【速報】パキスタン大規模洪水:死者1,000人を超える 日本赤十字社は海外救援金の募集を開始

 2025年6月末以降、気候変動によって激化したモンスーンの豪雨により、パキスタン全土で大規模な洪水が発生し、これまでに少なくとも1,002人の死者と、1,000人以上の負傷者が報告されています(9月17日時点、現地当局[1])。被災者数は690万人以上、うち290万人が避難を余儀なくされています(9月16日時点、OCHA[2])。
 降り続く雨により、インダス川の主要な支流には、予測できなかった量の水流が流入しており、洪水の影響は拡大し続けています。特にカイバル・パクトゥンクワ州とパンジャーブ州で甚大な被害が発生しており、826日にはパキスタン政府により国家非常事態が宣言されました。

[1] ypyTxooFS9DeOYJOc7Lq.pdf
[2] Pakistan: Monsoon Floods 2025 Flash Update #9 (As of 16 September 2025) - Pakistan | ReliefWeb

画像 最も被害の大きいカイバル・パクトゥンクワ州にたどり着いたパキスタン赤新月社ボランティア©PRCS

 激しい雨と鉄砲水により、村々は浸水し、道路や橋は破壊され、多くの家屋や教育・医療施設も被害を受け、生活に必要な基本的サービスへのアクセスが著しく制限されています。また、衛生環境の悪化により、コレラやマラリア、デング熱などの感染症のリスクが高まっています。
 米、綿花、トウモロコシなどの農作物や家畜の損失も深刻で、食料不安や価格高騰への影響も懸念されています。多くの被災者は小規模農家であり、家も畑も水没し、生計手段を失っています。
 避難者は仮設シェルターや避難所の厳しい環境下で生活を送っており、秋冬の到来が近づく中、さらなる健康リスクが懸念されます。また、特に女性、子ども、高齢者、障がい者、移民など、支援へのアクセスが困難な人びとは深刻な影響を受けています。文化的・社会的な制約により、女性の支援アクセスが制限され、プライバシーの確保が難しい混雑した避難所ではジェンダーに基づく暴力(GBV)のリスクも高まっています。
 パキスタンでは、2022年に国土の約3分の1が水没する大規模な洪水災害を経験しており、現在も復旧・復興の過程にあります。母子保健のぜい弱性や予防接種率の低さ、貧困、慢性的な栄養不良といった背景が、人びとが災害に対応する力を著しく低下させており、迅速かつ包括的な人道支援の展開が急務となっています。

画像 浸水が続く地域で、被災した人びとの避難誘導を行うパキスタン赤新月社ボランティア©PRCS

最前線で救援活動を行うパキスタン赤新月社

 パキスタン赤新月社は、6月10日に本社と4州支部に災害対策本部(Emergency Operations Centre)を設置し、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)や赤十字国際委員会(以下、ICRC)、現地に拠点を持つ各国赤十字・赤新月社の協力を得ながら、最も被害の大きなパンジャーブ州やカイバル・パクトゥンクワ州、ギルギット・バルティスタン州などにおいて、救援活動を展開しています。
 これまでに、全国62支部から訓練されたボランティアを動員し、各地で食料や安全な水の提供、蚊帳や給水用ポリタンク、衛生キットなどの救援物資の配付を行うとともに、シェルター支援、医療および心理社会的支援などの救援活動を実施しています。

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被災した村の住民への聞き取り調査を実施©PRCS

20250918-ed4c670b148ccf0d1d882aaa051fcd13feea95e2.jpg被災した人びとに温かい食事と飲料水を配付©PRCS

連盟は緊急救援アピールを発出、日赤は500万円を支援

 連盟は、パキスタン赤新月社および各国赤十字・赤新月社と密に連携し、状況モニタリングやニーズ把握に努め、国際赤十字・赤新月運動の救援活動の調整を行っています。
 8月19日、連盟は緊急対応のためパキスタン赤新月社に対して、10万スイスフラン(約2,000万円)を迅速に送金しました。その後8月23日には、パキスタン赤新月社の要請を受けて、被害の大きい地域の被災者43,200人を支援するため、災害救援緊急資金(DREF)から100万スイスフラン(約2億円)の拠出を決定しました。さらに被害の拡大に伴い、8月30日に1,600万スイスフラン(約29億円)の緊急救援アピールも発出し、日本赤十字社も同アピールに対し、500万円の資金援助を行いました。
 この緊急救援アピールは、最も深刻な被害を受けている5州の地域の被災者22万5,000人を対象としたものであり、シェルターや食料・生活必需品の確保など多目的に使える現金給付や生計支援、巡回診療チームなどによる保健医療支援や心理社会的支援、給水・衛生支援、地域防災・レジリエンス(回復力)強化、離散家族支援などの緊急救援および復興支援を行うことを目的としています。

 ICRCは1947年から同国でパキスタン赤新月社や関係当局と密に連携しながら活動を行っています。今回の洪水被害を受けて、被災地での食料配付や、パキスタン赤新月社の緊急対応チームの派遣に関する支援を行うなど、現地の救援活動を支えています。

「2025年パキスタン洪水救援金」の募集を開始

 このような現地の状況を受け、日本赤十字社は本日より「2025年パキスタン洪水救援金」の募集を開始しました。お寄せいただいたご寄付は、連盟、ICRC、パキスタン赤新月社および日本赤十字社が行う救援・復興支援活動、防災・減災活動などに充てられます。
 皆さまの温かいご支援とご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。

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