厳しい暑さとともに生きる―ジブチで進む気候変動への備え
日本赤十字社は、2025年より、ジブチ共和国において、気候変動への対応と持続可能な生計向上を目指す事業を支援しています。
アフリカ東部に位置するジブチでは、度重なる干ばつにより、水不足や食料不安が慢性化しており、地域住民の生活は気候変動の影響を大きく受けています。

干ばつの影響で家畜が死に、深刻な水不足が地域の生計に影響を及ぼしている©ジブチ赤新月社
こうした状況の中、本事業は、農業や水資源の改善、環境保全活動を通じて、地域住民が自ら課題に対応できる力(レジリエンス力)を高めることを目的として開始されました。ジブチ赤新月社は、学校、行政、地域住民と連携しながら本事業を進めています。
2026年6月で事業1年目を終え、着実な成果と今後への課題が見えてきました。この記事では、ジブチにおける事業1年目の取り組みと事業2年目に向けた展望についてご紹介します。
事業1年目の活動成果:ジブチで広がる気候変動対策の取り組み
事業初年度は、地域住民の主体的な参加を基盤に、気候変動への理解促進と生活改善に向けた取り組みが着実に進みました。現地の学校や行政機関、コミュニティリーダーと密接に連携しながら事業を展開したことで、地域の実情に即した支援が可能となり、活動全体に対する住民の理解と参画の促進につながりました。
特に大きな成果の一つが、乾燥や暑さに強い植林と家庭菜園の導入です。これまでに研修と資材支援を受けた95世帯のうち、約85%にあたる約80世帯が菜園を実際に立ち上げ、野菜を安定的に確保できるようになりました。これにより、食料不足のリスクが軽減されただけでなく、栄養バランスの改善や家計支出の抑制にもつながっています。また、農家同士の学び合いを通じて、実践的な知識や技術が地域内で共有されるなど、持続的な発展につながる基盤づくりも進みました。

地域住民に家庭菜園キットを配付する様子©ジブチ赤新月社
また、水インフラの整備も重要な進展を遂げています。約450メートルのパイプラインの整備や給水設備の改善により、生活用水だけでなく農業用水や家畜の飼育に必要な水へのアクセスも向上しました。これにより、干ばつなどの厳しい気候による影響に対する地域の耐性が強化されるとともに、水くみの負担軽減など、日常生活の改善にもつながっています。水資源の安定的な確保は、地域の生計維持に直結する重要な要素となっています。
さらに、学校における環境クラブの設立や住民向けの啓発活動も成果を上げています。子どもたちを中心に気候変動や環境保全への理解が深まり、清掃活動などの実践的な取り組みが進められました。こうした活動は、家庭や地域社会にも波及しつつあり、地域全体で環境意識が高まっています。将来的には、この意識の変化が持続的な行動へとつながり、地域主導による環境保全の取り組みが定着することが期待されています。
事業1年目を通して見えてきた課題
一方で、事業の過程でいくつかの課題も浮き彫りになりました。
ジブチは農業生産が盛んな国ではなく、種子や肥料などの農業資材を現地で十分に確保することが難しい状況にあります。このため、一部の資材の調達に想定以上の時間を要しており、今後はケニアなど周辺国からの調達ルートを確保するなど、より円滑な事業実施に向けた改善を進めていきます。
また、地域によっては農業に関する知識や経験が限られており、新しい技術や手法の定着に時間を要しました。特に一部のコミュニティでは、これまでの生活習慣との違いから、新しい取り組みの導入に慎重な姿勢が見られ、継続的なフォローや実践的な指導の必要性が明らかになりました。
加えて、安定的な水供給が確保されていない地域では、農業や生活改善の取り組みそのものが制約を受けるため、インフラ整備とソフト面の支援を一体的に進める必要があると確認されました。
これらの経験から、地域ごとの状況や特性に応じた柔軟な支援、そして継続的な技術指導や伴走支援の重要性が一層明確になりました。
事業2年目に向けて
事業開始に向けて実施されたコミュニティ・オリエンテーションの様子 © ジブチ赤新月社
こうした事業1年目の成果と課題を踏まえ、事業2年目は取り組みの拡充と質の向上が図られます。これまでに構築された地域との協力体制や基礎的な活動を土台に、より実効性の高い支援へと発展させていく方針です。
具体的には、事業1年目に実施できなかった農業資材の配付や研修の拡大、実地指導やモデル農園の導入による技術定着の強化が計画されています。これにより、単なる知識の習得にとどまらず、日常的な実践への移行を後押しする狙いがあります。また、水供給の安定化に向けた取り組みとして、太陽光ポンプの導入や既存設備の改修といった、インフラ整備を引き続き推進します。水へのアクセス改善は、農業生産だけでなく生活環境全体の向上にも直結するため、優先的な課題と位置付けられています。
現在、事業は基盤整備の段階から次のステップへ移行しつつあります。2026年7月から始まる事業2年目は、1年目で得られた知見を生かし、地域主体の持続可能な活動として定着・発展することが期待されています。日本赤十字社は、ジブチ赤新月社とともに、地域に根ざした支援を継続し、気候変動に強いコミュニティづくりを進めていきます。

