ウクライナ人道危機についての勉強会を開催しました

1 青少年赤十字加盟校対象企画

1,000人を超える参加者が考えるウクライナ人道危機について~青少年赤十字中・高校生メンバーとしての気づきを得るための勉強会~

 ウクライナの紛争が劇的に拡大して1カ月が経過する3月18日(金)に青少年赤十字の実践目標の一つである「国際理解・親善」を学ぶ1時間の勉強会を日本赤十字社埼玉県支部主催で全国とオンラインで繋ぎ実施しました。

 最初にウクライナの歴史と赤十字の支援について、現地に出張した経験がある日赤本社国際部の辻田開発協力課長から写真を交え概要を説明しました。
 出張当時、首都キーウ(キエフ)の地下鉄を使った際、「この地下鉄はシェルター(避難所)として使うために地下深く大きく掘ってある」という説明を受けた際は想像ができませんでしたが、現在は実際に戦火を逃れて地下鉄の駅で避難生活を送る人々がいるとのお話がありました。

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 その後、ウクライナ人道危機で起きている現状について地図を交えながら説明しました。

 これらの内容を踏まえ、赤十字がウクライナやその周辺の国々で、人々のいのちを守るために行っている様々な活動を紹介し、学びを深めました。

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 さらに赤十字国際委員会(ICRC)駐日代表部の眞壁広報統括官からは、現地で撮影された臨場感ある赤十字の活動動画を見ながら、中立の立場で活動することの大切さや難しさについて、わかりやすく解説いただきました。

「傷ついた兵士はもはや兵士ではない、人間である。」

 イタリア統一戦争の激戦地ソルフェリーノの近くを通りかかったスイス人の実業家アンリー・デュナン。

 「傷ついた兵士はもはや兵士ではない、人間である。人間同士としてその尊い生命は救われなければならない」との信念のもとに救護活動にあたったことがきっかけとなり始まった赤十字。

 今回の勉強会では、中・高校生の青少年赤十字メンバーや指導者の先生方が紛争下における赤十字の存在意義を再確認し、ウクライナの人道危機を自分ゴトとしてとらえ、今の自分に何ができるか、考えるきっかけとなった1時間となりました。

 今年の5月5日に青少年赤十字100周年を迎えることを機に実施するWEBオープニングイベントでは、赤十字が大切にする「人道」について学ぶことができます。ぜひ、ご視聴ください!

 告知動画はこちら:https://www.youtube.com/watch?v=qs-7W4MLm58

 「ウクライナ人道危機についての勉強会」への感想等はこちらからご一読いただけます。

2 赤十字ボランティア対象企画

 青少年赤十字加盟校を対象とした勉強会と同日、赤十字ボランティアを対象とした勉強会も開催されました。「ウクライナ人道危機と赤十字」と題したオンライン勉強会の企画と当日のファシリテーションを担ったのは、赤十字ユース委員会のメンバー田中友美乃さん。当日は、日本全国から60名以上の赤十字ボランティアの参加がありました。
 勉強会の目的は、毎日メディアを通じて様々な情報が飛び交う中、人道支援組織である赤十字はいま何を行っているのか、また、赤十字の視点からこの人道危機を考えることでした。
 初めに話題提供を行った日赤国際部の辻田課長は、ジュネーブにある国際赤十字・赤新月社連盟に駐在していた2017年に訪問したウクライナの写真も紹介しながら、現在のウクライナの人々が置かれた状況と赤十字の支援活動について説明しました。また、ICRC駐日代表部の眞壁広報統括官からは、民間人やインフラを攻撃しないなどICRCが訴えている「戦時においても人道の原則を守ること」について、また中立・独立を掲げる意味や赤十字の独自性について、説明がありました。

画像 勉強会で使用されたスプレッドシート。参加者はだれでもイベント進行中にセルを選択して自由にコメントを書き込むことができ、その場で想いを共有することができました。

 続く全員参加型のディスカッションでは、インターネット上で参加者全員が編集出来るスプレッドシートを展開し、参加者が参加動機や当日の気づき、考えたいことを随時記入し、田中さんがその内容読み上げながら、進めていきました。

 たとえば、シート左上の「気づき」のカテゴリーには、「今紛争が始まったと思っていたが、もう8年も続いていたことを知らなかった」や、「一部地域に関心が集まると、他の地域の人道危機について関心が薄れる傾向にあること」などがコメントされました。また、シート下部の「みんなと考える」のカテゴリーには、「中立という立場だからこそ敵味方なく支援することができるが、中立だからこそ言えることと言えないことがあるという赤十字について」や、「報道される情報に影響されること」など、様々な視点のコメントが共有されました。

 開催後のアンケートでは、「ウクライナの現状と赤十字の活動を知ることが出来て勉強になった。特に、中立だからこそ公に出来ないことがあるという点や、「情報」が支援になる、ということついて勉強になった(青年奉仕団:20代)「どちらの味方ということはなく、中立の立場で紛争により困っている人のために活動する赤十字について、奉仕団の仲間とも共有したい(特殊奉仕団:60代)等の感想が寄せられました。

 また、青年奉仕団の別のボランティア(20代)は、「一般市民を全く攻撃しない戦争が出来るのだろうか、また兵士も家族や大切な人がいる同じ命なのに・・」と、戦争のない世界を願い、私たちが出来ることから取り組みたい、という意見を残しています。

 普段は一般の企業で勤務されている田中さんは、赤十字ユース委員会のメンバーとして国内外の人やトピックをつなげる場づくりを行なっています。田中さんはイベントを振り返り、語ります。「 赤十字が何をしているかを『知り』、赤十字のメンバーとして『考える』時間を過ごすなかで腹落ちすることもモヤモヤすることもありました。それらを参加者の皆さんと共有しもう一歩考えてみる貴重な時間になりました。赤十字の七原則の一つの『中立』は難しい。けれどそれがあるからこそ赤十字として出来ること、取り組めることがあるのだと強く実感する機会になりました。」

 

 ウクライナ人道危機にかかる赤十字の対応や、ウクライナ人道危機救援金へのご協力についてはこちらをご参考ください。

https://www.jrc.or.jp/foreign_rescue/ukraine2022.html