【速報5】イラン及び周辺国人道危機:市民のいのちを守るため、国際人道法の遵守を

 中東における戦闘の拡大と激化により、何百万もの人びとの生活が一変しています。その影響は中東地域をはるかに超え、前例のない規模とスピードで広がっており、人道支援の対応能力が限界に追い込まれかねない状況です。
 わずか1カ月の間に、人道支援従事者を含む数千人が命を落とし、数十万人が住まいを追われています。水や医療、エネルギーの供給に欠かせない重要なインフラも深刻な被害を受けています。都市部で広範囲に影響を及ぼす兵器の使用は、市民に大きな恐怖と苦痛をもたらしています。
 赤十字国際委員会(ICRC)、国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)、そして各国の赤十字・赤新月社は、戦闘の被害を受けた人びとに寄り添うため、多くのスタッフ・ボランティアを動員し、懸命に人道支援を続けています。

画像 空爆の影響で避難を余儀なくされた家族が身を寄せる緊急避難所(イランの西アゼルバイジャン州)。イラン赤新月社のスタッフとボランティアが訪問し、被害にあった方々にこころのケアを実施している。©IRCS

イラン:連盟現地代表部による報告

 3月27日に開催された国連の記者会見で、連盟イラン代表部のマリア・マルティネス代表は、紛争が続くイランの深刻な人道状況と、現地で活動するイラン赤新月社および連盟の支援について報告しました。
 マルティネス代表は、イラン赤新月社のスタッフやボランティアが、自身や家族の身に危険が及ぶ不安を抱えながらも、日々現場に立ち続けていると述べました。イスラム教徒にとって聖なるラマダン月の間も、断食をしながら早朝から夜遅くまで活動し、紛争が始まった初日から救援を続けてきたといいます。
 一方で、その代償は大きく、紛争の激化以降、救助隊員1人が命を落とし、14人が負傷しました。がれきの下から自らの家族の遺体を発見した救助隊員もおり、人道支援に携わる人びとが、計り知れない悲しみを抱えながら人命救助にあたっている現実が明かされました。
 連盟はイラン赤新月社の要請に基づき、災害救援緊急資金(DREF)および緊急アピールを通じて、現地の救援活動を支援しています。マルティネス代表は、困難な状況に置かれているイランの人びと、そして現地で活動する人道支援の担い手への連帯と支援を、国際社会に強く呼びかけました。

※その後、3月27日および3月31日にも、イラン赤新月社のボランティア2人が人道支援活動に従事している最中に殉職し、殉職者は3人になったことが新たに報告されています。

レバノン:連盟広報官による報告

 同記者会見では、連盟のトマソ・デラ・ロンガ広報官が、急速に深刻化するレバノンの人道状況と、それに対応するレバノン赤十字社および連盟の支援について報告しました。
 現在、レバノン赤十字社は同国内最大の緊急医療サービス提供者として、救急車による搬送をはじめ、血液事業、巡回診療チームによる医療支援、避難所での支援物資の配付など、人びとのいのちを守る活動を最前線で続けています。
 一方、特に夜間の活動において、ボランティアが極めて高い危険にさらされていることが大きな課題となっています。負傷者を安全に搬送する責任を負いながら、自らの身の安全にも注意を払わなければならず、強い緊張と大きなプレッシャーの中で活動が続けられています。すでに救急搬送中に1名のボランティアが命を落とし、他にも複数名が負傷するという痛ましい出来事が起きています。
 連盟は、災害救援緊急資金(DREF)からの資金拠出やすでに立ち上がっていた人道危機に対する緊急アピールの延長を通じて、レバノン赤十字社の活動継続を支援しています。デラ・ロンガ広報官は、国際社会に対し、レバノンの人びと、そして危険の中で人命救助にあたる赤十字ボランティアへの継続的な支援と連帯を呼びかけました。

【2026年3月27日開催の国連記者会見の録画はこちら(英語)】

イスラエル:サイレンの中で守られた新しい命

 イスラエル南部での緊急対応の最中、イスラエル・ダビデの赤盾社(イスラエルの赤十字社)の救急救命士で、5人の父親でもあるエラド・パスさんは、路上で自ら取り上げた新生児を腕に抱いていました(右下写真)。
 赤ちゃんは生まれた直後、呼吸をしていない状態でしたが、パスさんはすぐに蘇生処置を行いました。その間も周囲ではサイレンが鳴り響いていました。警報が続く中、彼は新生児を守るため、自らの体で赤ちゃんを覆いました。
 「一方ではサイレンの音と先の見えない不安、もう一方では生まれたばかりの赤ちゃん――それは命と希望を象徴する、強い対比でした」とパスさんは語っています。
 現在、母子ともに無事で、容体は安定しているとのことです。
 イスラエル・ダビデの赤盾社は、2月28日から24時間態勢で救急対応を行い、3月31日までに1,710人の負傷者への医療対応を行いました。

20260402-d970f88c9b24564e07aa53ac1df8aa376fa8f330.jpg©イスラエル・ダビデの赤盾社

戦争においても守られるべきルールがあります

 すべての紛争当事者は、立場のいかんを問わず、いかなる場合においても、国際人道法を遵守しなければなりません。国際人道法の遵守は、市民のいのちと尊厳を守り、被害を最小限に抑えるために不可欠です。
 赤十字・赤新月の要員や施設、車両などの輸送手段だけでなく、その他の医療要員、医療施設、救急車、人道支援要員、民間救急組織などを攻撃することは、国際人道法の重大な違反であり、人道支援活動が妨げられることは、本来こうした活動によって助かる生命が助からなくなることを意味します。
 日本赤十字社は、国際赤十字の一員として、国際人道法の遵守を強く訴えるとともに、現地のニーズに基づき、現地赤十字・赤新月社と連携しながら支援を続けていきます。

「イラン及び周辺国人道危機救援金」

受付期間:令和8(2026)年3月16日(月)~令和8(2026)年5月29日(金)
使途:連盟、ICRC、各国赤十字社・赤新月社および日本赤十字社が中立・公平・独立の立場を堅持しながら行う、イランおよび紛争の影響を受ける周辺国その他の国々における被災された方への救援・復興支援活動などに充てられます。

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