障がいを理解し、希望をかなえるものづくり―千葉県支部義肢製作所の紹介

 毎年12月3日から9日は「障害者週間」です。この期間は、誰もが安心して暮らせる共生社会の実現に向けて、障がいのある人への理解と関心を深めるため、全国でポスター展示やセミナー、交流イベントが行われます。

 日本赤十字社(以下、日赤)も知的障がいや身体障がいのある方々への生活支援や社会参加を促す施設、また、視覚に障がいのある方のための点字・録音図書の製作・貸出施設などを展開しており、各障害者福祉施設では事業を通して、日々、障がいのある方への理解促進に取り組んでいます。
 今回はその中から、手足に障がいがある方のために「補装具」の製作・修理を行う「千葉県支部義肢製作所」の取り組みを紹介します。

■「千葉県支部義肢製作所」の役割

画像 修理した義足を自宅で試し、生活環境での歩き心地を確かめることができる訪問支援

 「千葉県支部義肢製作所(以下、製作所)」は、事故や病気により失われてしまった腕や足の機能を補ったり、代替したりするための補装具の製作を行っています。補装具の種類には、切断などで失われた部位を補う義肢と、まひなどで失われた機能を補う装具があり、利用者の障がいによって使い分けがされています。
 現在、製作所では国家資格を持つ義肢装具士3名が、利用者に対し、義肢・装具の相談から提案、製品の製作、納品後のアフターケアなど、義肢・装具に関わる全般をサポートしています。また、手足に障がいがある利用者が製作所まで来るのは容易ではないため、利用者宅への訪問支援にも力を入れています。

■障がいのある人への理解を広げる活動

 製作所には、補装具を利用されている方だけでなく、県内外の地域赤十字奉仕団や自治体関係者、学校の先生なども見学に訪れており、青少年赤十字加盟校の小・中・高生を対象とした職場体験の受け入れも行っています。
 職場体験では訪れた子どもたちに義足を着けた歩行を体験してもらっています。体験してみると、慣れないうちは装着部位に痛みがあり、体のどこに力を入れればよいのか分からず、一歩踏み出すことすら苦労します。
 義足で歩くことが簡単ではないと知ることで、利用者が日常生活を送るために多くの努力をしていることを実感します。
 このように、製作所は補装具の製作だけでなく、地域社会に障がいのある人への理解を広げる役割も担っています。

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実際に触れて、義足の軽さや足の裏の弾力を体験することで、理解を深める一歩につながります

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義肢を着けると手すりなしではバランスがとりづらく、歩行が困難であることを体験

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指のかたどりで義肢製作の工程を分かりやすく学んでもらう工夫をしています

■利用者一人一人と向き合う義肢装具士の思い

 製作所の義肢装具士に、製作する際に大切にしていることや、今後の思いを伺いました。

画像 利用者との信頼関係を大切に、丁寧な対応を心がける義肢装具士 「利用者の『今までで一番痛くない』という言葉と笑顔が最高の喜びです」

 「製作では、利用者ごとに装着部位や生活環境が異なるため、調整は簡単ではありません。例えば、足を切断されている場合、切断部位が変形しているため、強い痛みを伴う矯正が必要になることがあります。そのようなときには、痛みを避けるためにあえて矯正を一部にとどめるなど、細やかな判断や工夫が必要になることがあります。こうした製作の意図を理解してもらうためには、利用者とのコミュニケーションが非常に大切です。納品時には必ず、メリットだけでなく、最初は痛みが多少ある可能性などリスクも事前に共有し、丁寧に説明するよう努めています。障がいのある方一人一人の生活を理解し、できるだけ相手の気持ちになって考えることを大切にしています。
 補装具を使用する方の中には、義足の修理や再製作に関する制度を知らず、病院で治療後、義足が合わなくなっても作り直しを我慢してしまう方もいます。障害者手帳を所持していれば補助制度を活用した再製作ができるので、こうした制度を利用者や医療・介護関係者に広めることも、製作所の重要な役割だと考えています。
 また、見学や職場体験では義肢装具士の視点だけでなく、赤十字の職員として一人一人を尊重する赤十字の理念や事業についても紹介しています。実は、現在千葉県支部で働く職員の一人は、職場体験で赤十字への関心が高まったことが就職のきっかけになったんです。
 今後も、人を大切にする赤十字の理念に基づき、利用者の希望をできる限り形にしていきます。」

 製作所を含め、日赤が運営する障害者福祉施設では、事業や広報活動を通して、利用者の健康と尊厳を守り、安心して暮らせる環境づくりに取り組んでいきます。

 日赤が運営する障害者福祉施設については、下記リンク先をぜひご参照ください。

日本赤十字社の障害者福祉施設