保健分野における人道支援研修(H.E.L.P.)を開催

 9月4日(月)から9月15日(金)まで、日本赤十字看護大学主催、赤十字国際委員会及び日本赤十字社共催で保健分野における人道支援研修「H.E.L.P.1 in Tokyo 2023」 を開催しました。

"The Health Emergency in Large Population was held by Japanese Red Cross Society that collaborate with the International Committee of the Red Cross (ICRC) and International Federation of Red Cross and Red Crescent Societies(IFRC) and Japanese Red Cross College of Nursing."

ウクライナ・トルコ・シリアの赤十字職員が来日し、研修に参加

 武力紛争や自然災害等の緊急時に人道支援に携わっているアジア大洋州地域や欧州などの12か国20名の参加者が、実際の支援活動中に直面するであろう様々な課題を解決するために必要な知識や公衆衛生などの知識、倫理的行動規範を学びました。参加者の中には、今まさにウクライナ人道危機やトルコ・シリア地震において活動している現地の赤十字・赤新月社職員もいました。

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世界人道支援の最前線から ~研修参加者の声~ 

■ シリア赤新月社 ヒンド・バクール医師(Dr. Hind Bakour)

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 ダマスカス大学卒(専攻:医学、公衆衛生学)、医師の資格を持つ。WHOでマラリアや感染症対応、慢性疾患への対応や、シリア保健省での様々な保健医療事業に携わる。2014年、シリア赤新月社入社。ダマスカス支部で巡回診療支援を担当。2017年~シリア赤新月社のCBHFA2コーディネーターとして勤務。トルコ・シリア地震では、避難者への救援物資の配布、医療のサポートが必要な被災者を診療所等につなげる活動、避難所の清掃や教育活動をボランティアと共に実施。

○H.E.L.P.研修に参加しようと思った理由は何ですか?

 シリア赤新月社の地域医療プログラムのコーディネーターとして、私は地域社会が対応計画の大黒柱でなければならないと信じています。とりわけ、今回の研修で学んだ経験を活かして、地域社会が緊急事態への備えに主体的に取り組むことができるように、私自身の知識を向上させたいと考えて参加しました。さらに、研修で得た経験を医療サービス部門の同僚にも伝えていくことで、医療サービス部門全体としての対応能力の向上にも寄与したい理由です。

"As a coordinator of the Community Health Program at the Syrian Arab Red Crescent, I believe that communities must be a key pillar of the response plan. Therefore, I want to improve my knowledge so that I can involve communities in preparing for an emergency, by benefiting from the existing experiences in training, especially the Japanese Red Cross, and this will reflect positively on the Syrian Arab Red Crescent’s response plan. On the other hand, I will pass on the experiences I gained from it to my colleagues in the medical service department to improve their knowlege too."

○今後の担当業務にどう活かしたいですか?

 研修で学んだことを、緊急対応時において、保健分野やその他全ての分野でも活かします。地域と医療提供体制の両レベルにおいて整合性のある保健分野における緊急時対応計画を策定しながら、緊急対応に従事するスタッフやボランティアの対応能力の向上と相乗効果をもたらせ、シリア赤新月社の対応計画に積極的に取り入れます。

"An integrated health response in emergency plan will be developed at two levels, the community , and the medical services level and linked to each other after capacity building for the staff and volunteers involved in the response."

○日本の皆さんへのメッセージをお願いします

 感謝しています。 この H.E.L.P.研修は非常に重要であり、私は人道の精神が世界で最も重要なものだと信じています。 日本赤十字社が開催した研修に参加できたこと、日本から私たちを支援して下さる方々に、言葉では言い表せないほど感謝しています。 日本赤十字社は、人道支援活動においてその先駆的な活動からロールモデルだと考えており、シリア赤新月社への支援は先駆的なものでした。本当に有難いです。

"I am thankful. This H.E.L.P. training is very important, I believe humanity is the most important thing in the world. I cannot express in words how grateful I am to be part of the training carried out by the Japanese Red Cross Society and those who support us from Japan. The Japanese Red Cross is considered a role model for its pioneering work in the humanitarian field, and the support it provided to the Syrian Arab Red Crescent was pioneering."

■ ウクライナ赤十字社 イリーナ・マルティニュウクさん(Ms. Iryna Martyniuk)

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 ウクライナ・リヴィウ出身。リヴィウ工科大学卒業後、教育関連企業などで事業管理やマネジメントを担当し、20222月のウクライナ人道危機以降、被災した人々のための人道支援活動を志し、ウクライナ赤十字社に入社。現在、同赤十字社本社で、巡回診療チームの西部地域マネージャーを務め、医療が必要な人々に支援を届けられるよう巡回診療チームの迅速な配備に従事

○H.E.L.P.研修・赤十字社に参加しようと思った理由は何ですか?

