100年以上続く国際人道基金「昭憲皇太后基金」の配分決定~約8,475万円を17カ国に~

赤十字国際委員会と国際赤十字・赤新月社連盟(以下、「連盟」)で構成される昭憲皇太后基金合同管理委員会により、100年以上続く国際人道基金※1である「昭憲皇太后基金」の104回目となる配分先が発表されました。
 
※1 昭憲皇太后基金は平時の国際支援を目的とした国際人道基金であり、現在も当時と同様の形で支援が継続している最古のものである(日本赤十字社調べ)

■昭憲皇太后基金(The Empress Shôken Fund)とは?

画像 ©日本赤十字社

昭憲皇太后(明治天皇の皇后)が、1912年(明治45年)の赤十字国際会議に際し、各国赤十字社の平時事業にと、ご寄付された10万円(現在の35千万円相当)を元に創設されました。

当時、戦時救護を主に行っていた赤十字において、自然災害における救護活動や疾病予防等の平時活動を奨励するための基金設立は画期的なことであり、世界における国際開発援助の先駆けとなりました。現在では、平時における人道支援活動を対象とした、100年以上継続している世界最古の国際人道基金として世界で広く知られています。

同基金は、国際赤十字の中に設けられた合同管理委員会によって運営され、日本の皇室をはじめとする日本からの寄付金によって支えられており、原資を取り崩すことなく、そこから得られる利子が世界の赤十字社の活動に配分されます。

毎年、昭憲皇太后のご命日にあたる411日ごろに配分先が発表され、今年は、104回目の配分となります。

 

■104回目の配分について

画像 構成段階の昭憲皇太后基金定款原稿 (赤十字WEBミュージアムより)

今回は、17カ国の赤十字・赤新月社に対して総額8,475万円相当(502,578スイスフラン※2)が配分されます。 

同基金の配分額は、第1回の1921年(大正10年)から104年間で、累計28億円相当(16,927,710スイスフラン※2)に換算され、配分先は175の国と地域にのぼります。 

2 1スイスフラン=168.64円(令和7年4月3日レート)  

◆◇◆◇ 第104回 昭憲皇太后基金支援事業 ◆◇◆◇

1. 献血や救急法

(1) フィジー赤十字社:約506万円(30,000スイスフラン)
  献血管理アプリの導入
  国内初の献血管理アプリを導入し、献血者の管理・広報を強化することで、安定した血液供給を目指します。

(2) スロバキア赤十字社:約506万円(30,000スイスフラン)
  オンライン救急法学習プログラムの普及
  救急法のオンライン学習ツールを導入し、誰もが手軽に学べる環境を提供することで、国民の救急法のスキル向上を支援します。

2. 防災・災害対応

(1) アンゴラ赤十字社:約506万円(30,000スイスフラン)
  モザンビーク赤十字社:約506万円(30,000スイスフラン)
  地域主導による災害対応体制の強化
  アンゴラ赤十字社とモザンビーク赤十字社が共同で災害対応の管理体制を整備し、研修を実施するなどお互いのリソースを共有することで、災害救護体制を強化します。

(2) トリニダード・トバゴ赤十字社:約506万円(30,000スイスフラン)
  ドローンとGIS(地理情報システム)を活用した災害リスクマップの作成
  ドローンとGIS(地理情報システム)を活用して災害リスクマップを作成し、研修を実施することで、より迅速かつ正確な災害対応を可能にし、地域の防災力の向上を図ります。

3. 保健・衛生

(1) アフガニスタン赤新月社:約489万円(29,000スイスフラン)
  メンタルヘルス施設における結核・HIV検診の実施
  偏見によって保健サービスから排除されがちな結核やHIVの検診をアフガニスタン赤新月社のメンタルヘルス施設において実施し、精神疾患と感染症について包括的なサービスを提供します。

