United in Humanity ~人間を救うのは、人間だ。~
5月8日は世界赤十字・赤新月デーです。
この日は、赤十字の創始者であり、第1回ノーベル平和賞受賞者でもあるアンリー・デュナンの誕生日です。これにちなみ、赤十字では、世界中の数千万人のボランティアと職員の人道支援に対する揺るぎない献身をたてたたえつつ、私たちの活動の指針である7つの基本原則への関心を高めるべく行動します。

今年の世界赤十字・赤新月デーにあたり、私たち赤十字から読者の皆さまに一つのメッセージをお届けします。
「国境や文化によって、直面する困難が違っても、助けたいという気持ち、生き延びたいという願いは、世界じゅう同じです。支援する人も、支援を受ける人も、みな同じ人間です。赤十字のボランティアは、あなたの隣にいる普通の人々であり、私たちが支援する方々も、統計上の数字ではなく、一人一人かけがえのない存在です。」
今回はこのメッセージについて、日本赤十字社から国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)アジア・大洋州地域事務所にユース担当として出向している職員の三亀(みき)より、彼女が活動の現場で経験したエピソードを交えながらお伝えします。
■何のためにボランティアをするのか?
世界の赤十字社、赤新月社には1,700万人以上のボランティアがおり、さまざまな思いをもって活動しています。
2024年の連盟総会に先駆けて行われたユースフォーラムに参加した各国赤十字社、赤新月社のユース代表©IFRC
コロンビア
2024年10月に行われたIFRCの国際会議で、南米コロンビアのユース委員[1]が壇上に立ち、ボランティアをはじめた動機について語りました。コロンビアは、50年以上にわたり武力紛争が続く国です。彼女は、コロンビアの小さな町で家族とともに平和に暮らしていましたが、ある日突然、銃声が響き、武装した人々が現れました。故郷の町を追われ、避難を余儀なくされ、武力紛争の不条理を目の当たりにした彼女に、世の中を変えたいという気持ちが芽生えました。そしてその気持ちを行動に移せる場所が、赤十字ボランティアになりました。彼女は、最初は応急処置を学ぶために参加しただけでしたが、すぐにここが自分の居場所だと感じ、地雷などの危険性について子どもや若者に教えることから活動をはじめ、非暴力コミュニケーションなどの教育や、ユースリーダーとして他の赤十字社、赤新月社との交流を推進することなどに、10年以上にわたり携わってきました。
フィジー
フィジー赤十字社が主催のユースキャンプに参加した際には、ひとりのボランティアユースオフィサーが私にこう語ってくれました(フィジー赤十字社では、支部はボランティアで運営されています)。「私の地域では若者の間で違法薬物のまん延やHIVの感染が問題になっている。実際に私の周りにも、健康を損なってしまった知り合いがいる。知識があれば未然に防げたのに。違法薬物やHIV感染の危険性を子どもや若者に伝える活動を一緒に行ってくれるユースボランティアがまだまだ少ない。私はリーダーとして、ユースボランティアが活動しやすい環境づくりをし、彼らが継続してボランティアをしたくなるような活動を提案することで、もっとボランティアの数を増やし、地域の課題解決につなげたい。」
日本
日本においても、ユースボランティアの思いは同じです。私が福岡県内の日本赤十字九州国際看護大学に勤めていた時、熊本地震が発生しました。学生には熊本の出身者も多く、彼らは被災者のためにできることをしたいと考え、自主的に被災した家屋に赴いて片づけをしたり、自分たちで学内や古本屋から集めた本を運んで避難所にある集会所で図書館を運営したり、図書館で子どもたちの学習支援をしたりと、現地でさまざまなボランティア活動に積極的に取り組みました。
このように多くのボランティアが、それぞれの地域課題に向き合い、より良い方向へ変えたいと考え、ボランティア活動に参加しています。つまり、赤十字社、赤新月社のボランティアは、遠くから来た誰かではなく、地域住民であり、彼らの熱意は、時に私たちの心の中にも生まれるもの。ボランティアをはじめるきっかけは、私たちが思うよりずっと近くにあります。
[1]ユースの声が赤十字・赤新月運動の意思決定機関に届くように、全赤十字社、赤新月社のユースを代表して連盟の活動のうちユースに関連するものについて、連盟の理事会に助言をする役割を持つ。委員長と国際赤十字の分類による世界の4つの地域を代表するメンバー合計9名で構成され、4年に1度、ユース代表者による選挙で選出される。
■平和とは何か?
各国赤十字社、赤新月社の間では、青少年赤十字(Junior Red Cross:JRC)の活動において国際交流事業が設けられ、盛んに交流が行われています。日本赤十字社の各支部においても、マレーシア、カンボジア、モンゴル、韓国などのJRCメンバーとの交流を行っています。


クアラルンプールにあるマレーシア赤新月社加盟校との文化交流の様子©日本赤十字社
特に印象に残っているのは、広島県支部が行った、カンボジア赤十字社との国際交流に向けた事前学習ウェビナーのときのこと。参加者のある言葉が心に残りました。「平和とは何かについて考えたい。」私たちの平和に対するイメージは、育ってきた環境や時代の変化に大きく左右されます。参加者たちは、戦争の記憶が色濃く残る広島とカンボジアで、カンボジア赤十字社のユースが描く「平和」とは何なのか、広島との違いを知り、平和について考えたいと話してくれました。
また、日本赤十字社の北関東三県支部(群馬・栃木・茨城)とマレーシア赤新月社との交流では、お互いのJRCメンバーが文化背景を理解し、尊重し合う姿を目にしました。日本では挨拶での身体的な接触をする文化がなく礼儀を重んじる一方、マレーシアではスキンシップを含む歓迎のセレモニーを大切にする文化があることを事前に認識したうえで交流を深めていました。
文化の「違い」は体験を通してでしか気づけず、その「気づき」を通してでしか学べない部分が多くあります。そのような体験を得た赤十字・赤新月社のJRCメンバーたちが、平和の重要性を認識し、多様な価値観を受け入れ、見過ごされてきた人々を取り残さない活動を地域で行っていく。それこそが、JRCの国際交流の狙いであり、JRCメンバーはそれを体現してくれています。私は交流の中で見てきたものを通して、これが広がっていくことが世界平和につながるのだと実感しました。
世界中で活動するボランティアは、どこか遠くの場所からきた特別なスキルを持った人ではありません。あなたと同じ地域に生き、同じ課題を抱え、それをどうにかしたいと活動する一人の人間です。そして彼らが助けようとする人々も、それぞれに名前があり、声があり、物語がある、一人一人の人間です。それが、我々が日頃「何人の被災者、難民」といった統計上の数字やカテゴリーに気を取られて見過ごしがちな点です。世界赤十字・赤新月デーのこの日、その一人一人のために、何ができるのか一緒に考えてみませんか。
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