 ウクライナは変わってしまいました。この人道危機から、ウクライナの人々や社会、国をサポートしたかったのでウクライナ赤十字社で働くことにしました。緊急救援の仕組みを理解し、課題により適切に対応する力が必要と考え、幅広い保健の知識を身につけたかったので、今回の研修に参加することができとても感謝しています。

"Ukraine has been changed and I decided to work for the Ukrainian Red Cross because I wanted to support the Ukrainian people, society and country out of this humanitarian crisis. I am very grateful to have been able to participate in this training, as I believe that it is necessary to acquire a broad health knowledge in order to understand how emergency relief works and to be able to respond more appropriately to problems."

○今後の担当業務にどう活かしたいですか?

 研修後は、ウクライナ人道危機における、人道対応計画の作成に参画する予定です。キーウにある本社の巡回診療チームで働いていますが、この研修で学んだことを同僚にも伝えたいです。アセスメントの大切さ、どの種類のアセスメントが適切かを考え、自分の部署だけでなく、組織横断的に他の部門のことを知ることが大切となります。全ての部門で活かしていきたいです。

"After this training I will be participating in the development of Red Cross' humanitarian response plan to the humanitarian crisis in Ukraine. It is very important to consider how important assessment is. And what kind of assessments are appropriate. I would like to apply all of this to the department."

○日本の皆さんへのメッセージをお願いします

 ウクライナの状況は日々変化しています。皆さんからの温かい支援のお陰で、助けが必要なウクライナの人々の支援が継続できています。有難うございます。

"Ukraine is in difficult situation now. But thanks to your warm support, we can continue to support Ukraine people. Thank you very much."

■ トルコ赤新月社 メルベ・アイ・クラビホオラルテさん(Ms. Merve Ay Clavijoolarte)

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 トルコ・ブルサ出身。2019年、トルコ赤新月社入社。公衆衛生・心理社会サービス部門の緊急医療支援ユニット長を経て、現在は保健部門のユニット長として、新型コロナウイルス感染症対応や国内の医療事業、国内災害における公衆衛生関連事業の調整を担当。2022年にはパキスタンで、国際赤十字・赤新月社連盟の緊急時公衆衛生コーディネーターとして洪水対応に従事。今年2月のトルコ・シリア地震では、緊急対応として保健、水・衛生部門、心理社会的支援等の調整業務や現地でのニーズ調査、復興計画のための調査等に従事。

○H.E.L.P.研修に参加しようと思った理由は何ですか?

 トルコ赤新月社の一員として、H.E.L.P.研修で実践的なツールを学び、現在の地震対応だけでなく、将来の地震対応に活かしたいからです。併せて、トルコ赤新月社の緊急時の医療支援体制の発展に貢献したいと考えています。

"Because I’ve wanted to learn practical tools from this training and use them for this earthquake response as well as for the future disasters and emergencies as part of Turkish Red Crescent Society. I would like to contribute to the improvement of the Turkish Red Crescent Society's emergency health management syste."

○今後の担当業務にどう活かそうとしていますか?

 H.E.L.P.研修を受講して学んだ観点から、緊急時における公衆衛生に関する現在の緊急対応システムを振り返って評価し、向上させていきたいです。

"I would like to evaluate our current response system regarding public health in emergencies with the perspective I gained in this H.E.L.P. course and work to improve it."

○日本の皆さんへのメッセージをお願いします

 日本もまた地震大国です。私はその点からも、202326日の地震で私たちが経験した痛みを、日本の皆さんとは分かち合えることができると感じています。皆さんからの支援がどれほど力強く、支えになったか。とても素晴らしいことだと思います。日本赤十字社は、発災直後から明確に力強く連帯感を示してくれました。日本の皆さんと日本赤十字社の皆さんの支援のお陰で、地震の被害にあった多くの人々に支援を届け続けることができていて、本当に感謝しています。

"Japan is also earthquake-ridden country. From that point of view, I feel Japanese people share the pain we experienced due to the earthquake on the February 6th, 2023. I think it's amazing how powerful and supportive they have been. Japanese Red Cross conveyed this solidarity very clearly and strongly since the beginning. With the support from the Japanese people and Japanese Red Crescent, we have been able to reach many people affected by the earthquake and we are very grateful."

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      地域の病院で医師と話すイリーナさん ©ウクライナ赤十字社     アレッポの避難所でCBHFA活動中のヒンドさん
                                     ©シリア赤新月社

2023年トルコ・シリア地震救援について、詳しくはこちら
ウクライナ人道危機救援について、詳しくはこちら

[1] H.E.L.P.(Health Emergency in Large Populations)1986年に赤十字国際委員会が世界保健機関、ジュネーブ大学と連携して作ったアカデミアと人道支援の現場をつなぐ研修コース。現在、世界8か国で開催しています。対象者は、人道支援の現場での活動経験のある方で、政府機関、大学、赤十字、国際機関、NGO等から広く参加しています。

[2] CBHFA(Community Based Health and First Aid)赤十字が開発した地域住民参加型保健活動。地域ごとの異なる保健課題(衛生環境はどうか、どんな食物から栄養を取るか、母子の健康を守るために何が必要か、出血した時の安全な対応等)について、地域で活動するボランティアと一緒に地域住民に伝えていくもの。地域の人々が自らの力で健康を守り、将来にわたって持続的に向上させていくアプローチ。

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