令和8年熊本地震 こころとからだを整えるケアを皆様に ―熊本県接骨・整骨赤十字奉仕団の取り組み―
令和8年熊本地震の被災地では、これまでさまざまな赤十字ボランティアが活動してきました。その一つが、熊本県接骨・整骨赤十字奉仕団(以下、接骨・整骨奉仕団)です。同奉仕団は、平成16年に熊本県柔道整復師会の会員で構成され、赤十字の「人道」の原則に基づき、地域社会や災害時の支援活動に取り組む奉仕団として設立されました。
被災地では、多くの方々が慣れない避難所での生活を続け、心身の疲れを訴えていました。また、災害発生時から昼夜を問わず支援に従事する行政や関係機関の方々も疲労を蓄積していました。そこで、接骨・整骨奉仕団は、柔道整復師という専門職としての知識と技術を活かして、人々の疲労やストレスを軽減する活動を続けてきました。今回は、奉仕団のこれまでの取り組みと活動に寄せる思いをお伝えします。
■ 再びの大地震に見舞われて:これまでの実績と学びを支援につなぐ
7月28日、接骨・整骨奉仕団の岡松副委員長は、熊本県八代市の整骨院でいつものように患者さんの施術を行っていました。地震発生時の緊迫した状況を、次のように振り返ります。
「突然、突き上げるような激しい揺れに襲われ、立っていられない状況になりました。とっさに患者さんの身体を守ろうと覆いかぶさりましたが、机の下にもぐる余裕はありませんでした。書類棚も倒れてきました。揺れが収まって建物の外に出た瞬間、駐車場の斜め向かいの家屋が崩れるのを目撃しました。改めて、被害が甚大であることを実感しました。周囲の人たちとともに倒壊家屋での救助に携わりましたが、幸い中に人がいないことが分かりました。」
一方、熊本市内の整骨院で事務作業を行っていた同奉仕団の相馬委員長も、地震に見舞われました。大きな揺れを感じた瞬間、「また熊本で大きな地震が起きた」と感じ、10年前の記憶が一気によみがえりました。建物や周囲の被害状況を確認し、家族などの安否を確認する間も、「被災者のために、自分たちに何ができるか」を考えていました。
実は、奉仕団のメンバーが災害時の支援を行うのは初めてではありません。平成28年熊本地震では、熊本県柔道整復師会として、同県との災害協定のもと、発災直後から避難所での活動を行いました。また、奉仕団としても、西原村にて「支援者支援」を行いました。令和6年能登半島地震でも、日本赤十字社(以下、日赤)のボランティアとして応急仮設住宅での支援に赴きました。今回の地震では、過去の実績を踏まえながらも、より現地のニーズに即した支援を行うこと、行政やさまざまな機関との連携・調整を強化することなどを通じ、「この10年間の経験を生かして活動していこう」という決意で臨みました。また、平時から災害救護訓練や防災研修、赤十字が開催するイベントへの参加などを通して、日赤熊本県支部や熊本赤十字病院、他の奉仕団員と顔の見える関係を築き、災害に備えて緊密に連携してきたことも、大きな力となりました。

能登半島地震におけるボランティア活動
■ 誰もが安心して支援を受けられるために:柔道整復師だからできること

被災地の健康増進ルームで心身の疲れをほぐす
接骨・整骨奉仕団のメンバーが、地震で特に大きな被害が生じた宇城市や八代市、氷川町などで避難所や社会福祉施設、行政機関などを回る中で、心身のケアに関する支援ニーズが高いことが確認されました。これを受けて、日赤熊本県支部、被災地の関係者と協議を行い、接骨・整骨奉仕団による被災地での活動が始まりました。
主な活動は、健康増進ルームを設置し、心身の疲れやストレスを緩和する施術を行うことです。相馬委員長は「柔道整復師として、お一人お一人の身体の状態を確認し、それぞれの状態に応じて、身体的な負担を軽減するための施術やケアを行いました」と話します。整骨院での施術とは異なり、全身をリラックスできるように、そして、施術者による違いが少なくなるよう、流れや声かけ、対応上の留意点などを共有しました。また、「こころとからだは繋がっている」という考えから、施術をしながらお話に耳を傾け、不安や心配ごとにも一緒に向き合いました。相馬委員長は続けて語ります。
「被災された住民の方々の支援は大切ですが、被災者を支える行政職員や支援者の中には、ご自身やご家族も被災されている方がいらっしゃいました。そのような状況下でも、避難所運営や災害対応、復旧業務などに従事され、長時間勤務が続いていました。支援者へのケアも大切であり、そうした方々もしっかりお支えすることが、赤十字ボランティアの使命であると感じて活動しました。」
柔道整復師は、日頃から患者さんの痛みや困難に向き合い、お話を聞きながら丁寧に施術を行っています。施術中にお話しする中で涙を流される方や、終了時に「楽になった」「体が軽くなった」とおっしゃる方がいらっしゃいました。専門的な資格を有する奉仕団員が被災地で活動することで、被災された方々に安心と信頼をお届けすることができました。
■ 全国への感謝をこめて、取り組みを続けたい
地震の発生から2カ月以上が経過し、被災地を取り巻く環境も本格的な復旧段階へと変化しつつあります。そのような状況を踏まえ、相馬委員長は皆さまに感謝の気持ちをお伝えしたいと語ります。
「全国から熊本へのご支援に、心より感謝申し上げます。今回、石川県から支援にいらした方にお会いしました。私たちが能登半島地震の支援に赴いた際に出会った方であり、支援の場での再会に感動しました。
一方で、時間とともに、この災害が忘れられてしまうことが心配です。熊本にいらしてくださらなくても、遠くから思いを寄せてくださっていることも支援であり、私たちの復興への力になります。私たちも、柔道整復師という職能を活かして、いつ、どの地域で災害が起きても活動ができるように、取り組みを続けていきたいと思います。」

熊本県赤十字接骨・整骨奉仕団のメンバー
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