【速報20】ウクライナ危機:日本赤十字社からX線撮影装置を寄贈/放射線技師を派遣

ウクライナでの戦闘が始まって約5か月。ウクライナ国内では、医療施設への攻撃が報道されており、それは人びとが医療を受ける機会の喪失にもつながっています。現在1,200万人以上が医療支援を必要としている状態である(出典:OCHA)と言われており、赤十字は少しでも多くの人に医療を提供できるよう、各地で活動しています。

以前の記事で、フィンランド赤十字社と日本赤十字社が協力して、ウクライナ赤十字社の医療を支援するためにウクライナ西部の街ウジュホロドに診療所を建設したことをお伝えしました。診療所はウジュホロドだけではなくザカルパッティア州の山岳地帯にあるタチブ、ラキブという街にも建設予定で、その診療所における医療活動を補助するため、日本赤十字社からウクライナ赤十字社へ可搬型のX線撮影装置を寄贈しました。

7月12日、ウクライナに機材が到着し、この操作方法について地元の放射線技師に指導を行うため、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院の大島隆嗣診療放射線技師が、ウジュホロドに派遣されました。

以下は、大島放射線技師からの現地報告です。

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渡航前に大阪赤十字病院にてX-ray装置の動作を確認(左:大島技師)

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私は日赤が海外救援の際に使用している可搬型X線撮影装置の組み立て方や使い方について現地の診療放射線技師の方に伝えるために、ウクライナのウジュホロドに派遣されました。

この装置を日本からウクライナに輸送するためには多くの書類や手続きが必要で、無事ウクライナ国内に入るには2か月程度かかりましたが、何とか輸送することができました。

現地に装置が到着したことを確認して日本を出発したのですが、装置の最終的な移動に再度許可が必要になり、現地の赤十字社の幹部が当局に事情を説明、ようやく倉庫から装置を搬出することができました。

その後、支部のオフィスにて現地の放射線技師のマルクスさんと合流し、車の荷台から資機材を搬出し組み立て作業を開始しました。マルクスさんは、普段から放射線の業務に従事されているため、システムに対しての理解も深く、英語を話すことは出来ませんでしたが、読むことは可能でしたので、非常にスムーズに作業を進めることが出来ました。また、日本で事前にウクライナ語の説明書を作成して持参したこともスムーズに進んだ理由の一つだったと思います。

今回の日本のX線撮影装置は、7月下旬にオープン予定のタチブという山間の町の診療所で使用される予定です。装置はケースに入れて持ち運びが可能なので、トラックや大きめのSUVに載せ、巡回診療など様々なところに運んで使用することも想定しているとウクライナ赤十字社のスタッフからは聞いています。今後ウクライナ赤十字社にはこの装置を活用して避難民の皆さんの診断など現地の医療に役立ててもらいたいです。

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この可搬型X線撮影装置は、海外救援時の医療支援用資機材として以前より使用されており、ネパールやバングラデシュでも現地での診療のために活用されてきたものです。国内避難民の方が多く住むウクライナ西部各地では結核などの感染症の懸念があり、ウクライナ赤十字社は、必要な場所に容易に運んで便利に使える可搬型のX線撮影装置の支援を日本赤十字社に要請していました。

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現地の放射線技師マルクスさんにX線撮影装置の操作方法を指導する大島技師

ウクライナ赤十字社ザカルパッティア州支部でプログラムコーディネーターをしているオレクセイさんからは、「日本赤十字社の皆さん、X線撮影装置を寄贈していただき、また操作方法も現地の技師に指導していただき本当にありがとうございました。この装置がザカルパッティア州で活用されると、多くの避難民の診療等に役立てることができます」と感謝の念が述べられました。

画像 現地の放射線技師マルクスさん(大島技師と)

日本赤十字社はこれからも、ウクライナ国内や周辺国の状況を適切に把握し、現地赤十字社と協力しながら支援活動を展開できるよう努めていきます。

これからも皆さまの温かいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

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「ウクライナ人道危機救援金」

受付期間: 2022年3月2日(水)~2022年9月30日(金)

使途  : 国際赤十字・赤新月社連盟、赤十字国際委員会、および各国赤十字・赤新月社が実施する、ウクライナでの人道危機対応及びウクライナからの避難民を受け入れる周辺国とその他の国々における救援活動を支援するために使われます。