(2) アルゼンチン赤十字社:約506万円(30,000スイスフラン)
  青少年のメンタルヘルスケアとギャンブル依存防止
  10代の若者の間でオンライン・ギャンブル依存症が急増する中、アルゼンチン初の全国規模の調査と啓発活動を実施することで、早期介入と教育を通じ、青少年のギャンブル依存を防ぎます。

(3) グアテマラ赤十字社:約506万円(30,000スイスフラン)
  ボランティアを対象としたデング熱予防対策の実施
  デング熱の感染拡大を受け、ボランティアを対象に予防の方法にかかる研修を実施することで、地域の衛生改善や啓発活動を主導します。

(4) ソマリア赤新月社:約506万円(30,000スイスフラン)
  ボランティアが運営する石けん工場設立による衛生環境の改善
  手頃な価格の衛生用品を現地で生産するために、地域コミュニティーに根付いたボランティア運営の石けん工場を設立し、給水衛生プログラムの提供も含めて地域の衛生環境を改善します。

4. 青少年の参画とエンパワーメント

(1) ボスニア・ヘルツェゴビナ赤十字社:約413万円(24,490スイスフラン)
  気候変動対策を担う青少年大使の育成
  気候変動対策を担う青少年大使に対して、実践的な研修とボランティア活動を通じ、気候変動対策の学習を体系化します。

(2) ヨルダン赤新月社:約506万円(30,000スイスフラン)
  デジタル技術を活用した青少年ボランティア支援
  青少年向けのボランティア活動センターを開設し、デジタル管理システムを導入することで、地域社会との連携を強化し、持続的な青少年活動を支援します。

(3) スロベニア赤十字社:約506万円(30,000スイスフラン)
  青少年主導の気候変動対策の促進
  気候変動対策について体系化されたカリキュラムを、デジタル・ツールなどを活用することで、若者にとって具体的かつ魅力的なインタラクティブな学習プログラムにして青少年の関心を促します。

5. 生計・経済力強化

(1) エクアドル赤十字社:約506万円(30,000スイスフラン)
  ゲーム形式で学べる水耕栽培による農業支援
  土地と水不足に加え、食料不安と若者の失業が深刻化しているエクアドルの農村部において、ゲーム形式により若者が楽しく身近なものとして水耕栽培を学び、持続可能な農業の普及を目指します。

(2) モロッコ赤新月社:約506万円(30,000スイスフラン)
  農村部に住む女性のための職業技能訓練の実施
  高い失業率に直面している農村部に住む女性向けに、裁縫やマーケティング技術を提供する地域研修施設を建設し、職業訓練を通じて持続可能な経済的自立支援を目指します。

6. 気候変動対策・環境保全

(1) ガーナ赤十字社:約497万円(29,500スイスフラン)
  持続可能な農業の普及による女性の経済活動への参画促進
  気候変動の影響を受けて経済的な機会を比較的得づらい女性が主導し、移動式ソーラーかんがいシステム、堆肥化、植林など気候変動に強い持続可能な農業に取り組むことで、女性の経済活動への参画を促進します。

(2) コンゴ民主共和国赤十字社:約504万円(29,900スイスフラン)
  学校を拠点とした植林と環境教育の推進
  学校を拠点に植林活動や環境教育を実施し、若者の意識向上を促すことで、持続可能な環境保護活動を推進します。

(3) ザンビア赤十字社:約500万円(29,688スイスフラン)
  若者主導の持続可能な環境活動への支援
  急速な都市化と廃棄物の不十分な管理によるリスクがもたらされている地域で、若者主導でリサイクルや堆肥化などの廃棄物管理に取り組むことで、持続可能な環境活動と若者の経済的自立を支援します。

昭憲皇太后基金は、世界の赤十字・赤新月社そして赤十字運動全体に良い影響力をもたらす新鮮かつ革新的なプロジェクトを生み出すためにこれからも用いられます。

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写真:2023年同基金配分先のひとつ。青少年ボランティア主導の気候変動対策において植林に取り組んでいる様子。
   ©ブルンジ赤十字社

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