カザフスタン:極寒の村の子どもたちに毛布4,000枚を寄贈 ~オンワード・グリーン・キャンペーン連携プログラム~
日本からの毛布を大切に抱えて家に帰る子どもたち ©日本赤十字社
株式会社オンワードホールディングス(以下、「オンワード」)と日本赤十字社(以下、「日赤」)は、2011年よりアジア地域内の各地で、災害被災者や社会的に弱い立場に置かれた人々に暖かい毛布をお届けするパートナーシップ事業を実施しています。
配布される毛布は、オンワードの衣料品回収活動「オンワード・グリーン・キャンペーン」を通じて、お客さまが店舗にお持ちくださった同社製の使用済み衣料品から糸を作り、リサイクルして生産されたものです。不要となった衣料品を毛布に再生することで、環境持続性の確保と人道支援を両立させるSDGsの目標に沿った先進的なプログラムです。今回は15回目の寄贈にあたり、昨年度のタジキスタンに続いて、特に冬の寒さが厳しいカザフスタン共和国(以下、「カザフスタン」)において、毛布4,000枚を配布することになりました。これに合わせて、10月19日から23日にかけてオンワードの代表がカザフスタン赤新月社(以下、「カザフスタン赤」)を訪れ、同社への毛布の寄贈と、子どもたちへの配布に立ち会いました。今回は、その様子をご報告します。
厳しい寒さと自然災害に見舞われるカザフスタン
カザフスタンは中央アジアの北部に位置し、中国、ロシア、キルギスなど5カ国と国境を接する内陸国です。あまり知られていませんが、その国土は約272万平方キロメートルと、世界で9番目に広い面積を有します(日本の約7倍)。その一方で、国土の大部分が山岳地帯や荒れ地、砂漠など、人が居住するには厳しい環境にあり、人口は日本のおよそ6分の1にとどまります。
降雨量が少ないことから大地は乾燥し、夏の気温は30度以上に達する一方、冬にはマイナス40度近くに下がるなど、寒暖の差が著しいことが特徴です。また、水資源が少ないにもかかわらず、近年は気候変動の影響で、80年に一度と言われる規模の洪水が毎年のように発生し、家や農地が流出するなど、甚大な被害が広がっています。
大地が凍るカザフスタンの冬は長く厳しい ©日本赤十字社
カザフスタンの経済は、石油や天然ガス、鉱物などの天然資源に支えられており、中央アジア地域では高い水準を誇ります。アスタナやアルマトイなどの大都市では、大型のショッピングセンターが次々に建設され、都市部に人口が集中しています。
しかしながら、華やかな経済発展の裏側で、農村部に住む貧困層など、社会的に弱い立場に置かれた人々にとって、冬の寒さは生命にかかわる脅威です。家を暖めるための燃料は価格が上がり、家計を圧迫しています。また、自家用車を持たない世帯にとって、厳冬期に食料等を入手することは困難になります。そこで、カザフスタン赤は、人々が冬を安全に乗り切るための生活物資の配布などを続けてきました。
雪が降る前に、支援を待つ人々に暖かい毛布を(サライン村)
こうした背景から、オンワードと日赤は、カザフスタン赤の厳冬期対策を支援することを決定。同社への毛布4,000枚の寄贈に合わせて、オンワードの代表2名が日赤職員とともに現地を訪問しました。
初めに訪れたサライン村は、中部の主要都市カラガンダから車で30分ほど離れた郊外にあります。整然とした街並みを出ると、辺りには広大な荒れ地が広がります。木々は落葉し、寒風の吹く中、小さな農家が点在します。村の中心部にある福祉センターには、主に心身に障がいのある子どもたちとその家族が集まっていました。
今回の毛布の寄贈に先立ち、カザフスタン赤は支援の対象となる家族の選定を行いました。その基準は、経済的に困窮する世帯、単身親世帯、障がいのあるお子さんのいる世帯、多子世帯などです。いずれも、地域の行政機関と調整を図り、公平性に十分に配慮しながら決定しました。
寄贈式では、オンワードの西森執行役員から、日本の人々の思いが詰まった毛布であることが説明され、およそ40人の子どもたち一人一人に手渡しで配布しました。
キリル君は、お母さんのリュデゥミラさんと一緒に毛布を受け取りに来ました。リュデゥミラさんは「障がいのある息子の薬にもお金がかかり、6人いる子どもたちに十分な服を用意することができません。毛布は、子どもたちへの素晴らしい支援です。日本の皆さんが私たちを支えてくださっていることが心強く、もう一人ではないと感じられて幸せです」と笑顔を向けてくれました。
お母さんと一緒に毛布を受け取るキリル君 ©日本赤十字社
一枚の毛布が家族の笑顔に(ヴォツネセンカ村)
続けて訪問したヴォツネセンカ村は、北部アクモラ州の小さな農村です。周囲には小麦畑などが広がりますが、人々の生活は決して豊かとは言えません。住民が自力で建てた家はどれも小さく質素で、村の職員からは、老朽化による漏水や倒壊のリスクが課題であるとの説明がありました。
村の学校でダンスの歓迎を受けた後、特に支援が必要な子どもたちに毛布を配布しました。また、未就学児のいる家族にもカザフスタン赤のボランティアと共に戸別訪問して、毛布をお届けしました。村に住むヴァレンティーナさんも、その一人です。「夫と離婚し、わずかな収入で4人の息子を育てるのは本当に大変です。燃料費が高く、家の中は寒くなりますが、子どもたち全員が毛布を手にすることができて、とても助かりました。海外の皆さまから支援を頂くのは初めての経験で、本当に感激しています。」
オンワードの西森執行役員から一人一人に毛布をお渡しした ©日本赤十字社
早速新しい毛布の感触を確かめる親子 ©日本赤十字社
村の住民の暮らしは決して豊かとは言えない ©日本赤十字社
4人の子どもを育てるヴァレンティーナさん ©日本赤十字社
日本の人々の思いを、世界各地に届けたい
カザフスタン赤は、引き続きカラガンダ州、アクモラ州などを中心に、ボランティアなどの主導で4,000枚の毛布を配布する予定です。事業を担当するカザフスタン赤のマジッド保健・公衆衛生部長は「今回の毛布の支援は、冬の到来を前に時宜にかなったうれしいプレゼントです。カザフスタンは豊かなイメージが持たれているかもしれませんが、人道支援を必要とする人々が大勢います。この活動にご協力くださった日本の皆さまに心から感謝します」と述べています。
また、オンワードの西森執行役員は現地での配布を振り返り、次のように語りました。「訪問した村々の暮らしを目の当たりにし、カザフスタンにおける都市部と農村部の格差を改めて実感しました。子どもたちが毛布の到着を心待ちにしていたと聞き、厳しい冬を少しでも暖かく過ごすためのお手伝いができればと思いました。毛布の寄贈は今回で15回目となりますが、『オンワード・グリーン・キャンペーン』にご参加くださった日本の皆さまの思いをしっかりとお預かりし、今後も支援の届きにくい国や地域の方々にお届けしていきたいと考えています。」
日本赤十字社は、今後もオンワードと連携して、日本の皆さまと支援を必要とする人々の思いをつなぐ支援を継続していきます。