「世界難民の日」コロナ禍の難民数は過去最多を記録

 6月20日は「世界難民の日」です。2000年12月4日の国連総会決議で制定されたこの日は、今年で21年目を迎えました。毎年、国連が発表するGlobal Trend Report 2020によると、コロナ禍の2020年において、紛争、迫害、暴力、人権侵害などにより故郷を追われた人の数は8,240万人と過去最多を記録。そして、こうした難民や避難民の受け皿となっている国の8割以上が途上国であり、また、難民の8割近くが近隣諸国に避難しているといわれています。

 2017年9月から日本赤十字社(以下「日赤」)が避難民支援活動を行うバングラデシュもその一つ。バングラデシュは近年、経済発展を遂げていますが、未だ人口約1憶6,550万人のうち2割にあたる約3,300万人が貧困層にありながらも、ミャンマーからの避難民86万人以上を受け入れています。今回は、コロナ禍の日赤バングラデシュ南部避難民救援事業の今をご紹介します。

※国際赤十字では、政治的・民族的背景および避難されている方々の多様性に配慮し「ロヒンギャ」という表現を使用しないこととしています。

「支援」を超えた「ソーシャルインクルージョン」の実現を

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 国際赤十字・赤新月社連盟(以下、「連盟」)は「世界難民の日」に寄せて、世界の難民・避難民・移民のレジリエンス(困難を乗り越え成長する力)を支えることと同時に、こうした人々を受け入れる側の地域社会との対話、理解、信頼の構築を通じた「ソーシャルインクルージョン(誰もを社会の構成員として包み、支え合う)」の重要性を訴えています。

(右写真)3月に大規模火災に見舞われたキャンプ内で物資配付を行うバングラ赤のスタッフ©BDRCS

 生存のために住処を追われた難民・避難民への支援はもちろん、ある日突然、外からの難民・避難民を受け入れることになった地域社会への働きかけやケアも同じく重要です。その意味で、お互いの理解と尊重を通じて、ソーシャルインクルージョンを通じた社会の結束(Social Cohesion)を醸成することが不可欠だと赤十字は考えています。

 日赤の支援する避難民キャンプ内の診療所は、避難民のみならず、地元住民も多く訪れます。現在は毎月約1,600人前後の患者を診療していますが、そのうち50人以上は地元住民です。診療所では新型コロナウイルス感染症対策に万全を尽くしながら、風邪や下痢、一般外傷などの一般診療はもちろん、糖尿病や高血圧などの慢性疾患も可能な限り対応しています。利用者からは「信頼できる診療所の医師に継続的に診てもらいたい」「しっかりと薬剤を処方し、説明してもらえるので安心」といった声も聞かれています。診療所はバングラデシュ赤新月社の医療スタッフをはじめ、ミャンマーからの避難民もその運営をサポートしています。単なる医療施設ではなく、避難民同士や避難民と地元住民をつなぐ役割を果たしており、「ソーシャルインクルージョン」の推進にも貢献しています。

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(左写真)避難民ボランティアのガイダンスで距離を保ちながら順番を待つ患者さんたち(C)BDRCS
(右写真)保健医療支援だけでなく、心理社会的支援の一環として職業訓練も行っています(C)BDRCS

一年ぶりに日本人職員の現地派遣を再開

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 コロナ禍の影響により2020年4月以降の日本からの職員派遣は一時中断していましたが、今年5月に日赤職員2名(日本赤十字社医療センター苫米地則子看護師長・名古屋第二赤十字病院菅原直子看護師長)が現地入りしました。2人は以前にも同国に派遣されており、これまでの知見を活かして避難民キャンプの保健医療体制の強化のために活動しています。

(右写真)一年ぶりに現地の活動実施状況を確認する苫米地看護師

 現地で日赤代表を務める苫米地師長は、次のように話しています。「バングラデシュ赤新月社のスタッフ、そして避難民ボランティアとの協働で、人々に必要とされる活動を一つひとつ築き上げてきました。コロナ禍においては、自分の国や自分自身のことで精一杯かと思いますが、懸命に生きている避難民のことに少しでも思いを寄せていただけると幸いです。」

※苫米地看護師は、これまでの国内・海外での救援活動での功績により、今年5月、第48回フローレンス・ナイチンゲール記章を受章されました。(詳しくは、こちら

 世界の新型コロナウイルス感染者数は1.8億人近くに達し、死者数は380万人を記録しています(6月23日現在)。またコロナ禍のみならずミャンマー情勢の悪化も重なり、避難民の早期帰還の目途は立たず、避難生活の更なる長期化が懸念されています。赤十字は、社会の連帯や相互扶助の精神を大切に、脆弱な立場にある人々への支援をこれからも続けていきます。

バングラデシュ南部避難民救援金を受け付けています。

日本赤十字社は、長期化するミャンマーからの避難民の心身の健康と尊厳を守るため、支援活動を行っています。

皆様の温かなご支援を、どうそよろしくお願いいたします。 ご寄付はこちら

なお、日赤へのご寄付は、税制上の優遇措置の対象となります。

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