アフガニスタン:政変から1年、大地震から2か月 度重なる災害・危機で更に深刻な状況に

 昨年8月15日、タリバンがアフガニスタン全土を掌握するに至った政変から1年が経ちました。現地の治安は落ち着きを見せつつあるものの、この1年以上、さまざまな災害や危機が同国を襲い、長引く紛争、深刻な干ばつ、食料危機、経済危機、新型コロナウイルス感染症の流行などと相まって複合的な人道危機は更に深刻化しています。

 この2か月間に起きた自然災害の影響は特に大きいものでした。6月22日、同国南東部で起きた大地震では、1,000人以上が死亡、60,000世帯の家屋が倒壊または破損しました。また、7月から8月にかけては、季節はずれの大雨により洪水が発生、全国34州のうち20州以上で大きな被害を出し、人道支援ニーズは急速に拡大しました。アフガニスタン赤新月社および国際赤十字はこれら自然災害に対する緊急の救援活動と複合的な危機に対する継続的な支援を続けています。

画像 洪水被害のあった地域を調査するアフガニスタン赤新月社ボランティア

アフガニスタン赤新月社職員が訴える継続的な支援の必要性

 8月15日、アフガニスタン赤新月社社長代理のマウラウィさんはこの1年の状況を振り返り、国際社会へ継続的な支援の必要性を訴えました。

 「この12か月は、国際社会からの制裁により経済危機が更に悪化し、すでに深刻化していた食料危機や貧困、その他の多数の危機と闘っていた何百万人もの国民を追い込む極めて困難な期間でした。国内外のパートナーからの支援は欠かせないもので、本当に感謝しています。何百万人もの人びとが、長期的な人道支援に頼らざるを得ない状況なので、継続的な支援が必要なのです。」

20220822-99adec032eb45cd14fa9fa57247bc9fcd1cb8047.jpg

食料支援を受け笑顔を見せる男性

 アフガニスタン赤新月社は、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)やその他パートナーの支援と、地域に根差したボランティアのネットワークを活かし、これまで15万世帯以上に食料支援を行い、少なくとも15,000世帯に現金給付を行いました。また、140以上の医療施設や巡回診療チームが、アフガニスタン全土で定期的な予防接種を含む一次医療サービスを提供し続けています。

20220822-8e2d3fc6f31fca7bd7df7eee75db5ef8cef23dcc.jpg

診療所で診察を受ける子ども

20220822-9d6cbb18eeb8306337d1cc1567fbbccfea3a51bd.jpg

洪水被害のあった地域で救援物資を配付する様子

最も深刻な人道危機の一つ

 「アフガニスタンの人びとのことを決して忘れてはいけません。現在2,000万人以上が依然として緊急の支援を必要としている最も深刻な人道危機の一つです。」と連盟のアフガニスタン地域代表のネセフォーさんは訴えます。

 連盟はアフガニスタン赤新月社を支援するため、国際社会に9,000万スイスフラン(7月増額改訂)の緊急の資金援助要請を行い、危機の影響を受けた110万人以上の人びとに包括的な人道支援を届けることを計画しています。

 度重なる災害や危機により支援ニーズは拡大し続けておりますが、資金要請額に対する充足率は約30%と十分なものではありません。厳しい冬が近づく中、早期の行動を起こさなければ、脆弱な状況にある人びとの命が失われることも懸念されます。適切なタイミングで支援が届けられるよう赤十字はこれからもアフガニスタンで深刻化する人道危機について広く呼びかけを続けていきます。

画像 干ばつの被害が大きい地域に住む子供たち

国際赤十字に対して1,400万円の追加資金援助を決定

 日本赤十字社は、アフガニスタンでの人道危機の深刻化が続く状況を受け、1,400万円の追加資金援助を決定いたしました。(連盟と赤十字国際委員会(ICRC)に700万円ずつ)

 皆さまの「アフガニスタン人道危機救援金」への温かなご寄付により、追加資金援助が決定できましたこと、心より感謝いたします。人びとのいのちと健康、尊厳を守るため、変わらぬご支援をよろしくお願いいたします。

「アフガニスタン人道危機救援金」

受付期間: 2021922日(水)~2023331日(金)

アフガニスタン地震の発災から2か月、現地の最新状況と支援活動

 様々な人道危機が渦まく中、6月22日にアフガニスタン南東部で起きたマグニチュード5.9の大地震から2か月が経過。この地震により1,036人が命を落とし、2,924人が負傷したことが報告されています。(発災直後の被害状況やアフガニスタン赤新月社の支援活動は【速報】記事を参照ください。)

 被災地では現在も救援活動が展開されています。

画像 地震被害で倒壊したパクティカ州の家屋

○保健・医療支援

被災地では基礎保健施設1か所と簡易保健施設6か所での医療提供のほか、巡回診療チーム6班が緊急の保健・医療支援を実施。発災前から現地で活動していた巡回診療チーム2班の統計によると、7月に診療を受けた患者数は今年1月に比べ2倍以上に増加しました。

○メンタルヘルス・心理社会的支援(こころのケア)

支援の本格的な始動を前に、現在こころのケアを提供できるボランティアの育成や、チャイルドフレンドリースペースの設置等準備を進めています。

○食料支援

最も緊急に必要なものとして被災した人びとの多くは食料支援を挙げています。アフガニスタン赤新月社は、これまでに2,598個の食料セットを提供しました。

○物資支援

毛布6,918枚、家庭用キット138個、キッチンセット1,740個、寝袋1,157枚、ソーラーランプ600個などの救援物資を2,500世帯以上に配付しました。

○現金給付

7月中、4,521世帯に対し一世帯あたりAFN 13,000(約2万円)の現金給付を実施。支援を開始して以来、現金給付を受けた世帯数は合計5,292世帯となりました。アフガニスタン赤新月社は救援活動を補完する現金給付及びバウチャー(引換券)支援に力を入れています。

○避難所や住居支援

これまでに防水シート540枚、テント1,488張、ベッド616台、カーペット400枚、枕付きマットレス400枚、ビニールシート1,722枚を配付しました。13,000世帯の家屋が深刻な被害を受け、48,000世帯が軽・中程度の被害を受けるなど、住居の影響が大きいことから避難所・家屋の再建のための支援が優先課題とされています。

○水・衛生及び衛生促進(WASH)支援

飲料水用容器1,280個と衛生用品200個を配付しました。また、給水車6台が動員され、10の村の被災世帯に140,000リットルの安全な水を配付、加えて容量5,000リットルの貯水タンクを20基設置しました。(上記はいずれも7月31日までの実績)

 厳しい冬を前に家屋の修理や、生計の立て直し、保健施設の再建などハード・ソフト両面からの支援、復旧が急がれます。助けを必要とする人びとに少しでも多くの援助が届けられるよう、日本赤十字社は国際赤十字と連携を取り支援を続けていきます。

 現地の活動を支援するため、引き続き、「2022年アフガニスタン地震救援金」への温かいご支援をよろしくお願いいたします。

「2022年アフガニスタン地震救援金」

受付期間: 2022年6月27日(月)~2022年9月30日(金)

本ニュースのPDFはこちら