難民が難民に対して質の高い医療を

 2010年に中東各国で起こった民主化運動のうち、シリアは内戦へと発展したため、国連高等弁務官事務所によると、現在でも670万人余りの国内避難民と同じく670万人余りの国外避難民が発生しています。これは国内避難民の数では世界第二位、国外避難民では世界第一位にあたります。一方、70年以上の長きに渡り難民として暮らしているのがパレスチナの人々。3世代に渡る難民生活を送る人々は、避難しているそれぞれの国で身分や社会的地位が不安定なことから、厳しい生活を強いられています。

 日本赤十字社(日赤)は、2015年からこうした中東各国での人道危機に対して継続的に支援を行っています。2019年度末までに医師、看護師、事務職員ら計31名をレバノン、イラク、パレスチナ、ヨルダンに派遣して主に保健医療の支援にあたっていましたが、2020年に発生した新型コロナウイルス感染症の蔓延により要員の派遣を見合わせ、遠隔による支援を継続していました。

(参考データ)UNHCR - Global Trends in Forced Displacement – 2020

要員の派遣を再開!

 2022年4月より、パレスチナ赤新月社医療支援事業に従事する医師、看護師、事務管理要員の派遣を再開し、レバノン北部のパレスチナ難民キャンプにあるサファド病院において新たに3か年の医療支援事業を開始しました。サファド病院はパレスチナ赤新月社が運営する病院で、パレスチナ難民や地域住民に対して医療サービスを提供しています。

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日赤派遣要員と現地職員於サファド病院©日本赤十字社

「なぜ、日赤の支援が必要なのか?」

20220510_102034.jpgサファド病院イブラヒム院長©日本赤十字社

 レバノン国内の難民キャンプで生活するパレスチナ人は、キャンプ内の自治こそ与えられていますが、国籍、市民権、財産権は付与されておらず、キャンプ内には医学系の大学もありません。過去には医学系大学への海外留学制度の支援もありましたが、20年ほど前にそれも無くなり、新たな医療職の確保と共に日進月歩の医療技術の取得も滞っています。

 こうしたことから、サファド病院のイブラヒム病院長は「医療の質」、特に「救急処置室における医療の質の向上」のため日赤の支援が必要と語っています。支援には設備も必要であるものの、最も重要なことは医療技術を伝える日赤の要員と病院のスタッフが一緒に協力しあうこと、そのためにはお互いに問題点をすぐに話し合うことが大切だと語っています。要員の派遣再開によって、日赤はこうした病院の期待に応えていきます。

日赤の中東人道危機救援事業に関する過去のニュースや記事は以下をご覧ください。

中東人道危機救援活動実績

[特集]紛争の被害にあうって、どんなこと?

シリア、戦火の中で

 シリアなどをはじめとする中東地域での紛争犠牲者はいまなお多く、また、支援を必要とする地域もシリア周辺国やパレスチナにとどまらず、ヨーロッパ諸国まで広域に及ぶことから、下記のとおり救援金を受け付けています。
皆さまの温かいご支援をどうかよろしくお願いいたします。
※なお、日赤へのご寄付は、税制上の優遇措置の対象となります。 詳しくは税制上の優遇措置をご覧ください。

(税制上の優遇措置について)

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