「第48回フローレンス・ナイチンゲール記章」 受章者発表 ~日本からは、国際活動に尽力した2名が受賞~

赤十字国際委員会(スイス・ジュネーブ)のフローレンス・ナイチンゲール記章選考委員会より、5月12日に「第48回フローレンス・ナイチンゲール記章」の受章者の発表がありました。

今回は、18の国と地域から25名が受章し、日本からは、日本赤十字社医療センター 苫米地 則子(とまべち のりこ)さん、ペシャワール会 藤田 千代子(ふじた ちよこ)さんの計2名の方が受章されました。

苫米地さんは最初期の新型コロナウイルス(COVID-19)感染症への対応及び多年にわたる国際救護活動での功績が、藤田さんはイスラム文化圏での看護活動及び現地女性スタッフの育成に尽力した功績が認められました。

なお、1920年の第1回授与からの受章者総数は1,543名となり、そのうち、日本からの受章者は112名と、世界最多となっています。

授与式は年内に執り行われる予定であり、例年、日本赤十字社名誉総裁である皇后陛下より記章が授与されています。
日程につきましては、詳細が決まりましたら改めてお知らせいたします。

【フローレンス・ナイチンゲール記章の概要】

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同記章は、紛争下において敵味方の区別なく負傷者を保護する役割を担う赤十字が、1907年および1912年の赤十字国際会議において、顕著な功績のある世界各国の看護師を顕彰し、授与することを決定したものです。
フローレンス・ナイチンゲール氏の生誕100周年を記念して、1920(大正9)年に第1回の授与が行われ、それ以来、隔年でフローレンス・ナイチンゲール氏の生誕の日にあたる5月12日に赤十字国際委員会(ICRC)から受章者が発表されています。
また、同記章は、鍍銀製アーモンド型メダルで、表面は燭(ともしび)を手にしたフローレンス・ナイチンゲール氏の像と「1820~1910年フローレンス・ナイチンゲール氏記念」の文字があり、裏面には受章者名と、ラテン語で「博愛の功徳を顕揚し、これを永遠に世界に伝える」と刻まれています。

【フローレンス・ナイチンゲール記章の受章資格】
現在、医療機関や看護教育施設等の業務に従事しているか、または過去に  従事した経験のある保健師、助産師、看護師、もしくは篤志看護補助者のうち、  以下の条件のいずれかを満たしている者であることが受章資格とされています。
(1)平時もしくは戦時において、次のような事項に関して顕著な働きをした者。
 ア 傷病者や障がい者、または紛争や災害による犠牲者に対して、果敢に献身的な看護活動に従事した者。
 イ 公衆衛生や看護教育の分野で、模範となるような活動に従事した者。またはこれらの分野で創造的かつ先駆的な精神のもとに活動した者。
(2)国内災害救護、国際活動等の事業において、果敢かつ献身的に活動し、推薦に値すると判断される者。
(3)献血思想の普及啓発、老人看護及び障がい者への理解促進を含む保健衛生活動、看護教育活動、救急法等講習普及事業等においても、献身的に永年その業務に携わり、その実績から高い評価を得られると判断される者。

【受章者のプロフィール】

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苫米地 則子(とまべち のりこ)

■青森県生まれ(57歳)
■東京都在住
■現  職:
  日本赤十字社医療センター 看護師長(国際医療救援部)
■主な功績:
2020年2月、日本国内だけでなく世界中の注目を集まった「ダイヤモンド・プリンセス号」の船内における新型コロナウイルス(COVID-19)感染症対応救護班の総括調整者の任を担った。
未知のウィルスへの対応と多国籍の乗員乗客計3,711名が乗船する大型客船という特異な環境下において、救護活動の方針決定の鍵となる正確な情報を収集するとともに、関係機関及び関係者との連携並びに調整を行うなど、同氏の看護師としての専門知識と国際救援活動での経験が遺憾なく発揮された場面であった。
同氏は、1997年にスーダン紛争で国際救援活動に携わって以来、これまでに計16回の国際派遣を経験している。2018年に世界最大ともいわれるバングラデシュ南部の避難民キャンプに先遣隊、緊急医療支援の第一班として現地に赴いた際は、医師、看護師、助産師等、様々な専門家で構成されたERU(Emergency Response Unit)※のチームリーダーを務め、医療活動はもとより、こころのケアなど、日本赤十字社による急性期医療を指揮した。
また、避難民が自分達で健康に過ごせるよう、公衆衛生への理解と疾病予防への参画を促すことで、一人ひとりが行動変容を起こすきっかけを作り、避難民キャンプで人の命と尊厳の確保、そして社会的な連携構築に繋げた。

※緊急事態、大規模災害発生に備え、各国赤十字社が緊急出動可能な訓練された専門家チームおよび資機材を整備しておき、1ヶ月間他からの支援を得ることなく自己完結型のチームとして活動を行う救援システム活動

【受章者のプロフィール】

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藤田 千代子(ふじた ちよこ)

■鹿児島県生まれ(62歳)
■福岡県在住
■現  職:
  ペシャワール会 PMS支援室長兼総院長補佐
■主な功績:
福岡徳州会病院在職中の1989年にペシャワール会創設者、故中村哲医師と出会い、1990年にパキスタン・イスラム共和国の北西辺境州(現、カイバル・パクトゥンクワ州)の州都ペシャワールのミッションホスピタルに赴任して以来、同医師が最も信頼し、最も多くの困難への対応を託された看護師として、同国やアフガニスタン・イスラム共和国等の支援活動に従事してきた。
イスラム文化圏の女性は、身内以外の男性に肌や顔を見せることに抵抗があることから、社会進出を躊躇う方が多く、医師や看護師等、専門職に就く女性も不足し、女性の健康対策には著しい不備があり、ハンセン病などの皮膚疾患の早期発見、早期対応ができる環境が整備されているとは言い難い。
このような状況下、同氏は現地で必要な保健医療手技や看護技術を自己獲得される過程を通じて、現地言語に習熟しており、患者に直接触れ、病変を把握し、病状の治療及び治癒の可能性を自らの言葉で説明できる専門家として活躍した結果、同会の様々な活動が現地住民に深く根付いた。また、状況改善のため、PHC(Primary Health Care)※分野を担える現地の女性スタッフ育成にも尽力した。
2009年には治安の悪化から、やむを得ず帰国することとなったが、同氏が育成した現地スタッフと緊密な連携をもって、人道支援活動を継続している。

※地域社会が主体となって、健康増進、病気の予防、治療、リハビリテーション、緩和ケアを含む社会全体のアプローチをする手法(引用:世界保健機関HP)

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