台湾東部沖地震から2年 ~備えを地域の力に、災害に強い地域づくりを目指して~

 2024年4月3日に台湾東部を襲ったマグニチュード7.4の地震は、花蓮県を中心に大きな被害をもたらしました。台湾赤十字組織は、発災直後から救援活動を開始し、被災者世帯に住宅修繕補助金、教育補助金などを提供し、現地の人びとが被災後の最も困難な時期を乗り切る手助けをしてきました。日本赤十字社(以下、日赤)は皆さまから寄せられた「2024年台湾東部沖地震救援金」をもとに台湾赤十字組織の活動を支援していますが、震災から2年目となった2025年は、台湾赤十字組織とともに被災者の生活再建と地域の防災力強化に向けた復興支援活動にも取り組みました。

■台湾赤十字組織が支える花蓮県の“地域を守る基盤づくり”

 台湾赤十字組織は、復興支援活動の大きな柱の一つとして、花蓮県政府と協力して、地域の安全を守るための防災インフラ整備に取り組んでいます。202511月には、日赤の支援を受けた台湾赤十字組織の資金援助により、花蓮県政府が花蓮市に建設した仮設住宅が完成しました。主な入居者は、家屋に甚大な被害を受け、長期的な再建が必要な世帯です。完成までには、被災世帯の詳細調査や優先順位付け、土地の確保や調整に加え、公共調達手続きなどに時間を要しましたが、完成までの期間は、花蓮県政府が入居予定者に家賃補助を提供し、被災世帯の生活支援も行いました。
 併せて、地震で建物に被害を受けた消防署の再建工事と防災・避難所の機能を備えたコミュニティセンターの建設も進められており、単なる復旧ではなく、長期的に「より災害に強い地域づくり」を目指しています。

20260401-15637de854309a7c1d4e563768a9c120475593fb.jpg仮設住宅は近隣に公園やショッピングセンターなどもあり、人びとが安全で快適な生活をしながら、安定と希望を育む設計になっている©台湾赤十字組織

■パートナーシップで広がる、格差縮小のための教育支援

 被災地域の子どもたちや若者を支える取り組みとして、学校と連携した教育支援や防災教育なども進められています。一例として、2025年9月より花蓮県の子どもたち向けに、台湾のデジタル学習プラットフォーム「PaGamO[1]」と連携して、オンライン英語学習コースの受講支援を行っており、小学校3年生から6年生まで1,015名に無料アカウントを提供しました。10月には科学教育に取り組む台湾のNGO団体「Learning in Science(LIS)[2]」と協力して初の高校理科教師向けのワークショップを開催し、複雑な科学概念を教室でわかりやすく伝える教材を紹介しました。花蓮県は地震や台風が頻繁に襲来し、鉄道や道路などの交通インフラが影響を受けて陸の孤島となりやすいため、教育の安定と継続は重要な課題です。いずれのプログラムとも都市部と、都市部から離れた遠隔地の子どもたちの学習格差を縮小することを目的としており、これらの活動は、子どもたちが安心して学び、地域の未来を担う存在として成長していくことを支えるものです。

[1] 300万人以上の登録ユーザーを有し、台湾の16の地方自治体と連携している先進的なデジタル学習プラットフォーム。  https://www.pagamo.org/

[2] 科学教育に取り組む台湾のNGO。生徒の好奇心と批判的思考力を育むために探究型学習用の教材や動画を作成している。https://lis.org.tw/

20260401-e7fba90575612cd9ff454a63fb619cacd498719c.png光学の屈折を体験している様子。台湾赤十字組織は「教育こそが災害後の復興における最強の力である」とし、今後も教育支援を拡大していく計画を立てている©台湾赤十字組織

■青少年が地域防災の主役に~“学びから備える社会づくり”

 大学生向けの防災キャンプでは、心肺蘇生法やAED(自動体外式除細動器)の操作、止血法、包帯法などの一次救命処置(BLS)を指導すると同時に防災教育の指導者を育成し、小学生向けの防災授業などを担う若手リーダーを多数輩出しています。また、子ども向けサマーキャンプでも、けがの応急手当の方法、水の事故から自分を守る方法などを実技中心で学ぶと同時に、ゲームやロールプレイ、シミュレーションを通して防災を日常の行動として身につけ、災害時に自ら考えて動ける力を育てています。
  
地域での防災訓練の実施も各地で進み、住民と協働した避難・救助シミュレーションが行われ、地域全体の災害対応力向上につながっています。

20260401-60d426f35214e495c24f8b7a23db72f436cc9b5c.jpg防災キャンプを修了した大学生たちは、小学生に基本的な災害意識と対応スキルを指導する役割を担う©台湾赤十字組織

■災害対応力を底上げする救助ボランティア研修を拡充

 台湾赤十字組織は、台湾各地で自然災害への対応を強化するために赤十字ボランティアの捜索・救助能力の向上を目的とした教育・訓練も強化しており、市街地における捜索・救助の基礎訓練やロープ救助訓練、ドローンの基本操作訓練など、さまざまな研修を実施してきました。研修には台湾全土から集まった多くのボランティアが参加し、倒壊建物での救助、危険地帯へのアクセス、救助を必要としている人を安全な場所に搬送する方法など、救助現場で求められる実践技能を学びました。特にドローン研修では、災害時の通信遮断や道路寸断に備え、空からの状況把握と映像伝送を迅速に行う技術を強化しました。台湾赤十字組織は「備えは地域の力」であるとし、即応性と専門性を兼ね備えた人材育成を今後も継続していきます。

20260401-ca05ba416406f1159d3bc431a98977cd6a256660.jpg赤十字の救助ボランティアは多様な地形での複雑な救助に備えるために高度なロープ技術も学んでいる©台湾赤十字組織

■皆さまのご支援に感謝して

 被災地の復興はまだ道半ばですが、台湾赤十字組織の潘会長は、「私たちは花蓮県が力強く尊厳を持って復興することを支援していきます」と話し、花蓮県の復興とコミュニティのレジリエンス(回復力)強化をハードとソフトの両面で支援しています。被災地の復興には長い時間が必要ですが、皆さまからお寄せいただいた温かいご支援により、着実に進められています。日赤は台湾赤十字組織とともに、引き続き被災地域の人びとに寄り添いながら、住民が安心して暮らせる地域の再生と、将来の災害に強い社会づくりに取り組んでまいります。皆さまのご理解とご支援に、改めて心より御礼申し上げます。

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