【速報7】イラン及び周辺国人道危機:がれきに覆われる街、増え続ける避難民

 中東地域で戦闘が続く中、その影響は民間人にも急速に広がっています。特にイランとレバノンでは、多数の死傷者が出るとともに、都市部を中心に住まいや生活の基盤が揺らぎ、人びとの暮らしに深刻な影響が及んでいます。イランでは、最大320万人が住まいを追われ、レバノンでは国民の5人に1人が避難を余儀なくされており、その3分の1は子どもです。 
 レバノン国内で避難生活を送るレイラさんは、厳しい現状をこう語ります。
 「子どもたちを入浴させるための温かいお湯さえあればよいのですが。冷たい水では凍えるばかりです。服や靴もありません。私たちは、ただ生きるのに必要な基本的なものを求めているだけなのです。」
 保健・救急医療、避難所、心理社会的支援(こころのケア)、水と衛生、生活必需品など、人びとのいのちと暮らしを守るための支援ニーズが、今も急激に高まり続けています。

「住宅地で12人が死亡。被害は市内約600カ所」-イラン・テヘラン東部

 イランでは、都市部への継続的な爆撃の影響により、街区全体ががれきと化す状況が続いています。この紛争によって、数千人の民間人が犠牲となり、今もなおがれきの下に取り残されている人びとがいると伝えられています。

 テヘラン東部のレサラト地区では、住宅地が空爆による深刻な被害を受け、多くの住民が暮らしの基盤である自宅を失いました。
 4月にイランを訪問した国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)のハビエル・カステリヤノス事務次長は、4月18日に訪れた現場で、次のように語りました。「ここは住宅地で、12人が亡くなりました。イラン赤新月社は、事態発生から4分以内に救助隊を派遣し、救助や応急手当、心理社会的支援を行いました。市内では約600カ所が被害を受けており、ここはその一例です。厳しい状況の中、いのちを救い、亡くなった方々の尊厳を守るイラン赤新月社の活動は、心から称賛されるべきものです。」

*カステリヤノスIFRC事務次長のリポート動画はこちら

p-IRN1028 (2).jpegレサラト地区を訪れたカステリヤノスIFRC事務次長(写真右)©IRCS/IFRC

「子どもたちの帰宅時間を直撃」―レバノンでも被害が拡大

 4月8日、レバノンでは、子どもたちが学校から帰宅する時間帯に、人口密集地域を直撃する大規模な空爆がありました。その結果、多数の死傷者が出たほか、住宅や商業施設が広範囲に破壊され、地域社会は大きな混乱と恐怖に包まれました。こうした状況について、IFRCのジャガン・チャパゲイン事務総長は、次のように述べています。
 「レバノンにおける最近の戦闘激化に、深い懸念を抱いています。人口密集地域が直撃を受け、多くの尊い命が失われ、広範にわたる甚大な被害が生じています。私は、この極めて困難な時期にあるレバノンの人びとに深く思いを寄せています。」
 民間人は、いかなる状況においても保護されなければなりません。

厳しい制約の中で続く、赤十字の支援物資の輸送

 紛争による世界的なサプライ・チェーンの混乱により、航空・海上輸送のコストは大きく上昇し、支援物資を届けること自体が困難になっています。それでも国際赤十字は、そのグローバル・ネットワークを通じて、厳しい制約の中でも支援を必要とする人びとに物資を届けるため、あらゆる努力を続けています。
 4月12日、IFRCはトルコ赤新月社と協力し、今年2月末の紛争激化以降初となる医療物資のイランへの越境輸送を実現しました。輸送物資には、緊急時に人命救助を可能にする外傷治療キット200セットのほか、テントや毛布、衛生用品などの人道支援物資も含まれています。
 また、赤十字国際委員会(ICRC)は、生活必需品171トンをイランに輸送し、4月13日にトラック5台分がイラン赤新月社に引き渡されました。さらに、現地で調達した発電機200台とモーターポンプ100台を寄贈し、イラン赤新月社の救援・救助活動を支援しています。ICRCは今後もイラン赤新月社の支援を継続し、イランにおける人道支援を拡大する予定です。

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イランに届けられた外傷治療キット。トルコ赤新月社の協力による越境輸送を経て、イラン赤新月社の倉庫で受け取られた。©IRCS/IFRC

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ICRCにより届けられた171トンの生活必需品。これは戦闘の激化以降、国境を越えた人道支援物資の搬入の数少ない例である。©ICRC

人道支援従事者は攻撃の対象ではない―守られるべき標章の意味

 事態の激化以降、赤十字・赤新月社のボランティアが人道支援活動中に負傷したり命を落とすといった、痛ましい被害が出ています。それでも各国赤十字・赤新月社のボランティアやスタッフは、危険と隣り合わせの中で、救援活動を続けています。
 赤十字・赤新月(赤い三日月)・赤いクリスタルの標章は、国際法上、戦時に「攻撃してはならない」という保護の意味を有します。紛争地でこれらの標章を掲げる病院や車両、そして人道支援に携わる人びとは、決して攻撃の対象にされてはなりません。

 こうした深刻な状況を受け、IFRCはイラン複合人道危機への対応のための緊急救援アピールの支援要請額を、当初の3倍となる1億2,000万スイスフラン(約240億円)に増額しました。また、ICRCもイランにおける保護・救援活動を拡大するため、2026年次アピールの支援要請額を、約990万スイスフラン(約20億円)に増額しました。しかし、必要な資金の確保は依然として十分ではありません。

 日本赤十字社は、国際赤十字の一員として、現地の赤十字・赤新月社と連携し、紛争の影響を受けた人びとへの支援を続けています。あわせて、紛争の中でも一人一人のいのちと尊厳を守るために行われている現場の活動や声を、今後も伝えていきます。
 引き続き、被害を受けた方々、そして現場で支援に尽力する人道支援の担い手に、思いを寄せていただき、温かいご支援をお願いいたします。

「イラン及び周辺国人道危機救援金」
受付期間:令和8(2026)年3月16日(月)~令和8(2026)年5月29日(金)
使途:連盟、ICRC、各国赤十字社・赤新月社および日本赤十字社が中立・公平・独立の立場を堅持しながら行う、イランおよび紛争の影響を受ける周辺国その他の国々における被災された方への救援・復興支援活動などに充てられます。

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