令和8年熊本地震 赤十字のこころのケア活動: 被災された方々のお話をお聞きし、寄り添う
令和8年7月28日に熊本で発生した地震では、最大震度7の大きな揺れにより、家屋の倒壊や、水道や電気などのライフラインに被害が生じ、多くの人々が避難所や車中での避難生活を余儀なくされました。発災から1カ月が経過し、被災地では応急仮設住宅の建設が始まるなど、徐々に生活再建に向けた兆しがみられます。その一方で、被災された方々の「こころ」に目を向け、寄り添い、支える取り組みがますます重要になっています。
日本赤十字社(以下、日赤)は、発災直後から救護活動の一環として、「こころのケア」への取り組みを実施してきました。活動の調整にあたる岡山赤十字病院の深松医師は次のように語ります。
「災害が起こると、大切なものを失ったり、安全が脅かされたりすることで、身体だけでなくこころにも大きな負担がかかることがあります。そのような大変な状況の中で、不安や戸惑いをひとりで抱えながら過ごすのは簡単なことではありません。だからこそ私たちは、被災された方のつらい思いや不安に耳を傾け、こころと身体を少しでも休めていただけるように活動を続けています。そして、その方のペースで少しずつ前に進んでいけるようお手伝いをすることが、私たちにできる支援だと考えています。」
■ 避難所での孤立を防ぎ、支援につなぐ: 宇城市
宇城市の避難所には日赤の救護班が訪問し、診察や常備薬の相談などとあわせて、避難されている方々のお話に耳を傾けてきました。「私たちが巡回する3つの避難所には、お子さまからご高齢の方まで、さまざまな方がいらっしゃいます。血圧測定などを行いながら、まずはご自宅の様子や日々の生活について、皆さまのお話をじっくりとお聞きしました。一見、元気そうに見える方でも、話を伺うと不安やストレスを抱えていらっしゃることがあります。」と日赤長崎原爆諫早病院の髙尾医師は話します。
同じ救護班の古賀看護師と日赤長崎県支部の水谷看護師は、次のように振り返ります。「避難所には不眠を訴える方もいらっしゃいました。一人暮らしのご自宅が被災し、『これから先、どのように生活を立て直せばよいのかわからない。前向きに考えられず、夜になると将来のことを考えて眠れなくなる』という声も聞かれました。」とくに男性は周囲との交わりを避けて、一人で悩みを抱え込んでしまう傾向がみられます。「私たちが問題そのものを解決することはできませんが、じっくりとお話を聞き、寄り添うことで、『話せて安心した』と言っていただけることがあります。必要に応じて行政サービスをご紹介したり、保健師などのサポートにつないだりしています。」

■ 誰もがほっとくつろげる場づくりを: 氷川町

日赤のリラクセーションコーナーを紹介するチラシ(氷川町)
「こころのケア」の取り組みは、避難所の中だけにとどまりません。氷川町では公共の入浴施設が再開し、多くの方々が訪れるようになりました。そこで日赤は、施設の一角に「リラクセーションコーナー」を開設し、誰もが気軽に立ち寄れる場を提供しています。
ソファの並ぶスペースで涼んでいただきながら、日赤のスタッフが手足のリラクセーションを行い、一人ひとりのお話に耳を傾けます。日赤兵庫県支部の須川参事は、この活動について次のように語ります。
「私たちは、8月21日から支援に携わっています。訪れた方々の話を伺うと、『1年前に水害に見舞われ、ようやく立ち直ったところで、また地震で被災してしまった』と訴える方もいて、諦めにも似た喪失感を抱えていることがうかがえます。皆さま前向きにがんばっていらっしゃいますが、地震から1カ月が経過し、心身の疲労が蓄積しています。
そこで、こころのケア班では、少しだけその『がんばり』にブレーキをかけていただき、こころと身体を休めていただけるよう工夫しています。最近では、『ほっとひと息、されませんか?』という貼り紙を見て、普段公共のお風呂を利用しない方も立ち寄ってくださるようになりました。
住民の皆さまへのご支援に加え、それを支える行政職員や支援活動に従事する地元の方々への「こころのケア」も大切です。この方々自身も被災者であり、本当に限界までがんばっていらっしゃるからです。
氷川町には、能登半島地震で被災した高校生からの応援旗が掲げられていました。そこには、当時の熊本から能登への支援に対する感謝のメッセージが記されており、まさに『たすけあい』のリレーだと感じました。私たちの活動も、日頃から日赤をご支援くださっている全国の皆さまのおかげで成り立っています。皆さまのご協力に、深く感謝いたします。」
日赤は、これからも被災された方々の「こころ」と「身体」の健康を守り、一人ひとりの復興に向けた歩みを支えてまいります

リラクセーションコーナーを訪れた住民(氷川町)
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