【速報2】ウクライナ危機:最新の赤十字の活動、日本赤十字社も海外救援金の募集開始

 2月24日、ウクライナにおける紛争は拡大と激化という新たな局面を迎え、市民と市民生活に不可欠なインフラに大きな脅威をもたらしています。ウクライナおよび近隣諸国の人道状況が急速に悪化する中、赤十字国際委員会(ICRC)と国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)は、3月1日に共同声明を発表し、人道支援を必要としている人びとに届けるためのアクセスが改善され、支援活動の規模を迅速に拡大することができなければ、この先、数百万の人びとが耐え難い苦境に陥るだろうと警鐘を鳴らし、紛争によって被害を受けている人びとへの支援を強化するため、国際社会に協力と団結を呼びかけました。連盟は、この紛争が今後数年間、ヨーロッパで最大の人道危機のひとつとなる恐れがあると指摘しています。

 大きな戦闘が始まり5日が経った現在、道路は通行不能となり、電気や水の供給も絶たれているため、ウクライナの数百万人の人びとが飲料水と食料を必要として、状況は切実です。最も緊急に必要なのは、避難のため住み慣れた我が家を離れることを余儀なくされた人びとへの緊急医療、医薬品、安全な水、そして避難所です。

画像 地下鉄の駅に避難している人々に食料や必要物資を配付する赤十字ボランティア(C)Maksym Trebukhov/Ukrainian Red Cross

 前回の記事でも、戦闘激化の当初よりウクライナ各地で、そして周辺国で人道支援を展開している赤十字の活動をお伝えしました。

 ウクライナ赤十字社はこれまで、地下鉄の駅や防空壕に避難している2,000人以上に応急手当のトレーニングを行い、応急手当を学んだ人が自分の家族や友人が負傷したときには即座に手当ができるようにしています。実際にけが人の救助に関わったボランティアもいます。また、赤十字国際委員会(ICRC)はウクライナ赤十字社と共に、以前から紛争の影響の大きいウクライナ東部のドネツクやドンバスにて住民や医療施設に対してこれまで合計26000リットル以上の安全な水の供給を行っています。

 クロアチア、ハンガリー、モルドバ、ポーランド、ルーマニア、ロシア、スロヴァキアの赤十字社は、ウクライナから国外に避難した人びとを支援しています。赤十字ボランティアは、一時避難所や、国境の両側で食料、水、寝具、衣類などを配付し、必要な人には医療と心理社会的支援(こころのケア)も提供しています。また、携帯電話用のSIMカードも配付し、大切な人と連絡を取り合えるようにサポートしています。

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紛争でけがをした人に応急手当を施すボランティア (C)ウクライナ赤十字社

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ウクライナから避難してきた人々に国境沿いで食料や衛生物資等を配付するボランティア (C)ルーマニア赤十字社

ウクライナから近隣諸国に避難する人びとの様子と支援にあたる赤十字の活動を動画でお伝えします:(C)ルーマニア赤十字社/国際赤十字・赤新月社連盟  日本語訳:日本赤十字社

「私たちは、できるだけ多くの人びとを支援することに全力を尽くしています。現在、戦闘や爆撃が続いているために外に出るのは危険で人びとに支援を届けるのは命がけですが、私たちは最善を尽くす努力を続けています。ここ数日間で1000人以上が新たに赤十字のボランティアとして参加しており、人びとがいかに自分たちの地域の人びとを助けたいと思っているかがわかります」とウクライナ赤十字社のマクシム・ドツェンコ事務総長は述べています。

画像 ウクライナ赤十字社のマクシム・ドツェンコ事務総長

 今回の人道危機に対し、ウクライナ赤十字社をはじめとする各国赤十字・赤新月社、連盟、ICRCは、赤十字の基本原則のもと赤十字全体で連携して取り組むとともに、すべての紛争当事者に対し国際人道法の遵守、とくに一般市民の保護、人道援助のアクセスの確保を強く訴えています。「砲撃や爆撃が続く中、病気の人や障がいを持つ子どもたちなど一人で避難することが困難な人びとがいます。彼らのような人びとを助けるためにも人道援助活動を行う赤十字スタッフ・ボランティアの安全と保護が欠かせません。」日本赤十字社を含む世界各国の赤十字関係者160人以上がオンラインで参加した228日夜(日本時間)の国際赤十字調整会議で、ウクライナ赤十字社のマクシム事務総長は防空壕となっている薄暗い地下室からそう強く呼びかけました。

 ウクライナにおける紛争の拡大と激化、また現地における膨大な人道ニーズを受け、国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)と赤十字国際委員会(ICRC)は、ウクライナ及びウクライナからの避難民を受け入れる周辺国その他の国々での赤十字による救援活動を支援するため、総額25000万スイスフラン(日本円:約313億円)にのぼる緊急救援アピール(資金援助要請)を発出しました。日本赤十字社は、この緊急の援助要請に対し、緊急救援として2000万円の資金援助を行うことを決定しました。

画像 救援物資の準備をする赤十字ボランティア(C)Maksym Trebukhov/Ukrainian Red Cross

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「ウクライナ人道危機救援金」募集の開始

 日本赤十字社は、この度のウクライナにおける人道危機を受け、国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)、赤十字国際委員会(ICRC)、および各国赤十字・赤新月社が実施する救援活動を支援するため、「ウクライナ人道危機救援金」の募集を開始いたしました。皆さまの温かいご支援とご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。

受付期間: 2022年3月2日(水)~2022年5月31日(火)

使途: 国際赤十字・赤新月社連盟、赤十字国際委員会、および各国赤十字・赤新月社が実施する、ウクライナでの人道危機対応及びウクライナからの避難民を受け入れる周辺国とその他の国々における救援活動を支援するために使われます。