵器廃絶を継続的に訴える被ばく者、サーロー節子さんの物語についての映画を見たときです。私は、初めて、被ばく者の平和に祈るという強い力を感じました。サーロー節子さんと多くの被ばく者が継続的に平和を呼びかけることを拝見し、次世代の一人として、私もその重い責任を担わなければならないと実感しました。

2つ目は、核兵器禁止条約締約国会議の最後、今回の会議の成果となる核兵器廃絶を世界へ呼びかける「本会議の宣言(核兵器のない世界へのコミットメント)」と将来の施策の方向や目標を示す「ウィーン行動計画」が決議されたときです。国際会議で重要な案件が決議されたという嬉しさだけでなく、世界が核兵器のない世界へもう一歩踏み出したと実感でき、この大きな成果に私自身も励まされました。

非常に勉強になったと思うことは、サイドイベントで学んだ知識です。核兵器廃絶の取り組みは、単純に政治的なものだと安易に思ってしまっていた私にとって、金融、社会文化、そしてジェンダーなど、社会のほぼ全ての面に関わっていると勉強になりました。その他、核兵器の影響は、環境破壊や、放射線によって長期的な病が引き起こされてしまうなど想像以上に悪影響があり、全世界にも及ぶものとして、核兵器廃絶の決意が必要だと実感しました。

このニュースをご覧になっている皆様や世間の方たちに伝えたいことはありますか。

今回の会議では、主な成果として3つの案件が決議されました。1つ目は、核兵器の使用や威嚇は国連憲章を含む国際法に反するものでありそれを非難すると明言したことや、核兵器不拡散条約が核軍縮と不拡散の基礎であり核兵器禁止条約とは相互に補完する関係であることを明確にした「会議宣言(核兵器のない世界へのコミットメント)」が核のリスクが高まっているこのこのタイミングで発表されたことです。宣言は、特に赤十字や被ばく者、NGO、青年団体などの努力を賛賞し、連携の強化を呼びかけています。2つ目は、今後の活動目標をまとめている「ウィーン行動計画」です。行動計画では、今後締約国が所有する核兵器の廃絶のあり方を議論すべきと指示し、被ばく者の支援、環境の修復、そして放射線による人体に対する影響を研究する専門家グループの立ち上げについて各国で一致しました。3つ目は、核兵器の廃絶に向けて、締約国は、条約批准時にその国が保有する核兵器の廃棄期限を10年以内に(相応の理由により最長5年間の延長可)、受け入れ国からの核兵器の撤去に90日の期限を設定し、引き続き検証することに合意したことです。

会議の成果によって、今後核兵器廃絶に向かってどのような道へ進めるかが示され、将来の連携と行動として非常に良いスタートが切られたと思います。今後も多くの国がこの核兵器禁止条約に参加することを信じています。

今回の会議では、赤十字、そしてICANのようなNGOの努力を肯定する一方、若者の力が重視され、若者たちの関心を喚起するという姿勢も示されました。私たちの世代は、被ばく者世代と直接的な交流ができる最後の世代になる恐れがあります。私は、より多くの方に核兵器廃絶の活動へ参加いただけるよう、皆様にお願いしたいです。

今後、青年赤十字奉仕団員として、どのような活動をしようと思っていますか。

私は、今回の会議で勉強になった知識や経験を、周囲の方々へ共有し、赤十字奉仕団員として、核兵器廃絶に関する活動の開催について力を発揮していきたいと思っています。今回の経験を通して、将来、核兵器廃絶の活動を企画・実行するときに努力したい点をまとめます。

①知識の勉強について、主に核兵器の威力や影響、国際人道法の紹介をします。NGOの方や大学の研究者を招待し、専門的な見解を示すことが必要と思います。
②被ばく者の物語を聞きます。被ばく者のお話を通して、核兵器の非人道性に対する理解を深めるため、被ばく者の講演会や関わる映画、資料の展示会など、多様な形で開催すべきと思います。日本だけでなく、可能なら他の国や地域の被ばく者とも連携すべきと思います。
③シミュレーション(模擬)活動を開催します。原爆のシミュレーションは、教育活動の中でも非常に重要な役割を占めていると思います。直感的に原爆の怖さを追体験するとともに、核兵器の威力を深く感じられると思います。
④参加者の提案。参加者からの意見や態度に耳を傾け、そして意見交換の場を設けます。特に参加者自身から核兵器廃絶のあり方について、どういうことが必要かといった提案会を開催します。
⑤見学会の開催。関心が高い若者たちに、広島、長崎の平和記念への見学会を開催し、原爆病院にも見学ができると良いと思います。
⑥国際交流。他の国の赤十字社、もしくは赤十字国際委員会(ICRC)と連携し、常に国際的な若者の交流を実施すべきだと思います。参加者の国際視野の拡大と国際理解を強化し、次世代で国際的な連携を強化する機会を提供することができると思います。

そして、核兵器廃絶と赤十字7原則の理解を深めて、赤十字の観点から核兵器廃絶に関する発信をさらに強化していくことを頑張りたいと思います。

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