パキスタン洪水:膨大な救援物資が求められる中、 迅速で確実な調達を支える日赤職員


 6月中旬から約2か月間パキスタンで降り続いた豪雨は、同国の半分以上の地域で大規模な洪水被害をもたらしました。人口の15%にも及ぶ3,300万人が被災し、1,700人以上が命を落としたとされる今回の大災害。深刻な水没被害により、多くの人びとが家屋への影響を受け、住む場所を失いました。家屋の被害は11月8日時点で220万戸以上と報告されており、冬を前に早急な家屋修繕や、家族用テントの配付、住宅再建支援等が急がれています。

20221111-492460e391e73163172620d7ba6583c3b020541b.png浸水した道を歩く被災地の人びと©PRCS

 パキスタン赤新月社は早期から国際赤十字や、政府、国連、その他機関とも緊密に連携を取り、全国の膨大なニーズへの対応を続けてきました。これまで国際赤十字のサポートの下、509,204人に緊急の人道支援を届けています(202210月末現在)。

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 被災地における支援活動は、前述のとおり国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)や赤十字国際委員会(ICRC)及び、各国赤十字社が一丸となって展開されています。今回のパキスタン洪水支援において、連盟に派遣中の日赤職員もその一端を担いました。

パキスタン洪水における救援物資の調達を担う日赤職員

 日本赤十字社和歌山医療センターの寺尾のぞみ主事は、本年5月より連盟アジア・大洋州地域事務所ロジスティクス部門の調達担当者として、マレーシア クアラルンプールに派遣されています。主に、各国赤十字社や連盟で必要な物資やサービスを調達し、連盟の緊急救援のオペレーションを支える役割を担っています。

 連盟に派遣されてすぐにパキスタン洪水が発生し、そのまま大規模なオペレーションに携わってきた寺尾主事から、緊急救援における物資調達や、今回のパキスタン洪水支援においての活動内容を聞きました。

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連盟の調達担当者として派遣中の寺尾主事©日本赤十字社

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 世界で大規模な災害が起こった時、連盟は緊急救援アピールと合わせて現地で必要な救援物資のリクエスト表(Mobilization table)を発出します。リクエスト表に基づき各社が備蓄している物資やドナーから寄付を募りますが、寄付以外では賄えない救援物資は、私たち連盟調達チームが現地からの要請に基づき調達することになります。緊急救援時、まさしく今回のパキスタン洪水のような大きなオペレーションの際には、新たに調達すべき救援物資を事業担当とのミーティング等から情報を収集し、迅速に支援を届ける為の準備をしておく必要があります。

 パキスタン洪水では国土3分の1が水没する被害を受けて多くの家屋が損壊したこともあり、家族用(4~5人用)テントの必要数が16,000基と、他の災害時と比べて数が膨大だったため、事前に業者との調整を開始しました。

 10月初旬、調整の結果必要となった4,000基のテント(約2億円相当)を急きょ調達することになりました。通常の調達プロセスでは2~3か月かかるものを数日で完了しなければいけないという状況に苦戦しましたが、事前に業者とのやりとりを密に行っていたため、なんとか14営業日で売買契約を成立させることができました。調整時には、業者との時差の問題、政府の輸入規制や、免税申請の有無の確認等、様々な壁がありましたが、今は手配した4,000基のテントが無事に被災地で配付されることを待ち望んでいます。

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配付されたテントで過ごす被災者©TRCS

 日赤が連盟倉庫に備蓄していたブルーシート2,000枚をパキスタンへ寄贈する際、輸送する様子をクアラルンプール国際空港で視察する機会がありました。日赤の救援物資が飛行機に積み込まれていく様子を目の当たりにし、支援が届くことを実感し感慨深い気持ちになりました。

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パキスタンに向けた救援物資を見送る寺尾主事©日本赤十字社

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パキスタンに向けた救援物資を見送る寺尾主事と連盟職員©日本赤十字社

 緊急救援における調達を行う中で、支援を待つ被災地へ一刻も早く物資を届けたい、けれども、世界中のドナーからの寄付金を扱うため、責任ある確かな支援と丁寧なプロセスが必要という、その「早さと質のバランス」の難しさと重要性を日々感じています。

 パキスタンはこれから厳しい冬を迎えることもあり、越冬支援キット(毛布・テント内を温める暖房などのセット)や毛布など、冬に備えた物資の需要が高まります。今後も、被災地での物資のニーズに迅速に応えられるよう適切なタイミングと方法で調達の準備を進めていきます。

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 被災地へ支援を届けるまでには、被災地で活動する職員や赤十字ボランティアはもちろん、そのプロセスを支える国際赤十字の活動が不可欠です。

 20221022日、パキスタン赤新月社、連盟、ICRCは共同声明を発表し、パキスタン洪水における支援活動を拡大し、連帯をさらに強めていくことを表明しました。

 現地で苦しむ被災者に速やかな人道支援を届けるため、国際赤十字はこれからも一丸となって活動を継続していきます。引き続き皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

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「2022年パキスタン洪水救援金」

受付期間: 2022年9月6日(火)~20221130日(水)

使途  : 国際赤十字・赤新月社連盟とパキスタン赤新月社等が実施する洪水災害の救援・復興活動及びパキスタン・イスラム共和国での赤十字の人道支援に使われます。