【速報11】トルコ・シリア地震:日赤職員からの現地レポート(トルコ)

 2月6日にトルコ・シリアの国境付近で発生した地震から3週間が経過しました。被災地の状況は日々刻々として変化しています。今回は、トルコの首都アンカラで213日より活動している日本赤十字社の芳原みなみ職員に、被災地の今の様子と今後必要とされる支援について聞き取りました。どうぞお読みください。

■トルコの人びとの活動を応援してほしい

〇 被災地の様子を教えて下さい。

 地震の発生から3週間が経過し、道路は車が通れるようになり、片付いてきた場所もあります。一方で、道路の脇に瓦礫の山が積み上げられ、まだ粉塵が舞っている場所もあります。朝晩の気温は氷点下になり、私も夜はテントで寝ていましたがとても寒いです。また、余震が続いており、私の滞在中にも小さな揺れを感じました。それでも日常を取り戻そうとする人びとの姿がある中、私が首都アンカラに戻った日の夜に、再び大きな地震が被災地を襲いました。

〇 被災された方がたはどのような様子ですか?

 被災者の方がたを一括りにすることはできませんが、私が、カフラマンマラシュ市内の24棟あったマンションがすべて崩壊した現場を訪れたときには、瓦礫の山から何かを探す人たちがいました。彼らは、現場の片隅に並べてあるアルバムや身分証、小物入れ、本などを手に取りながら、何かの痕跡を探しているように見えました。

 一方でスタジアムに設営されたキャンプで暮らす人びとの中には、サッカーやバトミントンをしたりしている人もいて、日常を取り戻そうとしているように見えました。

画像 倒壊した家屋近くに並べられたアルバムや本ⓒトルコ赤新月社

〇 現地では何が必要とされていますか?

 被災者の方がたは、着の身着のまま逃れた方もいることから、安全が保たれ、誰もが安心して、そして暖かく過ごすことのできる冬用のテントや食事がとても必要です。

 また、仕事を失ってしまった方も多いので、現金給付の支援が求められています。

 水や食べ物、衣服、衛生用品などある程度の生活用品は、トルコ赤新月社(注)(以下、「トルコ赤」)やトルコ政府、NGOを始め、トルコ国内から届けられる物資などで充足してきています。キャンプ(避難所)の中にも被災者が自由に必要なものを取りに来られるように「ソーシャルマーケット」と呼ばれる専用のテントが設けられています。

 一方で、被災者一人一人、家族ごとに事情も異なるので、特に時間が経過してくると、必要なものの購入や必要なサービスにアクセスするために、同じ物資を配るよりも現金の給付が大切になってきます。

(注)「赤新月社」は主にイスラム圏における赤十字社のことです。

画像 トルコ赤新月社の職員から救援活動の説明を受ける芳原職員(左端)ⓒトルコ赤新月社

〇 トルコ赤新月社はどのような活動をしていますか?

 トルコ赤は発災直後から救援活動を開始し、被害を受けた10州で5000人以上のスタッフとボランティアを動員して、特に食料の配付などを行っています。

 発災から15日間で、実に6,500万食を被災者に提供、つまり1日当たり400万食以上の温かい食事を準備し、キッチンカーで被災地を回って配布したり、キッチンカーまで取りに来られない人には自宅・避難先まで届けたりといったサービスを行っています。10パターンのメニューを10日間の日替わりで回していて、13食、カロリーや栄養といった健康面も考慮した温かい食事を提供しています。トルコの人にとっては食事がとても大切とのことでした。

 それ以外にも、テントや毛布の提供、水・衛生分野の支援、血液の安定的な供給、チャイルドフレンドリースペースの運営、巡回診療等を行っています。

〇 特に印象に残ったことはありますか?

 まず、トルコの人びとの力強さを感じました。被災地で支援活動に関わっている人たちの多くは、トルコ赤も含めてトルコ国内の別の地域からボランティアとして来ている人たちです。トルコ赤の巡回診療ユニットで活動していた3人は、それぞれ医師、看護師、放射線技師でしたが、皆イスタンブールから来たと言っていました。大勢のボランティアが志願して被災地に集まり、お互いに協力して活動していました。

 私が赤新月・赤十字のマークを付けていると、通りすがりの方からトルコ語で「ありがとう」と声をかけられることがありました。トルコ赤が発災直後から被災者に寄り添って活動を続け、信頼を得ていることを実感しました。また、「遠いところから来てくれてありがとう」という言葉もいただきました。

〇 今、不足している支援、あるいは今後さらに必要な支援はありますか?

 日本でも医療のことが報道されていると思います。人びとが被災した市街地から、比較的被害の少なかった農村部に避難する中、医療へのアクセスが難しくなっているケースが見られます。トルコ赤は保健省とともにアセスメントを行い、必要な人たちに医療を届けられるよう、巡回診療ユニットを稼働させて病院などが少ない村々を回っています。今後、国際的な医療チームが撤退すると、このような巡回診療のニーズが高まってくるのではないかと思っています。

〇 今、日本の私たちからできることは何でしょうか?

 被災者の方がたに必要な支援を届け続けるために最前線で活動しているトルコ赤のボランティアを始め、トルコの人びとの活動を応援して欲しいです。

 被災地にすぐに駆けつける国際的な支援団体の活動は、やがて地元に引き継がれていきます。地域に根差して、被災者に寄り添って活動を続けていくことができるのは、地元の人たちです。被災された方がたが元の生活を取り戻すまで必要な支援を受けられるよう、そのためにトルコ赤のような現地の団体が息の長い活動をできるように、関心を持ち続けていただきたいです。そして、引き続きのご支援をお願いしたいです。

皆さまからの温かいご支援をお願いします

 日本赤十字社は、今後も国際赤十字の呼び掛けに応えて現地の活動を支援するとともに、誰も取り残さないための支援に全力で取り組みます。日本赤十字社にお寄せいただきましたご寄付は、今も支援を待っておられる方がたのために活用させていただきます。引き続きのご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。

「2023年トルコ・シリア地震救援金」

受付期間: 2023年2月9日(木)~2023年5月31日(水)

使途  : 国際赤十字・赤新月社連盟の緊急救援アピール等に対する資金援助、トルコ赤新月社並びにシリア赤新月社による救援・復興活動、日本赤十字社による救援・復興活動等に使われます。

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