世代を超えて地域で祝う敬老の日(日赤安謝福祉複合施設)

 9月15日は敬老の日。日本赤十字社(以下、日赤)の各地の高齢者施設では、利用者の長寿を祝うイベントが開催されました。
今回は、沖縄県にある「日赤安謝(あじゃ)福祉複合施設」で行われた、地域性を生かした敬老の日のイベントを紹介します。

 日赤安謝福祉複合施設は、特別養護老人ホームを中心に、デイサービスやショートステイ、居宅介護支援事業所、保育園(他法人運営)などが一体となった複合型施設です。高齢者から子どもまで幅広い世代が集い、世代を超えた交流が日常的に行われています。
 施設内には、那覇市民の交流の場である「老人憩(いこい)の家」や児童館なども設置されており、隣接する安謝市営住宅や小学校との垣根をなくすことで、地域に開かれた運営を行っています。

 そんな安謝福祉複合施設では、敬老の日に合わせて、特別養護老人ホームの入所者やデイサービス利用者を対象に、利用者の笑顔があふれる敬老会が開催されました。

■特別養護老人ホームでの「がんじゅう祝い」

 特別養護老人ホームでは「がんじゅう祝い」が行われました。「がんじゅう」とは沖縄の言葉で、「元気」「健やか」「頑丈」といった意味があり、「いつまでも元気で長生きしてほしい」という願いが込められています。
 当日は、地域の子ども会「安謝わくわく太鼓」の皆さんが、エイサーを披露してくれました。力強い太鼓演奏を見ようと、会場には約90名の利用者が集まり、入りきれないほどのにぎわいとなりました。
 沖縄の伝統的な慣習である「生年祝い(トゥシビー)※」の表彰に加え、「カジマヤー※(97歳)」祝いの対象者には、心のこもった手作りの風車(かざぐるま)と色紙のプレゼントがありました。カジマヤーになると童心にかえり、風車で遊ぶようになると言われています。
 利用者からは「とても楽しかった、また子どもたちの演奏も見たい」との声も聞かれ、普段と違う表情や笑顔が見られる、温かいひとときとなりました。

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迫力あるエイサーの演舞に、会場は大盛り上がり!

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琉装(りゅうそう)風の羽織に着替えて、晴れやかにお祝い。

■盛りだくさんのデイサービスでの敬老会

 デイサービスでの敬老会は、職員による琉球民謡の演奏と踊りで華やかにスタートしました。
 続いて、施設内に設置されている「あじゃ保育園」(他法人運営)の園児が歌とダンスを披露してくれました。かわいらしい姿を、利用者の皆さんも優しい笑顔で見守っていました。
 「老人憩(いこい)の家」のレクリエーションダンスの同好会の皆さんも、この日のために、本来の活動日以外にも集まって練習したダンスを披露してくれました。手作りの衣装で踊る姿に、会場の雰囲気も一層にぎやかになりました。
 さらに、施設職員が「エイサー」を披露すると、普段とは違う衣装と雰囲気に、ひときわ大きな拍手が送られました。業務後に一生懸命に練習した成果は、利用者の温かな笑顔にしっかりと表れていました。 
 長寿祝い表彰式では、沖縄ならではの「トーカチ※(88歳)」祝いと「カジマヤー(97歳)」祝いの賞状が贈られ、会場は温かい拍手に包まれました。

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曲ごとに衣装を替えながら、素敵なダンスを披露。

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元気いっぱいの大きな声で「きらきら星」を歌っている様子。

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お名前の頭文字を使った、世界にひとつだけの賞状の贈呈。

 最後は、長寿を祝いながら、沖縄の伝統的な踊り「カチャーシー」をみんなで踊り、敬老会は大盛況のうちに終了しました。

※生年祝い(トゥシビー):数えで73歳、85歳など、12年ごとに迎える節目の年齢を祝う行事です。
※トーカチ:沖縄で数えで88歳を祝う行事で、「米寿」のお祝いにあたるものです。
※カジマヤー:数えで97歳を祝う行事で、旧暦の9月7日に行われます。

■地域に開かれた福祉施設を目指して

 安謝福祉複合施設では、開所以来、地域福祉の推進に向けて、世代を超えた交流を続けてきました。近年は感染症の影響や人手不足により、イベントの開催が難しくなる場面もありますが、それでも地域とのつながりを絶やさないよう、職員が工夫を重ねています。敬老の日のイベントだけでなく、地域のお祭りへの参加、防災訓練、大学への介護にかかる出前講義など、さまざまな形で交流を図ることで、施設の魅力を発信し、福祉の仕事に関心を持ってもらうきっかけにもつなげています。

 少子高齢化や地域のつながりの希薄化が進む中、孤立を防ぎ、安心して暮らせる地域をつくるには、こうした連携がますます重要になっています。
 日赤の各社会福祉施設でも、それぞれの特性を生かしながら、地域に根ざした活動を展開しています。救急法の講習や職場体験、子育て支援、障がいのある方への理解促進など、地域のニーズに寄り添った取り組みが広がっています。
 これからも、日赤の社会福祉施設は、安定したサービス提供に加え、地域のニーズに応えることで、誰もが安心してその人らしく暮らせる社会づくりへの貢献を目指していきます。