【速報5】ネパール洪水:発生から1カ月、被災地で見え始めた新たな課題

 2026年8月26日朝(現地時間)にネパールと中国との国境付近で発生した大規模な土石流・洪水から1カ月が経過しました。これまでに少なくとも1,451人が死亡し、5,745人が行方不明となっています。また、多くの住宅や道路、橋、保健医療施設などが被害を受け、現在も1,200人以上が避難生活を続けています(9月21日時点、ネパール国家防災管理庁)。

画像 洪水により大量の土砂が流れ込み、家屋や商店が埋まったヌワコット郡©NRCS

地域ごと失われた暮らし

 9月7日から国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)の保健医療コーディネーターとして現地で活動する川瀨看護師は、被災地の光景に大きな衝撃を受けたといいます。
 今回の災害では、家屋だけでなく、地域コミュニティそのものが流されてしまった場所が少なくありません。保健医療施設や学校、道路など、人びとの暮らしを支えてきた基盤が一瞬で失われました。
 一方、わずか数メートル離れていただけで被害を免れた建物もあり、洪水の流れが直撃したかどうかによって被害の差が大きく分かれたことも特徴の一つです。さらに、橋の流失によって地域が分断され、医療へのアクセスにも深刻な影響が生じています。災害前は車で10分ほどで可能だった病院へのアクセスが、現在は7時間以上かかる地域もあり、人びとの生活や医療体制に大きな支障を及ぼしています。

20260929-da4d2acc2b64de1e19bb69df46f0affce1398acf.jpegネパール赤十字社が展開する仮設診療所で、患者の疾患傾向や医療資機材の調達状況などについて聞き取りを行う川瀨看護師(写真右)©IFRC

深刻化する健康課題

 2015年のネパール地震でも救援活動に従事した川瀨看護師は、今回の洪水では保健医療上の課題が前回と大きく異なると感じています。
 地震では骨折や外傷への対応が中心でしたが、今回は糖尿病や高血圧、心疾患などの慢性疾患への対応が大きな課題となっています。薬を継続して服用できなかったり、医療機関に通えなくなったりすることで、健康状態が悪化する人も少なくありません。また、避難生活の長期化に伴い、感染症の発生リスクも高まっています。
 こうした身体面の課題に加え、こころのケアの必要性も高まっています。避難所では家族を亡くした人や、行方不明となった親族の安否が分からない人も多く、「支援物資はあるけれど、自分の気持ちをどう整理したらよいか分からない」「夜も眠れない」といった声も聞かれます。

20260929-1c50c9cf04b99928cb1cc7d6110a466b6e3471ef.jpegヌワコット郡の避難所。被災者が共同生活を送る中、一人ひとりの尊厳を守るため、安全な居住環境や水・衛生、保健医療へのアクセスの確保が求められている。©IFRC

被災者を支える被災者

 川瀨看護師が特に印象に残っているのは、ネパール赤十字社(以下、ネパール赤)のボランティアたちの姿です。現地で活動するボランティアの中には、自身も被災し、親族を亡くしたり、家族の安否が分からなかったりする人もいます。それでも、避難所や診療所で支援活動を続けています。
 あるボランティアは、「自分も被災者だが、今やるべきことは他の被災者を支えることだ」と話しました。
 また、ボランティア同士が被災体験や思いを語り合う場では、多くの人が涙を流しました。中には言葉にできず、静かに涙を流し続ける人もいたといいます。
 こうした経験を通じて川瀨看護師は、被災者を支えるボランティア自身へのこころのケアも、重要な支援の一つであると感じています。

20260929-54b9e6a4217e24638287319d5aa46a18e1328d62.jpegネパール赤の仮設診療所に隣接して設置された「子どもにやさしい空間(Child Friendly Space)」。子どもたちが安心して遊び、交流できる場として運営されている。©IFRC

復興を支える赤十字の活動

 発災直後から活動を続けるネパール赤は、IFRC、赤十字国際委員会(ICRC)、各国赤十字社・赤新月社と連携し、9月18日時点で延べ3万7,000人以上に支援を届けました。
 これまでに約1,300世帯への現金給付支援、約9,800人へのシェルター支援、約2万1,000人への水・衛生支援、約2,600人への心理社会的支援(こころのケア)を含む保健医療支援などを実施しています。また、道路が寸断された地域にはヘリコプターを活用して救援物資を輸送するなど、孤立した地域への支援も継続されています。

20260929-7cefe2603a3bb644b250e77c08e0b4c91eb62c4e.JPGネパール赤とIFRCは被災者に対し現金給付を実施。食料や生活必需品の購入など、自らの優先ニーズに応じて活用できる支援を行っている。©IFRC

20260929-22fe388203b8c2128aa3e8e7543240d8cfb3c2a4.JPGヌワコット郡に設置されたネパール赤の仮設診療所。洪水で医療機関へのアクセスが困難となった住民に対し、基本的な医療サービスを提供している。©IFRC

 発災から1カ月が経過し、被災地では救命を中心とした緊急対応から、避難生活の長期化への対応、生活再建と早期復旧に向けた支援へと移行しつつあります。しかし、大きな被害を受けた地域では、今もなお多くの人びとが避難生活を余儀なくされており、暮らしや地域コミュニティの再建には引き続き支援が必要です。
 こうした状況を踏まえ、日本赤十字社は被災地で本格化する救援活動を支援するため、IFRC緊急救援アピールへの追加支援として3,500万円の資金援助を決定しました。
 赤十字は引き続き、シェルター、水・衛生、保健医療、生計回復など幅広い分野で支援を続けるとともに、一人ひとりの尊厳が守られる生活環境の実現に向け、被災地に寄り添った活動を継続していきます。

「2026年ネパール洪水救援金」

受付期間:令和8(2026)年9月3日(木)~令和8(2026)年11月30日(月)
使途:国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)、赤十字国際委員会(ICRC)、ネパール赤十字社および日本赤十字社が行う、被災者への救援・復興支援活動および防災・減災活動などに充てられます。

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