令和8年熊本地震 安全な水が避難生活を支える-地域の方々とともにつくる給水衛生支援-

 令和8年7月28日に熊本県で発生した地震は甚大な被害をもたらし、現在も3,200人を超える方々が避難生活を余儀なくされています(8月15日時点)。発生から2週間余りが経過した現地では、電気や水道などの生活インフラの復旧が進んだものの、被害の大きかった地域では水道管の損傷などにより、多くの世帯や避難所で断水が続いています。特に夏場の避難生活は、安全な水の確保と衛生環境の改善が重要であり、熱中症や感染症を防ぐための迅速な対応が求められています。

国際救援で培ったノウハウを活かして

 熊本赤十字病院は、全国90の日赤病院の中でも、海外での救援活動において中心的な役割を担う「国際医療救援拠点病院」に指定されています。そのため、日頃から国際救援に必要な人材の養成や専門的な訓練を受けたチームの編成、資機材の整備に取り組んできました。また、災害時に安全な水の確保や衛生環境の改善を行う「WASH (*):水・衛生」の活動にも力を入れており、専門的な知識と技術を有する体制を整えています。
 今回は、避難所となっている八代市立第二中学校で8月7日に実施した、WASHの知識や経験を生かした取り組みについて、熊本赤十字病院の黒田職員と富田職員のリポートをお届けします。
(*WASHは、Water, Sanitation and Hygieneの略で、水、衛生、衛生の総合的な分野を指します 。)

避難所の方々と協力して手洗い場を再生

 避難所ではペットボトルなどの飲料水が配布されていましたが、手洗いや洗濯、清掃に必要な生活用水も欠かせません。しかし、体育館の手洗い場は断水により利用できない状況でした。また、トイレから離れた場所に仮設の手洗い場が設置されていたものの、動線が分かりにくく、雨天時は利用しづらいことや夜間の移動に不安があることからか、トイレ利用後に手を洗わずに戻る方も見受けられました。そのため、避難者の方々はトイレや洗濯の際にもやむを得ず、ペットボトルの飲料水を使っていました。

 水の供給支援では、給水設備を利用しやすい場所に設置するだけでなく、衛生的な排水処理の仕組みづくりも重要です。そこで、現地の状況を確認し、避難所で生活されている方々の要望を伺って協議した結果、既存の手洗い場を活用することになりました。まず、手洗い場の脇にコンクリートブロックを設置し、その上に給水栓(蛇口)を取り付けました。水源には、体育館から約200メートル離れた場所にあるプールの水を活用することとしました。当初は、病院から持参したホースの長さが足りるか不安もありましたが、地元の方々が事前に学校のホースを使って準備してくださっていたおかげで、無事に給水環境を整えることができました。この経験を通じて、地域の方々の主体的な取り組みと、災害時における「自助・共助」の力の大きさを改めて実感しました。整備後、手洗い場は幅広い年代の方々にご利用いただくようになり、トイレ利用後や体を拭く際にも気兼ねなく水を使えるようになりました。清潔な環境を保ちやすくなったことで、避難者の方々の笑顔が見られるようになりました。

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プールの水を利用して給水環境を整備

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衛生的な避難生活を支える洗濯機を設置

 また、避難所運営をされている方の協力のもと、避難者だけでなく、近隣住民の方々にもご利用いただける洗濯機を設置しました。さっそく洗濯機を利用した女性からは、「下着が洗えてうれしい」という声が聞かれました。

被災された方々の声を聴き、変化するニーズに応える支援

 被災地の支援ニーズは、災害の局面に応じて変化します。例えば、避難生活が長期化する中では、健康や衛生環境の確保に加え、プライバシーへの配慮も重要な課題となります。そこで今回は、避難所に電話ボックス型の更衣室を設置し、周囲の目を気にせず着替えができる環境を整えました。

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プライバシーに配慮した更衣室

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熊本赤十字病院国際医療救援部の富田職員(左)と黒田職員(右)

 避難所では、「日赤の赤色が見えると安心します」と被災された方々から声をかけていただきました。そのおかげで、「被災された方々を最優先に考え、できることをなんでもやる」という思いがさらに強くなりました。また、避難所で生活する方々とお話をする中で、一人ひとりに必要な支援を届けることの大切さを改めて痛感しました。私たち自身も被災地である熊本に住んでいます。だからこそ、これからも被災された方々の声に耳を傾け、変化するニーズに合わせて支援内容を見直しながら、支援を続けてまいります。